回顧2012 領土を守り自信取り戻せ ものづくりで経済力回復を

読売新聞 2012年12月30日

2012回顧・世界 国際舞台の役者が出そろった

2012年は、主要国で大統領選や指導部交代が相次いだ。

読売新聞の読者が選んだ「海外10大ニュース」にも、国際政治の大きな変化が読みとれる。

1位は、「米大統領選でオバマ氏が再選」だった。

多極化が進む世界とはいえ、経済力、軍事力で群を抜く米国は、依然として最も影響力がある超大国だ。民主党のオバマ大統領と共和党のロムニー候補の論戦は、世界中が注目した。

オバマ政権の最優先課題は、景気対策と財政再建の両立である。1期目で打ち出したアジア重視の外交戦略は、今後の日米関係を方向づけるだろう。

2位は、中国共産党のトップ交代だ。総書記に習近平氏が選出された。中国指導部への関心がかつてなく強いのは、尖閣諸島をめぐり、中国が日本に露骨な圧力を加えているからにほかならない。

日本の尖閣諸島国有化に抗議するデモが暴徒化し、日本企業に大きな損害を与えるなど、国交樹立40周年の日中関係に明るいニュースは乏しかった。

ロシアではプーチン首相が大統領の座に返り咲いた(6位)。アジアとの経済関係を強化し、国力向上を図ろうとしている。

年末の韓国大統領選(20位)で、朴槿恵氏が当選した。初の女性大統領と安倍首相が、日韓関係をどう改善するかを注視したい。

「指導者選び」の重圧を経た各国首脳には来年、内向きな発想を脱して諸課題に取り組み、国際協調を深めてもらいたい。

北朝鮮では、昨年死去した金正日総書記の後継として三男正恩氏が、朝鮮労働党第1書記に就任した(3位)。3代世襲の新体制を固めるように、4月と12月にミサイル発射を強行した。

北朝鮮が、国際的孤立を深めているのは大きな懸念材料だ。

ミャンマーは対照的に、テイン・セイン大統領が民主化を進め、国際社会との関係を修復した。野党指導者アウン・サン・スー・チー氏が議会補選で当選した(5位)のは象徴的だ。

欧州では、英エリザベス女王の即位60年の祝賀行事(4位)という明るい話題の一方で、財政・金融危機が長期化し、スペインがユーロ圏に金融支援を要請した(10位)。欧州経済の動向は来年も目が離せない。

シリアでは、アサド政権と反体制派の間の内戦が泥沼化した(8位)。「アラブの春」のうねりはなおも中東を揺るがしている。

産経新聞 2012年12月29日

回顧2012 領土を守り自信取り戻せ ものづくりで経済力回復を

日本を取り巻く国際環境がいかに厳しいかを思い知らされた1年だった。3年3カ月の民主党政権による内政・外交の迷走が最大の原因であり、それが国民の自信喪失に追い打ちをかけた。

これを見透かしたように、習近平新体制となった中国は東シナ海などへの海洋権益拡大の野心をむき出しにした。わが国固有の領土・尖閣諸島の上空を初めて中国機が領空侵犯し、周辺海域を含む公船の侵犯も常態化した。年末の衆院選で復帰した安倍晋三政権に託された使命と責任は大きい。

≪国旗奪われて何もせず≫

尖閣問題は、東京都知事だった石原慎太郎氏が「都で購入する」と表明した後、政府が慌てて国有化したが、実効統治強化に向けた措置を講じようとしなかった。

中国側は「領土問題では半歩も譲らない」(温家宝首相)と強硬姿勢を強め、中国国内で日本排撃の嵐が吹き荒れた。反日デモで暴徒化した群衆は日系企業やスーパーを襲った。丹羽宇一郎駐中国大使の公用車も襲われ、国旗が奪われたにもかかわらず、日本政府は抗議しただけだった。

日本領土への挑戦は、中国にとどまらなかった。ロシアのメドベージェフ首相が北方領土の国後島を再訪問し、韓国の李明博大統領も島根県・竹島に上陸した。北朝鮮は「衛星打ち上げ」と称して長距離弾道ミサイルを発射した。

日本が各国につけ込まれたのは野田佳彦政権が尖閣問題で「平穏かつ安定的な維持管理」を繰り返し、領海・領空侵犯にも明確な対抗措置を取らなかったことが大きい。抑止の源泉となるべき日米同盟は普天間飛行場移設問題が進展しないまま空洞化が進んだ。

国内で気がかりなのは、多くの国民が長引く経済の沈滞もあって自信を失ってしまったことだ。

企業の平成24年3月期決算で、電機大手のパナソニックが7721億円、ソニーが4566億円、シャープは3760億円と、いずれも過去最大の最終赤字を計上した。テレビ事業の不振が大きな理由だが、衝撃的な数字である。

日本は長く家電製品や自動車を輸出して稼いできた。だが、昨年3月の東日本大震災を機に、貿易収支は赤字に転じた。原発再稼働が困難となり、火力発電用の化石燃料の輸入が増え続けている。

笹子トンネル事故は、日本経済を支えてきたインフラの老朽化に警鐘を鳴らした。ものづくりこそ日本の経済力の中心であり、自信を取り戻さなければならない。

教育の荒廃も目立った。中2男子が自殺した大津市のいじめ問題は、暴行容疑などで同級生2人が書類送検、1人が児童相談所に送致された。生徒アンケートで「自殺の練習をさせられていた」などの回答も明らかにされ、教育をめぐる問題の深刻さが示された。

≪国民が結束するときだ≫

米大リーグで活躍し、ひたむきなプレーで日本人を元気づけてくれた松井秀喜選手が引退を表明した。同選手の引退は残念だが、スポーツや学術・文化の世界では明るい話題も多かった。

ロンドン夏季五輪で、日本は史上最多の38個(金7、銀14、銅17)のメダルを獲得した。

競泳男子平泳ぎの北島康介選手は3大会連続2冠の期待があったが、個人種目のメダル獲得はならなかった。その北島選手を「手ぶらで帰らせるわけにはいかない」と後輩らが勇み立った。メドレーリレーでチームが団結し、みごと銀メダルを獲得した。

人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作製した山中伸弥京大教授が日本人2人目のノーベル医学・生理学賞を受賞した。山中氏は米国などとの競争に勝つため「オールジャパン体制で研究が必要」と訴えて、国の支援を得た。

山中教授は「日の丸の支援のおかげで日本が受賞した。世界の難病の方にメード・イン・ジャパンの薬を提供したい」と語ったが、国民が自信を取り戻し、日本を元気にするには全ての分野で「オールジャパン」のアプローチが有効だ。日本人は団結すれば、一人で出せない力を発揮する。

「再チャレンジ」を掲げて再登板した安倍首相率いる自公新政権にも、同じことがいえる。憲法改正や集団的自衛権の行使容認などの公約を掲げた新政権の課題は多く、震災復興にもスピードが求められる。今度こそ短命政権に終止符を打ち、日本再生を果たしてもらいたい。

読売新聞 2012年12月29日

2012回顧・日本 再生への希望が芽生えた年

明るい話題に、希望や勇気をもらった人が多かったのだろう。

読売新聞の読者が選ぶ今年の「日本10大ニュース」の1位は、「ノーベル生理学・医学賞に山中教授」だった。

「東京スカイツリーの開業」が2位、「ロンドン五輪、史上最多のメダル」が3位に入った。

山中伸弥京都大教授が開発したiPS細胞(人工多能性幹細胞)は、傷んだ臓器などの再生医療を実現へ大きく動かした。「まだ一人の患者も救っていませんから」。受賞が決まった後の山中氏の謙虚で誠実な姿勢も好感を呼んだ。

東京スカイツリーは5月の開業から半年で約2800万人の入場者を集めた。634メートルは自立式電波塔では世界一の高さだ。東京タワーが高度成長の象徴ならば、スカイツリーはどんなシンボルとして親しまれていくのだろうか。

ロンドン五輪で日本選手団は、金7個を含む38個のメダルを獲得した。レスリングの吉田沙保里選手、伊調馨選手が五輪3連覇を達成した。なでしこジャパンのサッカー、バレーボール、卓球など女子選手が見事な活躍を見せた。

プロ野球の「巨人3年ぶり22度目の日本一」は8位に入った。

その巨人の主砲を長く務めた松井秀喜選手が27日、引退を表明した。巨人や米大リーグ・ヤンキースなどで507本塁打を放ち、ワールドシリーズの最優秀選手にも選ばれた。豪快な打撃はファンの心に深く刻まれよう。

安倍内閣の発足につながる「師走の衆院選挙」は4位だった。民主党は、野田前首相が社会保障と税の一体改革(16位)と引き換えに、「近いうち解散」に打って出た末の惨敗だった。3年3か月に及んだ民主党政権が終わった。

米軍普天間飛行場移設の問題などで迷走し、民主党の政権公約(マニフェスト)も破綻した。政権担当能力に欠けると多くの有権者は判断したのだろう。

安倍首相には、現実的な政策の立案・実行と安定した政権運営が求められる。

尖閣諸島の国有化による日中関係の悪化も、5位と関心が高かった。中国では反日デモが暴徒化し、日本企業が襲われた。関係の改善は安倍内閣の重要課題である。

12月には中央道の笹子トンネル(山梨県)の天井板が崩落し、9人が死亡する大惨事が起きた(7位)。老朽化したインフラ(社会基盤)の改修も急ぎたい。

日本が確実に再生の道へ歩み出す。来年をその節目にしたい。

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