いじめ緊急調査 子供をしっかりと見守りたい

毎日新聞 2012年11月27日

いじめ調査 統計数字より処方箋を

大津市の中学2年男子生徒が自殺した問題を受けて、文部科学省が行った緊急いじめ調査の結果が出た。4月以降の5、6カ月の間に全国の小、中、高校、特別支援学校で認知されたいじめは、14万4000件余。昨年度1年間の認知件数である7万件余を、ほぼ半分の期間で倍以上も上回ったことになる。

都道府県でばらつきがあり、均一の基準で出した数字ではない。それを念頭に判断しても、いじめは実に多くが潜在しており、より細心の注意を向ければ掘り起こせることを、この調査ははっきり示した。

これまで見過ごしてきたケースや子供たちの傷心を思うべきだろう。

目的は統計ではない。今この時も子供たちを苦しませているいじめを速やかに見いだし、防ぎ、被害から救うにはどうしたらいいか。そのための調査のはずである。

この調査では、アンケートや自由記述で現場での取り組みや提言、意見も集められた。分析し、重大事例だけでなく、さまざまな成功例、失敗例を対策に積み重ね、現在進行中の問題にも効果的に活用できるようにすべきだ。

いじめは、ひそかに大人の視界から遠く、行われるとは限らない。

東京都品川区で今年9月、中学1年の男子生徒が自殺した問題も重い教訓を残す。区教育委員会の調査によると、暴力や言葉、持ち物破損などのいじめが続いたが、学校は深刻な状況を見抜けなかった。男子生徒のことを「いじられキャラ」として軽くとらえていたともいう。

こうした苦い失敗は繰り返されてはならない。ハッと思い当たる学校現場はないだろうか。

また、今回の緊急調査では、学校、教委、地域、警察などの連携や情報共有態勢が十分でないことも課題に浮かび上がった。

例えば、いじめ問題は生徒指導に関する教員研修の中で触れられるものの、この問題に特化して研修が行われた学校は、昨年度10校に1校程度しかない。

また、いじめや校内暴力にどう対応するかについて、その決まりや基準を保護者や地域の人たちに公表し、理解と協力を求めている学校は4割に満たない。

今回のアンケートで、「事態が深刻化してからの『報告』ではなく、深刻化の可能性を予想した時点で、深刻化を防ぎ、支援をしていくための『相談』がされるよう周知を」という要望が上がっている。

事後の報告より事前の相談システム整備が先決だ。

そのためにも、教員が孤立する問題抱え込みや、問題を校内に封じ込めて表面化させないような姿勢は、払拭(ふっしょく)されなければならない。

読売新聞 2012年11月23日

いじめ緊急調査 子供をしっかりと見守りたい

一過性の対応で終わらせず、現場の教師が子供をしっかりと見守り続けることが大切である。

文部科学省がいじめに関する緊急調査結果を公表した。大津市で中学生の男子生徒が自殺した事件を受けて、今夏に実施したものだ。

全国の小中高校などで今年4月からの約半年間に認知されたいじめは約14万4000件だった。昨年度1年間の2倍を超える。

文科省は「教師の意識が高まり、実態把握が進んだ」と急増の理由を説明する。裏を返せば、いじめに対する教師の感度が、これまでは鈍かったということだ。

学校や教育委員会は、今回の調査結果を踏まえて、指導の問題点を洗い出し、いじめ対策に生かさなければならない。

懸念されるのは、小学校の状況だ。いじめ件数が、昨年度に比べ約5万件も増えた。「冷やかしやからかい」「仲間はずれや無視」といった形態が目立ち、「金品をたかる」「激しくたたく」など悪質ないじめも増加している。

最初は悪ふざけのようでも、放置しておくと、どんどんエスカレートしてしまうことが多い。早期の対応が重要だ。

犯罪行為にあたる深刻なケースでは、学校は警察への通報をためらうべきではない。

子供の命にかかわる可能性があると学校が判断したいじめも計278件報告された。子供たちが受けた心の傷は深い。継続的な心のケアと指導が求められる。

子供たちと接する教師の役割は極めて大きい。

だが、残念ながら、いじめに関する認識と指導力が欠けていると批判されても仕方のない事例が後を絶たない。

その典型が、東京都品川区の区立中学1年の男子生徒が9月に自殺したケースだ。「キモイ」などと言われ、文房具を壊されている状況に教師は気づいていながら、深刻に受け止めず、適切な手立てを講じなかった。

このような過ちを二度と繰り返してはなるまい。

日々の授業や課外活動を通じて、いじめが起こりにくい学校作りを進めることも欠かせない。

いじめを巡る裁判の判決文を読んで、どんな行為がいじめと認定されるのかを学ぶ。運動会などの行事で上級生に下級生の世話係を担当させる。授業でクラスメートの「長所」を褒め合う。各地で様々な実践が始まっている。

こうした取り組みを重ね、いじめの未然防止につなげたい。

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