政権交代を機に、政府と日銀がデフレからの脱却に向けて連携を強める第一歩である。
日銀が20日、「物価目標」の導入を検討する方針を打ち出した。
日銀の白川方明総裁は記者会見で、「自民党の安倍総裁から物価目標について要請された。これを踏まえて検討することにした」と述べ、1月に結論を出す考えを明らかにした。
日銀は当面1%の消費者物価上昇率を目指しているが、「目途」というあいまいな位置づけだ。
安倍総裁は日銀に2%の物価目標の設定や大胆な金融緩和、政府と日銀の政策協定を求めていた。日銀が迅速に対応し、目標設定に踏み出すことは評価できる。
日銀は今回、10兆円の追加金融緩和策も決めた。日銀が国債などを買い入れる「基金」の規模は100兆円を超える。
海外経済の減速と、日中関係の悪化で輸出や生産が低迷し、景気は後退色を強めている。
日銀が、9月と10月の金融緩和から間を置かず追加策を講じたのは妥当な判断と言えよう。
景気対策に前向きな安倍新政権への期待から、東京市場の平均株価が1万円を回復している。
もちろん、金融政策だけではデフレ脱却や景気回復は望めない。肝心なのは、政府と日銀が実効性のある政策協定を結ぶことだ。
新政権の発足後、調整を急いでもらいたい。
金融緩和で供給された資金が貸し出しを通じて設備投資に使われ、利益と雇用の拡大をもたらす流れを回復する必要がある。
これは主に政府の役割だろう。まずはデフレの原因である「需要不足」の解消が急がれる。
老朽化した社会インフラの改修や防災など、緊急性の高い公共事業は即効性がある。補正予算による大型経済対策が不可欠だ。
財源確保のため一定の国債増発はやむを得ないが、財政悪化に拍車をかけてはならない。
来年度予算の編成では、民主党のバラマキ政策の予算を、大胆に削ることが重要となる。
成長分野の投資減税や法人税率引き下げ、新規事業を阻害する規制の見直しなど、企業活動を支援する政策の充実が求められる。
自民党などには、日銀法改正や次期日銀総裁人事をちらつかせ、日銀を牽制する向きもある。
中央銀行の独立性が揺らげば、日本の通貨制度や国債の信認が低下し、市場が混乱しかねない。過剰な政治圧力は避けるべきだ。
この記事へのコメントはありません。