毎日新聞 2012年12月06日
北朝鮮ミサイル 自らの孤立を直視せよ
またしても北朝鮮のルール破りである。今月10日から22日の間に人工衛星を打ち上げると予告した。実際には長距離弾道ミサイルの実験を意味しよう。気象状況が許せば早期の発射を狙うと見られる。
北朝鮮は金正日(キム・ジョンイル)総書記死去後の今年4月、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記による権力承継の行事期間に合わせて「人工衛星打ち上げ」を予告したが、空中爆発という大失敗に終わった。
今回は金総書記の「遺訓」を体して技術的な問題を克服し、実用衛星を打ち上げると公言している。
予告期間が日本の総選挙や韓国大統領選と重なったため種々の観測が流れたが、重点は北朝鮮の内部事情にありそうだ。
故・金日成(キム・イルソン)主席の生誕100年にあたる今年を「強盛大国の大門」を開く年と位置づけた08年以来の公約に、北朝鮮指導部はこだわっているようだ。年内の「駆け込み発射」でミサイルの実力を誇示し、まだ不安定な金正恩体制の求心力確保に役立てようとしているように見える。
北朝鮮は過去2回にわたって「衛星打ち上げ成功」と虚偽発表をし、ミサイル実験という真相をごまかそうとした。4月の失敗後、外国の技術者の助けを借りたとの情報もあり、隠れみのとして衛星打ち上げを狙うかもしれない。そうだとしても容認できることではない。
今回の発射予定は中国代表団が訪朝し、習近平総書記の親書を金正恩氏に手渡して帰国した翌日に発表された。これに対し中国外務省は、北朝鮮の「平和的な宇宙利用」の権利は「国連安全保障理事会の関連決議などの制限を受ける」と明言した。人工衛星発射でも安保理決議違反にあたるという現実を認めたものだ。
日米韓3国はワシントンで緊急の局長級会合を開き、北朝鮮に自制を求め続けるとともに発射強行の場合は安保理が「断固とした行動」を取る必要性があると確認した。中国、ロシアの協力も確保して、発射阻止や、阻止できなかった場合の強力な対策を講じなければならない。
日本政府は、北朝鮮がミサイル発射実験を強行した場合、米軍の早期警戒衛星による早期警戒情報(SEW)が提供された段階で、国民向けに発表することを決めた。4月に発射された時、SEWの発射情報を入手しながら、日本独自の確認に手間取り、発表が発射から約45分後と大幅に遅れた反省を踏まえた措置だ。また、前回同様、何らかのトラブルが起きて日本の領域に落下する場合に備えて、地上配備型迎撃ミサイル「パトリオット」(PAC3)を沖縄本島や石垣島、宮古島などに配備する。これらについても万全を期さねばならないのは当然である。
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産経新聞 2012年12月08日
集団的自衛権 行使容認し同盟の信頼を
北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射に備えるため政府はミサイル防衛(MD)による破壊措置命令を出し、野田佳彦首相は防衛省に配備された地対空誘導弾パトリオット(PAC3)部隊に「冷静かつ毅然(きぜん)と対応してほしい」と訓示した。国民の生命・安全を守るため万全を期すべきだ。
問題は、3回目の迎撃措置となる今回も日本を狙ったミサイルは撃ち落とせても、米国向けミサイルは迎撃できないことにある。
集団的自衛権に関して「わが国を防衛する必要最小限度の範囲を超えるため、憲法上許されない」(内閣法制局)とする憲法解釈を政府が改めようとしないために、「権利はあるが行使できない」という不条理な結果になっていることが原因だ。
集団的自衛権は衆院選の争点の一つでもある。国連憲章にも認められた国家固有の権利であるにもかかわらず、現行の政府解釈を改めないために、日米同盟の深化や日米共同防衛の実効性が阻害されてきた。日米が北のミサイルの脅威に直面している今こそ、この問題を論じ合う必要がある。
6日の自衛隊の岩崎茂統合幕僚長とアンジェレラ在日米軍司令官との会談では、「日米両国民の生命と財産を守る観点」から情報共有などの緊密化を確認した。米軍は「同盟国を安心させ、米領土を防衛する」としてイージス艦などを周辺海域に配置した。
北朝鮮は前回の4月からミサイルを南方に発射しているが、射程は1万キロ以上に達するとの推定もある。北極圏ルートをとれば米本土を射程に含めることが可能となり、米国が強く警戒している。
高性能の「Xバンドレーダー」を日本に追加配備する課題もあり、日米共同の対処がきわめて重視されていることを再認識しなければならない。
自民党は衆院選公約で集団的自衛権の行使容認を明確に掲げ、安倍晋三総裁は米軍の窮地を座視すれば「その瞬間に日米同盟は危機的になる」と強調する。
日本維新の会や国民新党も集団的自衛権行使を公約に掲げているが、民主党が触れていないのは疑問と言わざるを得ない。
野田首相は「これを踏み越えることができるかどうかが一番の肝」と自ら著書に書いた。憲法改正問題とともに安倍氏らと正面から議論を展開してほしい。
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