安全神話から決別して原発の安全性を判断する第一歩だ。
福井県にある日本原子力発電敦賀原発の原子炉直下にある断層について、原子力規制委員会は活断層の可能性が高いとの考えを示した。田中俊一委員長は「今のままでは再稼働の安全審査はできない」と明言した。
原子力規制行政の大きな転換点といえる。
焦点は、原子炉から約200メートルの場所を走る活断層「浦底断層」が、原子炉建屋に影響を与えるかどうかだった。
5人の専門家の見解は明解だった。敦賀2号機の直下にある断層が浦底断層につながり、つられて動く危険性がある。全員がそう認定した。
「原発の敷地内に活断層があるというだけで異常事態だ」
「浦底断層の影響は計り知れないものがある」
評価の場で出た専門家の言葉の数々は、いかに現状が危険であるかを物語っている。
国の手引きによると、活断層の上に原発の重要施設を建ててはならない。運転できないのならば、廃炉への流れは避けられない。
日本原電は判断を重く受けとめ、炉の安全確保や今後の経営について、速やかに事業計画を作り直すべきだ。
敦賀発電所は敷地のなかに約160本の断層が走っている。「断層銀座」と呼ばれるほどの地に、そもそもなぜ原発が建てられたのか。
敦賀発電所の建設が始まった1960年代には、断層の研究が今ほど進んでいなかった面はある。だが、原発では大事故がおきないという安全神話のもとに、立地場所の地質を軽視していたのではないか。
これまで専門家が活断層の危険性を言っても、国は運転を認めてきた。旧原子力安全・保安院の審査の甘さを、教訓にしなければならない。
規制委は今後、やはり敷地内に活断層の疑いがある北陸電力志賀原発をはじめ、東北電力東通原発など計6カ所で調査を予定している。
電力会社は今まで、100%の確証がなければ「活断層ではない」という態度だった。もうそれでは通用しない。
規制委の島崎邦彦・委員長代理は調査について「経済的な問題などは一切考えずに、純粋に科学的な判断」を求めていた。
危険な原発は動かさない。
当たり前の規制行政のスタートで、多くの課題も浮上する。
交付金に頼ってきた敦賀市など地元自治体の将来計画も、根幹から見直す必要がある。
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