トンネル崩落 老朽建造物の総点検が急務だ

毎日新聞 2012年12月05日

トンネル大崩落 管理の甘さゆえの惨事

山梨県大月市の中央自動車道笹子トンネルで2日、天井板が突然大規模に崩落し、押しつぶされた車に乗っていた9人が亡くなった。

前例のない大事故だ。同トンネルは77年に供用を開始し、老朽化が直接の原因とみられている。全国のトンネルの4割以上が開通から30年以上たっている。まずは同種トンネルの総点検を急がねばならない。

コンクリート製の天井板がつり金具で固定される「つり天井式」の構造だ。内壁とつり金具の接合部のボルトが抜け落ちており、ボルトか内壁の経年変化による老朽化が崩落の連鎖を招いた可能性が強い。

中日本高速道路側は会見で、ボルト接合部は目視の検査しかしていなかったことを認めた。一方、他の高速道路会社は、同じ「つり天井式」のトンネルで、劣化の有無が分かりやすいハンマーを使った打音検査を実施していたとされる。

事実とすれば、中日本高速道路の点検体制に不備があったのではないか。老朽化というだけでは済まされない人為的な要素も加わった複合的な事故との見方もできるだろう。

山梨県警は業務上過失致死傷容疑で4日、同社本社などを捜索した。

一方、国土交通省は有識者による事故原因の調査・検討委員会を同日設置した。刑事責任の追及とは別に、原因の徹底的な解明と再発防止のための調査が肝心だ。

道路会社を監督する立場の国交省の姿勢も問われる。国交省は、高速道路やトンネルなどの設備点検要綱を定めた各社のマニュアルをチェックしてこなかった。いわば維持管理を道路会社任せにしてきた。こうした指導や監督体制の甘さも厳しく見直さなければならない。

近年は天井をつり下げないタイプの工法が主流だが、高速道路と国道37カ所(笹子を含む)が「つり天井式」だ。原因究明の過程で仮に構造そのものの欠陥が明らかになれば、天井板を取り除くなど大規模な取り組みも検討すべきだろう。

変化に富む日本の国土は、トンネルだけでなく橋脚も数多い。鉄道のこうした施設も含め、高度成長期に供用を始めた施設は一斉に老朽化の時期を迎えている。

それら全ての交通インフラを新たに整備し直すのはコスト面からも現実的ではないだろう。危険度や利用度の高いものから優先的に補修を進めるなど、メリハリをつけながら社会投資していくことが必要だ。

道路・トンネルについていえば、新規建設が重要視され、補修が後回しになった側面はないか。今回の事故の教訓を道路会社全てが共有し、二度と悲惨な事故を起こさない方策を探らねばならない。

読売新聞 2012年12月08日

公共事業 選択と集中で効果的な投資を

中央自動車道・笹子トンネルの天井崩落事故を受けて、公共事業政策が衆院選の主要な論点に急浮上している。

老朽化した道路や橋などを放置すれば、国民の安全が脅かされる。限られた財源で社会資本を維持するため、公共事業をどう効率化するかが問われよう。

自民党は、「国土強靱(きょうじん)化計画」を掲げ、防災などを目的に10年間で事業費200兆円の公共投資を想定している。公明党も、10年間で100兆円規模の「防災・減災ニューディール」を示した。

2009年の前回衆院選で、「コンクリートから人へ」を掲げた民主党は、今回も自公両党の政策を「ばらまきだ」と批判している。野田首相は、「元の自民党の政策に戻るのか」と牽制(けんせい)した。

日本維新の会は、公共事業を拡大せず、日本の競争力を高めると主張するが、具体策は不明だ。

高度成長期に整備された全国の道路、橋、上下水道などがまもなく寿命を迎え、急速に損傷や劣化が進む。老朽化した社会資本の対策は急務と言える。

国民の不安を和らげる方策を各党は示してもらいたい。

国土交通省の推計では、更新費用は今後50年間で190兆円に膨らむ。財政危機の中、公共事業費は年々減少しており、大盤振る舞いする余裕はない。

危険箇所の早期発見や補修で長寿命化を図り、費用を圧縮することが重要だ。老朽化で橋の落下事故が相次いだ米国を参考に、橋の点検・補修を優先すべきだ。

人口減少を考慮すれば、利用が減った公共施設や橋などは使わないなどの決断も求められる。

新規事業についても、「選択と集中」を進めねばならない。都市部の環状道路網、国際拠点となる空港や港湾など、経済成長に資する事業は重視する必要がある。

民主党政権が整備新幹線の着工を認可したことは、費用対効果から疑問が残る。見直すべきだ。

自民党の国土強靱化計画が、日本海国土軸など大型事業に固執している点も、70年代の「列島改造」の復活を連想させる。

効果の乏しい景気対策、需要予測を下回る道路や空港の乱造などが、膨大な財政赤字の一因となった教訓を忘れてはならない。

消費税率引き上げによる税収増の一部を、公共事業に充てようとする案も論外だ。民間の資金や知恵を生かす発想で、効果的な公共投資を進めることが肝要だ。

産経新聞 2012年12月05日

笹子トンネル事故 一斉点検急ぎ安全確保を

山梨県の中央自動車道笹子トンネルで起きた事故は、1トン以上のコンクリート製天井板が下を走る車に次々と崩落し、9人の尊い命を奪った。

山梨県警は中日本高速道路会社の安全管理体制に問題があるとみて一斉捜索を行い、本格捜査に入った。国土交通省が原因究明に協力するのは当然だが、何よりも全国の同種のトンネルの一斉点検と補修を急ぐべきだ。再発防止と安全確保を最優先してもらいたい。

同じ構造のつり天井式トンネルは全国に約50本ある。国交省が高速道路5社を含めて緊急点検を指示したのは順当だが、問題はそれだけではない。中日本高速と国交省の安全管理体制に疑問を抱かせる事実が指摘されている。

落下した天井板を支えるつり金具は、ボルトでトンネル上部のコンクリートに固定されていた。このボルトが脱落し、天井板が連鎖的に崩落したとみられる。

同社の吉川良一専務は3日、ボルト脱落の原因について「一つは老朽化」としているが、9月に行った点検では「異常なし」とされていた。

だが、同社の点検マニュアルによると、作業員が天井板に乗ってボルトを点検するのは5年に1度だ。しかも目視ですませ、ボルトをハンマーでたたいて異常を見つける打音検査は行っていない。

問題のボルトや周辺のコンクリートが地下水や車の排ガスで劣化した可能性も指摘される。それなのに、昭和52年の開通以後、ボルトやつり金具の交換や補修が行われた記録はないという。

国交省が老朽化に関して打音検査の例示にとどめ、義務づけていないのは怠慢ではないのか。つり天井の生命線はボルトにあり、緩みや脱落が大事故につながる危険性は素人でも予想できる。同社も国交省も、安全を徹底する認識を欠いていたのなら大問題だ。

ボルトが埋め込まれたコンクリートの劣化も心配だ。山陽新幹線のトンネルではコンクリート片の落下が相次ぎ、平成11年に福岡トンネル内でコンクリート塊がひかりを直撃する事故が起きた。これを受けて、JR西日本は超音波を使った精密検査を導入した。

笹子トンネルと同様に高度成長期に建設された全国の高速道や架橋などのインフラの老朽化が進んでいる。事故の背景として、こうした問題も忘れてはならない。

読売新聞 2012年12月03日

トンネル崩落 老朽建造物の総点検が急務だ

日曜の高速道路で大惨事が起きた。

中央自動車道の笹子トンネル(山梨県)で大規模な崩落が発生し、車が次々と下敷きになった。車両火災も引き起こした。

厚さ8センチほどのコンクリート製の天井板が突然、110メートルにわたって崩れ落ちたという。下敷きになった車内からは、複数の遺体が見つかった。自力で逃げ出した人たちも、やけどなどを負った。

「雪崩のように崩れてきた」と語る人もいた。トンネル事故の恐ろしさに慄然とする。

何人かがトンネル内に取り残されている可能性もある。警察と消防は二次災害に留意しつつ、救出に全力を挙げてもらいたい。

中央道は、東名高速と並び、首都圏と関西圏を結ぶ大動脈だ。全長4・7キロの笹子トンネルは1977年に開通した。

管理する中日本高速道路が9月に目視などの点検を行ったが、換気装置として、トンネル上部からつり下げられている天井板に異常は見つからなかったという。

経年劣化はなかったのか。警察と国土交通省は崩落原因を徹底的に解明する必要がある。保守・点検のあり方の検証も不可欠だ。

同じ構造のトンネルは全国の高速道路に10か所以上ある。点検を急がねばならない。

20人が犠牲になった96年の北海道・豊浜トンネル崩落事故を契機に、全国のトンネルの一斉点検が行われた。その教訓は生かされなかったのだろうか。

高度経済成長期の70年代以降、社会資本整備のための公共事業費が急増した。

この時代に造られた高速道路などの建造物は現在、老朽化が目立ち、危険性が指摘されている。耐用年数を迎えているコンクリートの劣化は深刻だ。

国交省によると、高速道路だけでも、補修を要するトンネルや高架橋などの損傷が、2011年に約55万5000か所で確認された。05年の約4万7000か所に比べ10倍以上にも増えている。

大地震に備える防災上の観点からも、まずは老朽建造物の総点検が急務である。

厳しい財政事情の中、公共事業費の削減を求める声は根強い。確かに、野放図な投資は抑制する必要があるだろう。

だが、危険な建造物を放置すれば、国民生活の安全が脅かされる。老朽施設の改修には、優先的に予算を投じるべきだ。

衆院選後の新政権が取り組むべき重要な課題である。

ガガミラノ 時計 人気 - 2015/05/08 20:06
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