原発の断層調査 結論ありきに見えないか

毎日新聞 2012年12月22日

東通原発に活断層 下北全体の再評価を

原子力規制委員会の有識者調査団が、青森県下北半島にある東北電力東通原発の敷地内を活断層が走っていると認定した。電力会社が否定していた原発敷地内の活断層の存在を規制委が認定するのは、日本原子力発電敦賀原発(福井県)に続き2例目となる。電力会社の調査が不十分で、規制当局の安全審査もそれをチェックできていなかったということだ。他の原発の安全審査の妥当性についても、疑問符が付く。

東北電力は東通原発敷地内の断層について、粘土を含む地層が地下水を含んで膨張する「膨潤(ぼうじゅん)」などが原因で生じたもので、活断層ではないと主張してきた。同原発の耐震安全性評価でも考慮されていない。

だが、現地調査も行った規制委の調査団5人は「活断層」とする見解で一致した。調査団の有識者は、規制委が日本活断層学会など関係学会に推薦を依頼し、過去に審査に関わっていない専門家から選ばれた。省庁主導で専門家を選んでいた過去の安全審査は「事業者に甘い」との批判もあったが、今回は中立性が極めて高い人選だと言える。

規制委は新たな原発安全基準の策定に伴い、原発直近を通る活断層の影響評価手法を検討中だ。敷地内の局所的な揺れや地盤のずれを予測することは難しいためだ。東通原発では、活断層の規模などをきちんと調べた上で、新基準に従って耐震性を再評価する必要がある。しかし、問題はそれだけにとどまらない。

調査団が認定した活断層は、隣接する東京電力東通原発(建設中)の敷地にも延びる。さらに、下北半島には、日本原燃の使用済み核燃料再処理工場やJパワー(電源開発)の大間原発など原子力施設が集中立地する。その半島東側の沖合には「大陸棚外縁断層」(延長84キロ)が南北に走る。過去の安全審査で事業者は否定してきたが、同断層を活断層とする専門家がおり、原発の敷地内の断層などが連動して動く可能性も指摘されているのだ。

過去の安全審査に疑問符が付いた以上、規制委は、下北半島全体の断層や地殻構造を再評価すべきだ。調査団の有識者からも調査を求める声が出ていたが、事業者に依存してきた体制を見直し、規制委が主体となって進める必要があるだろう。

重要となるのが規制委の独立性と透明性の確保であり、そのためには国会による同意人事が不可欠だ。

規制委は発足から3カ月が経過したが、民主党政権下では党内事情から国会同意手続きが先延ばしされたままで、いわば仮免許状態にある。年内に発足する新政権は衆参両院に対し、速やかに規制委人事の同意を求めるべきである。

産経新聞 2012年12月23日

原発の断層調査 結論ありきに見えないか

東北電力東通原子力発電所(青森県)の敷地内を走る破砕帯を活断層だとする見解が、原子力規制委員会の専門家調査団によって示された。

東北電力は、これらの破砕帯に活動性はなく、活断層ではないとみなしてきただけに、両者の認識の隔たりは大きい。

規制委は26日に開く2回目の評価会合で東北電力の説明を聞く予定だが、科学的な判断のためには、予断を捨てて謙虚に耳を傾ける姿勢が望まれる。

本来なら20日の第1回評価会合に東北電力を参加させて議論を交わすべきだった。それをすることなく、活断層であるとの結果をまとめた上で、反論を聞くのは公平感に欠ける印象だ。

法律で高い独立性が保証されている規制委には、不断の自省が求められるはずである。規制委の自己規制力が弛緩(しかん)すると、独善的な暴走が始まる可能性があることを指摘しておきたい。

先に行われた日本原子力発電の敦賀原子力発電所での破砕帯調査も、1回限りの審議で活断層との断を下した前例がある。

電力会社は、原発の敷地の地層に関して多くの調査データを保有している。規制委にはそれを十分に検討し、活用してほしい。破砕帯を科学の対象として見詰める上で、データ軽視の傾向があるとすれば、由々しき問題だ。

そもそも、規制委設置の目的は原子力発電の安全性向上に置かれていたはずだ。「原子力利用における安全の確保」は、規制委の任務としても規定されている。

原発敷地内の破砕帯調査は、安全確保の手段の一つに位置づけられるもののはずだ。しかし、最近の規制委の活動からは、調査した破砕帯を活断層と即断することがその目的と化しているかのごとき印象を受けてしまう。

東通原発の場合は、破砕帯が活断層であると断定されても、重要施設の下を通っていないので、廃炉とはなるまい。しかし、再稼働が大きく遠のくのは確実だ。

原発の働きを火力発電で代替する結果として、東北電力の赤字は膨らみ、電気料金の値上げ幅の拡大を余儀なくされよう。電気代の上昇は震災被災者の暮らしを圧迫し、復興の足取りを重くする。

規制委の判断は、地元社会の要請からも独立しているとする考え方もあるが、目的や現実との乖離(かいり)はあまりにも寂しい。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/1266/