電力を安定供給するため、電力会社が一定の値上げに踏み切るのはやむを得まい。
関西電力が26日、家庭向け電気料金について、約12%の値上げを経済産業省に申請した。認可が不要な企業向けも平均19%値上げする方針で、来年4月の実施を目指す。
東京電力福島第一原子力発電所の事故後、関電管内では福井県の大飯原発2基しか再稼働していない。代替電源である火力発電所の燃料費が増大し、赤字拡大に歯止めがかからない状況だ。
関電は「このままでは最大の使命である電力の安定供給に支障をきたしかねない」と説明した。
値上げ申請に合わせ、人件費など年1500億円の経費節減を打ち出したのは妥当である。さらなる合理化に努めてほしい。
値上げに理解を得るには、政府が認可審査にあたって、料金原価が適正かどうか厳しく調べることも重要と言える。
関電に続いて、九州電力が27日に値上げを申請する。北海道、東北、四国の3電力も、状況次第で追随する可能性がある。
東電が今年4月から値上げを始めた後も、各電力は内部留保を取り崩して値上げを控えてきたが、もはや限界のようだ。
電力会社が徹底した合理化で値上げ幅を圧縮するのは当然だが、リストラだけで値上げは抑えられない。安全性を確認できた原発を活用することが不可欠である。
関電の値上げ幅は、高浜原発2基の再稼働が前提だ。九電も3~4基の再稼働を見込んでいる。
政府の原子力規制委員会が新たな安全基準を策定するのは、早くても来夏となる。政府は時間を空費せず、安全を確認後、円滑に再稼働できる手順を用意しておくべきだ。地元の理解を得るための信頼醸成も求められる。
再稼働が実現しないと想定を超える燃料費がかかり、追加値上げを迫られる可能性がある。
電気料金が急騰すれば、家庭への影響は大きい。経営体力の弱い中小企業も倒産・廃業の危機に直面しよう。工場が海外移転する産業空洞化の加速で、国内雇用が急速に失われる懸念は拭えない。
料金高騰の防止に向け、液化天然ガス(LNG)などの燃料を安く調達する戦略も推進したい。資源国との交渉や資源開発で、政府の果たすべき役割は大きい。
日本が「原発ゼロ」を掲げたままでは資源国に足もとを見られ、交渉は不利になる。現実的なエネルギー政策への転換が急務だ。
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