◆無責任な主張に惑わされぬよう◆
国力を維持していけるのか、それとも衰退の道をたどるのか。日本の針路を決める上で、極めて重要な選択である。
第46回衆院選が公示された。民主、自民の2大政党をはじめ12の政党が乱立して争う異例の選挙戦となった。
第一声で野田首相は「前に進むか、昔に戻るか」と訴え、第1党を目指すとしている。自民党の安倍総裁は「断固として自民党、公明党で過半数を獲得し、政権奪還を目指す」と語った。どちらが政権を担うかが、最大の焦点だ。
◆第3極も新政権に影響◆
民主、自民両党に対抗して「第3極」を目指す日本維新の会、日本未来の党、みんなの党の勢力伸長は、新政権の枠組みに影響する。
安倍氏は、民主党との連立政権を否定する一方、維新の会との連携は選択肢の一つだと述べた。
衆院で自民党が第1党になった場合でも、参院の議席は公明党や維新の会と合わせても過半数には届かない。
来夏の参院選まで、衆参のねじれが続く公算が大きい。
選挙である以上、各党が競い合うのは当然だが、選挙後の連立や部分連合も考慮に入れた対応も必要だ。「決められない政治」からどう脱却するかが問われている。
民自公3党の協力は、消費税率の引き上げを柱とする社会保障と税の一体改革を今後、着実に実行していくうえで欠かせない。
消費増税は、危機に瀕する財政を再建し、社会保障制度を維持するために必要だ。3党の主導により社会保障制度改革国民会議が発足したばかりである。議論をさらに加速させなければならない。
民主党を離党した前衆院議員たちの多くは、生き残りを図るために新党に移り、「反増税」を唱えている。それなら、社会保障財源の確保と、財政再建への現実的な具体策を示すべきだ。
「行政のムダを削減する」と唱えるだけでは粗雑に過ぎる。
原発・エネルギー政策でも各党の主張の対立が目立つ。
民主、自民両党は安全性が確認された原発の再稼働を認める点では一致するものの、自民党は原発の将来像に早急には結論を出さないとしている。
◆「脱原発」の安売りでは◆
一方で、民主党は2030年代の原発稼働ゼロを目指す。未来の党は10年以内に全原発廃炉、みんなの党は20年代の原発ゼロを掲げている。共産、社民両党は即時ゼロという立場だ。
「原発ゼロ」は無責任である。電力の安定供給、経済・雇用や家計への打撃、原子力関連技術者の流出など様々な懸念について、具体的な解決策を示さないようでは、説得力を持たない。
国力をそぐ原発ゼロでは、社会保障の充実も、安全保障の確保も難しくなるのは明らかだ。
何より重要なのは、経済再生である。デフレ・超円高を克服し、景気を回復することが急務だ。
自民党が、「明確な物価目標2%」を設定し、その達成に向けて大胆な金融緩和を行う考えを打ち出したのは評価できる。
民主、自民など多くの党が高い経済成長の達成を公約しているが、道筋は不透明だ。
どの党が有効な景気対策、金融政策を掲げているか、中身を見極めることが大切である。
日本を取り巻く外交・安全保障の環境は変貌を遂げつつある。
米軍普天間飛行場の移設問題を巡る民主党政権の失政で、日米同盟が大きく揺らいだ。沖縄・尖閣諸島周辺海域では中国公船の領海侵入が相次ぎ、北朝鮮は弾道ミサイルの発射を予告している。
民主、自民、維新の会などが日米同盟の強化・深化を掲げているのは当然である。軍事、経済両面で膨張する中国をけん制するためにも、米国との関係改善が必要だ。集団的自衛権の行使を認めることは有力な手段となろう。
◆あるべき国家像を語れ◆
目指すべき国家像を示す憲法改正について議論を深めることも、政党の重要な責務である。
有権者の側も大衆迎合のスローガンやムードに惑わされないよう注意したい。消費増税を除いて、各党の公約に負担増を求める政策がほとんどないのはなぜか。次世代にツケを回すのは限界だ。
前回衆院選では「一度は民主党に政権を任せてみよう」という空気に国民が流された。今回も同様に第3極に期待が集まるのか。
日本が直面する難問に、責任ある処方箋を掲げているのはどの政党か。真摯に耳を傾けたい。
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