最近は、あまり注目されていなかったが、自衛隊最長の17年間にも及ぶ国連平和維持活動(PKO)が果たした役割は大きかったと言える。
森本防衛相が、中東・ゴラン高原の国連兵力引き離し監視軍(UNDOF)に派遣中の陸上自衛隊の輸送部隊に撤収を命令した。シリア内戦の激化で、隊員の安全確保と意義のある活動が両立しなくなったことが理由だ。
治安情勢の悪化で、今年3月に在シリア日本大使館が閉鎖され、6月からは輸送業務の一部を民間業者に委託するなど、陸自の活動が制限されていた。最近は、UNDOF要員への襲撃もあった。
撤収はやむを得ない判断だ。
シリア・イスラエル国境付近への陸自の派遣が決まったのは、1995年12月である。
シリアの首都ダマスカスと兵力引き離し地帯の間の生活物資輸送や、道路の補修、除雪などを担当した。半年ごとに部隊を入れ替えており、今は輸送部隊44人と司令部要員3人を派遣している。
ゴラン高原での陸自の活動は、中東和平の停戦監視の一翼を担うとともに、国際平和協力活動に参加する陸自の人材を養成する「PKOの学校」の役割があった。
PKOの知見を深め、他国の要員と交流することなどを通じて、より厳しい環境の国際協力活動にも対応できるようになる。17年間でゴラン高原に派遣された隊員は延べ約1500人に上る。
今年は日本のPKO初参加から20年になる。この間、延べ約9200人がPKOに参加している。国際経験を持つ隊員が増えることは、他国の軍隊との連携・協力関係が強まるうえ、自衛隊の対処能力の向上にもつながろう。
陸自のPKOでは、大震災のあったハイチで2010年から活動していた部隊も、来春までに撤収する。その際、使用した重機14両をハイチに譲与する予定だ。
このうち銃座が付いた4両は従来、「武器」とみなされ、提供できなかったが、昨年末の野田内閣による武器輸出3原則の緩和で可能になった。今後も、こうした平和構築・人道目的の武器供与は積極的に実施したい。
陸自のPKOは南スーダンで継続している。課題は自衛官の武器使用権限の拡大だ。正当防衛以外の武器使用を制限する現行法では効果的な活動はできない。「駆けつけ警護」を可能にすべきだ。
来週発足する新政権は、これまで挫折続きのPKO協力法改正に改めて取り組んでもらいたい。
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