自民党の公約 安倍外交に注目したい

朝日新聞 2012年11月28日

民主党マニフェスト 政権党が逃げてどうする

野田首相が民主党のマニフェスト(政権公約)を発表した。

政権交代を実現した3年前の総選挙で、民主党が掲げたマニフェストの評判はさんざんだ。

ムダ排除などで「16.8兆円の財源を確保する」構想は絵に描いた餅に終わり、多くの政策が実行不能に追い込まれた。

一方、消費増税に道を開いた野田政権の決断は評価するが、逆にマニフェストに書いていなかったことで、やはり「公約違反」のそしりは免れない。

「バラ色の夢」を描いて破綻(はたん)した反省と、政権運営から得た教訓をふまえ、どんな内容に鍛え直したのか。有権者の厳しい評価にさらされることを覚悟せねばなるまい。

まず目につくのが、政権を争う自民党との理念、政策の違いを強調している点である。

憲法改正による「国防軍」の保持や、領土外交での強腰な姿勢、在日外国人に対する地方参政権付与への反対……。

自民党は政権公約に、安倍総裁の持論でもある、右派色の濃い主張を盛り込んだ。

民主党はマニフェストの冒頭で、これを「強い言葉だけが躍る強硬姿勢や排外主義は、国民と国を危うい道に迷い込ませる」と批判する。

リベラルから中道、穏健な保守層まで、幅広い有権者を意識した現実的な主張といえよう。

政策面では、「2030年代の原発ゼロ」を自民党との対立軸に掲げた。公共事業に軸足をおかず、自然エネルギーの普及などで経済再生をめざす方向性にも説得力がある。

ただ、公約の具体的な中身を見ると、はなはだ物足りないと言わざるを得ない。

たとえば、目玉の「原発ゼロ」にしても、どのように原発を減らしていくのか、肝心の工程表を示していない。

野田政権は年末までに工程表をつくる予定だったが、衆院解散で宙に浮いてしまった。政権を引き続き担い、本気で脱原発を実現するつもりなら、なぜそれを盛り込まなかったのか。

さらに、核燃料サイクル事業について「あり方を見直す」、電力改革についても発電・送電・小売りの「あり方を抜本的に見直す」とあるだけだ。

原発ゼロへの過程で、電気料金の値上げや立地地域の経済構造の転換、使用済み核燃料の管理・処理などさまざまな課題や痛みが伴う。それらに対する姿勢をぼやかしたままでは責任ある政策とは言えない。

そのほかの政策も、所要額や実行年度をほとんど明らかにしておらず、自民党の公約と同様、項目の羅列が目立つ。

これでは、財源や期限を明示して政権の実績を評価する、マニフェスト本来の意味がない。

社会保障と税の一体改革は緒についた。それでも年金・医療・介護などの財源不足は解消せず、赤字国債を発行して将来世代にツケを回す構造が続く。

国民のくらしを持続可能にするには負担増、給付の抑制の議論は避けられない。

なのに、マニフェストに盛られた国民に負担を求める政策といえば、一体改革で積み残された所得税・相続税の見直しと、生活保護の不正受給の防止ぐらいだ。

選挙前に有権者の耳に痛い課題を避けたというのでは、責任ある態度ではない。

野田首相が、原発政策と並ぶ自民党との争点と位置づける環太平洋経済連携協定(TPP)でも逃げ腰の姿勢が目立つ。

首相が意欲を見せるTPP交渉参加を明記せず、「TPP、日中韓FTA(自由貿易協定)、東アジア地域包括的経済連携を同時並行的にすすめ、政府が判断する」と政府にゲタを預けてしまった。

党内に多い反対論に配慮してのことだが、これでは自民党のTPPへの姿勢が不明確だと批判はできまい。

前回のマニフェストから後退した記述もある。

日米地位協定をめぐり、前回は「改定を提起」すると明記していたのに、今回は「運用改善をさらにすすめる努力を行う」。米軍再編や在日米軍基地のあり方についても「見直しの方向で臨む」が、「日米合意を着実に実施する」に後退した。

政権を担って、問題の難しさを痛感したということだろう。

だが、普天間移設問題や相次ぐ米兵の事件で、沖縄県民の負担感がかつてなく高まっている折である。本来なら逆にもっと踏み込むべきところだ。

これが民主党がめざす「現実的な外交防衛」だとしたら情けない限りだ。現実主義と敗北主義は違う。

3年前の公約をめぐる手痛い「失敗」が、民主党の重い足かせになっているのは確かだ。

だが、困難から逃げず、現実的で説得力ある道筋を描くことこそ政治の責任である。今後の論戦でそれを示してほしい。

毎日新聞 2012年11月28日

民主党の公約 「野田色」がぼやけている

政権与党、民主党が今衆院選のマニフェストを発表した。政権交代を実現した09年に打ち出した目玉公約の多くが財源問題で破綻した教訓を踏まえ、前回とは様変わりした総論部分を重視した構成となった。

各論中心で肝心の基本政策が後回しだった前回公約のあり方を見直したのは当然だ。問題なのは、民主党や野田佳彦代表(首相)が政権維持の旗印に掲げようとする針路が具体的に浮かんでこない点である。

首相は発表の記者会見で「柔軟で現実的な内容」と強調した。前回の特徴だった政策の実現スケジュールや必要財源を記した工程表も今回は盛り込まれなかった。可能な限り公約は具体的に書くべきだが、財源対策があいまいでは政治の信用を損なう。「あつものに懲りてなますを吹いた」とはあえて言うまい。

それにしても、全体を通じアピール不足は否めない。どこか無味乾燥な印象を受けるのは単に「数値」や「期限」の表現が後退したからではない。3年の政権運営の反省に立ち、民主党や首相がどんな社会をどのような具体策で目指しているかが迫力を伴って伝わってこないためだ。

党の理念として明記するかをめぐり議論があった「中道」との表現は用いず「共生の社会」を掲げた。総論で社会保障、経済、エネルギー、外交・安全保障、政治改革の5分野で基本方針と政策の柱を説明した。

だが、筆頭に位置づけた社会保障でかねて同党が主張する最低保障年金制度の創設や後期高齢者医療制度の廃止は総論部分には明記せず、マニフェスト後半の政策各論に遠慮がちに記された。自らの主張に自信がない表れではないか。

争点化をにらむエネルギー政策は「2030年代に原発稼働ゼロを可能」とする目標を掲げ、再生可能エネルギーの飛躍的な普及を打ち出した。一方でそれを裏づけるための原発再稼働問題への対処基準や核燃料サイクル事業の見直しの進め方などの道筋はあいまいなままである。

首相が争点化に意欲を示した環太平洋パートナーシップ協定(TPP)は日中韓自由貿易協定(FTA)などと同時並行で進める従来方針に「政府が判断する」との表現を追加した。首相は「後退ではない」と言うが、はっきり決意を示したとは言えまい。

政権奪回を目指す自民党は公約で安倍晋三総裁のカラーを前面に打ち出した。安倍氏が重視する憲法問題を首相は「今回の争点ではない」として公約でほとんどふれなかった。

では、何を対決の争点に据えるのか。「時計の針を逆戻りさせるな」と自民批判をするだけでは弱い。マニフェストの角を取るあまり、針路までぼやかしてはならない。

読売新聞 2012年11月28日

民主党政権公約 「現実化」と具体策を聞きたい

厳しい批判を招いた政権公約(マニフェスト)の見直しだけに、時間と労力をかけたのは確かだが、この内容で国民に評価されるだろうか。

民主党が衆院選マニフェストを発表した。社会保障、経済、エネルギー、外交・安全保障、政治改革の5項目を重点政策として掲げている。

年16・8兆円の財源捻出など、非現実的な目標を満載した2009年マニフェストの破綻の反省を踏まえて、数値目標や達成期限の明示を最小限に抑えたのは当然である。しかし、まだ現実化路線が不十分な点も少なくない。

社会保障では、前回同様、最低保障年金の創設や後期高齢者医療制度の廃止を明記した。最低保障年金では「月7万円」との記載は見送ったものの、それには最大6・2%もの消費税の追加増税が必要と民主党が試算している。

「社会保障制度改革国民会議の議論を経た上」としているが、少子高齢化に伴い、社会保障費全体の給付抑制が課題となる中、実現性が乏しいのは明らかだ。

野田政権の政策を踏襲した「2030年代の原発稼働ゼロ」方針も、責任ある対応ではない。

核燃料サイクルの見直し、人材・技術の維持、国際連携、再生可能エネルギーの飛躍的普及など、様々な課題を列挙しただけで、どう実現するのか、肝心の具体策と道筋を提示していない。

これでは、財源の裏付けがない事業の公約と同じだ。有権者に対して説得力を欠いている。

一方で、踏み込み不足になったのが、環太平洋経済連携協定(TPP)の参加問題である。

公約は、TPPや日中韓自由貿易協定(FTA)、東アジア包括的経済連携(RCEP)を「同時並行的にすすめ、政府が判断する」という表現にとどめた。

党内のTPP慎重・反対派に配慮して、政府方針がまだ最終決定されていないことを強調したものだ。TPPの「推進」を明記した10月の野田首相の所信表明演説と比べても、後退している。

前回のように小沢一郎元代表ら一部の意思で公約が決まるのも問題だが、今回、幅広い党内論議の結果、首相が望む方向でTPPの結論を出せなかったことには、政権党として不安を禁じ得ない。

外交・安保も、「日米同盟の深化」といった抽象論に終始した。自民党公約にある集団的自衛権の行使容認、日米防衛協力指針の改定などの具体論がないままでは、同盟深化は画餅にすぎない。

産経新聞 2012年11月28日

民主党公約 これでは政権を託せない

民主党の新マニフェスト(政権公約)は「古い政治に戻るのか。改革を進めるのか」と訴え、政権継続を求めている。

まず民主党が総括すべきは、旧マニフェストに明記しなかった消費税増税法を成立させ、無駄削減で16・8兆円の財源を生み出す約束を守れなかったという事実だ。

野田佳彦首相が「過去3年間の反省と教訓を胸に刻む」と、政権の迷走を謝罪したのは当然だが、ばらまき批判を受けた高校授業料無償化などの重要性をなお主張した。本当に総括したのか。

肝心の日本が直面する危機をどう打開するかの処方箋としては、極めて不十分な内容だ。

中国が奪取の動きを強めている尖閣諸島について「領土・領海の守りに万全を期す」としたが、「尖閣は平穏かつ安定的に維持・管理する」という野田政権と同じ方針を示すにとどまった。

中国を刺激するのをひたすら避けるやり方が何の成果も挙げていないことを忘れたのか。

自民党の安倍晋三総裁が公務員常駐など尖閣の統治強化策を主張しているのを念頭に、野田首相が「強硬姿勢や排外主義」と批判した文言もマニフェストに盛り込まれた。「国民や国を危うい道に迷い込ませる」とも指摘したが、危うい道に追い込んでいるのはどちらだろう。

「日米同盟の深化」をうたっているが、迷走させた米軍普天間飛行場移設問題などを進展させる具体的方策は示されていない。

問題は民主党が結党時の基本理念にある「民主中道」をもとに、中道路線を際立たせようとしている点だ。首相は「中庸」という言葉を繰り返している。

安倍氏や日本維新の会の石原慎太郎代表が憲法改正などを打ち出していることに対抗するためだろうが、「中道」が必要な政策をとらない無責任さを糊塗(こと)するものになっているようにみえる。

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)は日中韓自由貿易協定(FTA)などと「同時並行的」に進めるが、「政府が判断する」との文言が加わり曖昧になった。その一方で「原発ゼロ」を目指す姿勢は鮮明になっている。

民主党が大量離党者を出した原因は政策の詰めの不十分さだ。主要政策の方向付けが曖昧なままでは、政権をもう一度託すことなどとてもできない。

朝日新聞 2012年11月22日

自民党の公約 3年間、何をしていた

自民党の安倍総裁が、総選挙の政権公約を発表した。

3年前、自民党は有権者に見放され、政権を失った。

野党になってからの3年間、こんどは民主党の政権運営に厳しい批判を浴びせてきた。

この間、自民党は何を学び、野党としてみずからをどう鍛えてきたのか。政権に復帰したら、日本の経済や外交、社会をどう立て直すつもりなのか。

この政権公約は、その出発点になるはずのものだった。

だが残念ながら、失望した、と言わざるをえない。

まず、年金や医療、介護、雇用といった国民のくらしにかかわる公約の多くが、省庁や支持団体の要望を並べたような内容になったことだ。

少子高齢化のなかで、社会保障にかかる国の支出は毎年1兆円規模で膨らむ。どの政党が政権を担っても、国民に負担の分かち合いを求めざるを得ない。

ところが、公約にはそうした痛みを伴う政策はほとんど見あたらない。目に付くのは「生活保護の給付水準の10%引き下げ」ぐらいだ。

「自助・自立を第一に」というのが自民党の社会保障政策の基本だ。ただ、削りやすい生活保護をやり玉にあげるだけでは社会の分断を広げ、かえって活力をそぐことにならないか。

喫緊の課題である原発・エネルギー政策、環太平洋経済連携協定(TPP)をめぐる記述も、あいまいに過ぎる。

原発の扱いについては「3年以内に再稼働の結論を出す」「10年以内に電源構成のベストミックスを確立する」と結論を先送りした。

一定の原発を維持するつもりなら、増え続ける放射性廃棄物をどう管理・処理するのか、具体的な方策とセットで打ち出す責任がある。

発送電の分離や小売りの自由化などの電力システム改革を進めるのか、「国策民営」という従来の原子力政策を維持するのかも聞きたい。

TPPについては「聖域なき関税撤廃を前提にする限り、交渉参加に反対する」と、どっちつかずの書き方である。

総選挙を前に、原発維持を求める電力業界や、TPPに反対する農業団体の支持を失いたくない。そんな思惑が見え見えではないか。

一転、歯切れがよくなるのが「経済再生」である。

公約は「明確な物価目標(2%)を設定、その達成に向け、政府・日銀の連携強化の仕組みを作り、大胆な金融緩和を行う」と宣言した。

安倍氏は「建設国債をできれば日銀に全部買ってもらう」と主張する。それを元手に、10年間で大規模な「国土強靱(きょうじん)化」を進めるのだという。

しかし、そのために国債発行を膨らませれば、財政悪化のみならず、金利の急騰を招く危険がある。世界経済にも、無用の混乱を広げかねない。

経済のグローバル化が進むなか、一国の視野で解決できるほど問題は単純ではない。日銀の白川総裁が「現実的ではない」と反論するのも当然だろう。

憲法改正、集団的自衛権の行使容認など、5年前までの安倍政権で手をつけられなかったテーマでも主張は鮮明だ。

教科書検定基準の抜本改革をうたい、とりわけ歴史教科書の検定をめぐって近隣国に配慮するとした「近隣諸国条項」の見直しを盛り込んだ。

さらに「戦後補償裁判や慰安婦問題の言説に的確な反論・反証を行う」ことも掲げた。

慰安婦問題で安倍氏は、当局が人さらいのように慰安婦を連行する「狭義の強制性はなかった」と主張してきた。旧日本軍の関与を認め、日本政府としての「おわびと反省」を述べた、93年の河野官房長官談話の見直しもかねての持論だ。

だが、近隣諸国条項も、河野談話も、近隣国との信頼を築くうえで重要な役割を果たしてきた。次の政権がこれらを引き継がないとなれば、近隣国との関係がいっそう悪化しかねない。慰安婦問題には米国や欧州も厳しい目を注いでいることも忘れてはなるまい。

公約はさらに、尖閣諸島への「公務員の常駐や周辺漁業環境の整備」も盛り込んだ。問題をいっそうこじらせかねない主張である。

そうした強腰の外交で、どのように近隣国との関係を立て直すつもりなのか、きちんと説明してもらいたい。

複雑な問題を直視せず、勇ましい言葉で国民受けを狙う。金融緩和論にしても、右派的な主張にしても、自民党の公約には、そんな危うさを感じざるをえない。

総選挙で各党に望みたいのは、互いの違いを声高に言い募るのではなく、現実的で、問題の解決につながるような建設的な論戦である。

毎日新聞 2012年11月28日

国民会議 「最強」ならではの議論を

税と社会保障一体改革は野田佳彦政権の数少ない成果の一つと言えるだろう。しかし、年金や医療の主要な改革はほとんど手つかずのままで、社会保障制度改革国民会議に先送りされた。その国民会議のメンバー15人が発表された。わが国の社会保障の将来像を示し、実現可能な処方箋を示してほしい。

民自公の3党合意は、年金、医療、介護、少子化の4分野について国民会議で審議し、それを踏まえて必要な法制上の措置を1年以内に実施することを定めた。当初は委員に日本医師会などの業界団体や国会議員を含めることも検討されたが、会長に予定されている清家篤慶応義塾塾長をはじめ大学教員を中心とした有識者だけで構成された。「最強の布陣を念頭に置いた」(岡田克也副総理)といい、民主党の政策に批判的な委員も含まれている。「持続可能な社会保障制度の確立を総合的かつ集中的に推進する」が国民会議の目的だ。業界の利害が絡んだ各論に陥りがちな要素を除いた点でも人選は評価できる。

いくつか注文をしたい。年金をめぐっては政治家だけでなく経済学者の間でも破綻説から安泰説まで意見が分かれる。「年金はすでに破綻している」と言われると不安は一気に高まるが、冷静に見るとデータ(根拠)を明示せず、あるいは都合のよいデータをつまみ食いして自説を展開しているものがある。難解な数理計算が一般国民による妥当性の判断の妨げにもなっている。

一方、年金記録問題などの不祥事を起こしてきた厚生労働省が「年金は破綻しない」と言っても信じられない人は多いだろう。野党時代には声高に破綻論を主張した民主党幹部が政権に就くとこぞって「破綻していない」に変わったことも混乱に輪をかけている。国民会議では根拠のあるデータを基に各説の信頼性や妥当性について徹底検証し、国民にわかりやすく説明してほしい。

「総合的かつ集中的に推進」するためには4分野ごとの見直しだけでなく、各分野にまたがる問題の調整や統合を大胆に進めることも必要だ。高齢者医療と介護の連携や役割分担、無年金・低年金と生活困窮者対策(生活保護)の整理などは縦割り行政の下ではなかなか進まない課題だ。国民会議ならではの大局観に立った改革案を示してもらいたい。

少子高齢化と財政状況の厳しさを考えれば、負担増や給付減の改革は避けられない。国民が納得できるか、それとも現実離れした甘い公約になびいてしまうかは、国民会議の議論にかかっている。これ以上、社会保障への不信や不安を政争の具にしてはならない。

読売新聞 2012年11月23日

自民党政権公約 国論二分の政策でも方向示せ

安倍政権時代に得た教訓と、3年余りの野党暮らしの経験は、どう生かされているのか。

「日本を、取り戻す。」と題した自民党の政権公約は、保守志向の「安倍カラー」が強い政策が目立つ。

その一つが、安倍政権が取り組み、挫折した「国家安全保障会議」(日本版NSC)の設置だ。

中国の急速な軍備増強や北朝鮮の核開発など、日本を取り巻く安保環境は厳しさを増している。

首相官邸を中心に、総合戦略を立案し、緊急事態に即応できる体制を整える必要がある。そのために外交・安保政策の司令塔を創設することは理解できる。

集団的自衛権の行使容認を掲げて、「国家安全保障基本法」制定を明記したことは評価したい。長年の懸案だけに、実現すれば、鳩山政権以降、傷ついた日米同盟を修復し、強化する一助になる。

教育政策も安倍氏らしさを前面に打ち出した。

「日教組の影響を受けている民主党には、真の教育再生はできない」と主張し、「我が国と郷土を愛する」とした教育基本法に沿った教科書検定や、教育委員会制度の見直しなどを挙げた。選挙の主要な争点となろう。

景気刺激策の一つとして、「国土強靱(きょうじん)化基本法」を定め、集中的に防災対策を進めるという。

この点について、民主党は「古いバラマキ型の公共事業だ」と批判する。財政規律との兼ね合いをどう図るのか、自民党は論戦の中で明らかにしてもらいたい。

原発の再稼働については、可否を順次判断し、3年以内に決着させるとしている。電気料金の高騰を抑え、電力を安定供給するためには再稼働が不可欠なことを国民に丁寧に説明する必要がある。

将来については「10年以内には『電源構成のベストミックス』を確立する」とあるだけで、結論を先送りした。原発をどう利用していくのか、道筋を示すべきだ。

環太平洋経済連携協定(TPP)への言及は、物足りない。

安倍氏は「国益が守られれば、交渉は当然だ」と明言したのに、公約は「聖域なき関税撤廃を前提にする限り、交渉参加に反対する」と従来の見解通りにとどめた。

いつまで野党気分でいるつもりなのか。TPP推進の方向にカジを切るべきである。

自民党は、国論を二分する政策についても明確な方針を打ち出さねばならない。

産経新聞 2012年11月22日

自民党公約 「強い日本」実現策を競え

自民党が発表した衆院選公約の最大の特徴は、自衛隊を「国防軍」と位置づける新憲法制定や日米同盟深化に必要な集団的自衛権の行使容認などを国家の立て直しの柱に据えたことだ。

安倍晋三総裁は「強い日本」を掲げ、その実現には経済政策に加え、国のありようを示す憲法や外交・安全保障政策の見直しが必要とした。

日本の危機を打開する具体的な処方箋であり、日本をどうするかという論戦の契機にしたい。

安倍氏は会見で「衆参両院の各3分の2以上の賛成」という憲法96条の改正要件を「きわめて高いハードル」と指摘し、「まず96条の改正から始めるべきだ」と語った。新憲法制定は日本維新の会の石原慎太郎代表らも主張する。選挙後の国政で改正の潮流をどのように広げていくかが問われる。

集団的自衛権について、2年前の参院選公約は「正面から取り組む」としていたが、今回は「集団的自衛権の行使を可能とし」と明記した。国家安全保障基本法の制定も提起している。集団的自衛権行使をどのような場面で認めるのかなどさらに説明してほしい。

教育再生で注目したいのは、30年前の歴史教科書問題を契機に教科書検定基準に加えられた「近隣諸国条項」の見直しだ。

これは、「近隣諸国との友好・親善に配慮する」との宮沢喜一官房長官(当時)の談話に基づくものだが、その発端は教科書検定で日本の中国「侵略」が「進出」に書き換えられたとするマスコミの誤報だった。歴代内閣が中国、韓国に謝罪を繰り返してきた経緯があり、外交立て直しを図る上で見直しは極めて重要だ。

経済再生では「成長による富の創出」を掲げ、インフレ目標を2%とし、その達成に向けて日銀法改正も視野に入れた政府・日銀の連携強化などを挙げた。

ただ、経済政策ではすでに安倍氏が積極的な発言をしているが、脱デフレがなぜ実現できなかったかなどの論議を深めてほしい。

エネルギー政策で、他の政党と異なり安易な「原発ゼロ」に流されなかった姿勢は評価したい。

原発再稼働については「順次判断し、3年以内に全原発について結論を出す」としたものの、安全が確認された原発については、政府が責任を持って早期に再稼働させねばならない。

毎日新聞 2012年11月22日

自民党の公約 安倍外交に注目したい

自民党がまとめた衆院選の政権公約は、安倍晋三総裁らしく保守色の強い内容となっている。そのまま次の政権の政策となる可能性があるだけに、実現への具体的な手順を十分に説明する責任がある。

なかでも外交は「強い日本をつくる」(総裁選後の記者会見での安倍発言)ことを意識してか、中国、韓国との領土や歴史認識などをめぐる問題での強硬姿勢が目立つ。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)や原発など民主党が衆院選の争点とする政策には踏み込まず、外交・安全保障や教育など、安倍カラーを前面に押し出せる政策を有権者に訴えるのが狙いとみられる。

公約に掲げた「主張する外交」や「対外発信の強化」「領域警備の強化」は積極的に進めてもらいたい。だが、領土や歴史問題は国際社会への波紋も大きく、注意深い取り組みが欠かせない。公約は尖閣諸島への公務員常駐や周辺漁業環境整備の検討、従軍慰安婦問題の反証などを明記したが、新たな措置が近隣諸国との関係をことさら悪化させることのないよう配慮が必要だ。

安倍氏は、対中外交においては強い姿勢を示す方が効果的と考えているのだろう。尖閣諸島の問題では強固な日米同盟で中国の挑発的な行動を抑止することが重要だという認識は、私たちも共有する。

ただし、それは問題を国際法に基づき、対話によって平和的に解決する道筋をつけるためだ。オバマ米大統領も20日の野田佳彦首相との会談で「中国との問題が激化しないように望む」と述べ、日中双方が行動を抑制するよう要求した。過去の自民党政権時代から積み重ねてきた近隣諸国との関係を大事にし、対立をエスカレートさせず東アジア地域の安定を図ることが、日米両国の共通の戦略的利益ではないか。

安倍氏は06年の首相就任後、初の訪問国に中国を選び、小泉純一郎政権時代に靖国神社問題で悪化した対中関係を改善して戦略的互恵関係を結んだ。当時の安倍外交の現実的柔軟性は評価されていい。

今の日中関係は当時よりもっと困難な状況にある。そして、日中関係の持つ重要性は当時よりもっと大きくなっている。対中関係、対韓関係をめぐる自民党内の意見も強硬姿勢一本やりではないだろう。党内をまとめ、強固な日米同盟を再構築し、中韓両国との関係を戦略的に安定させることは、安倍カラーの外交と矛盾するものではないはずだ。その大局を見失わない外交を求めたい。

ともあれ、論戦の舞台は整いつつある。民主党をはじめとする他の政党も明確な路線を示し、骨太の政策論争を展開してほしい。

毎日新聞 2012年11月22日

自民党の公約 安倍外交に注文したい

自民党がまとめた衆院選の政権公約は、安倍晋三総裁らしく保守色の強い内容となっている。そのまま次の政権の政策となる可能性があるだけに、実現への具体的な手順を十分に説明する責任がある。

なかでも外交は「強い日本をつくる」(総裁選後の記者会見での安倍発言)ことを意識してか、中国、韓国との領土や歴史認識などをめぐる問題での強硬姿勢が目立つ。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)や原発など民主党が衆院選の争点とする政策には踏み込まず、外交・安全保障や教育など、安倍カラーを前面に押し出せる政策を有権者に訴えるのが狙いとみられる。

公約に掲げた「主張する外交」や「対外発信の強化」「領域警備の強化」は積極的に進めてもらいたい。だが、領土や歴史問題は国際社会への波紋も大きく、注意深い取り組みが欠かせない。公約は尖閣諸島への公務員常駐や周辺漁業環境整備の検討、従軍慰安婦問題の反証などを明記したが、新たな措置が近隣諸国との関係をことさら悪化させることのないよう配慮が必要だ。

安倍氏は、対中外交においては強い姿勢を示す方が効果的と考えているのだろう。尖閣諸島の問題では強固な日米同盟で中国の挑発的な行動を抑止することが重要だという認識は、私たちも共有する。

ただし、それは問題を国際法に基づき、対話によって平和的に解決する道筋をつけるためだ。オバマ米大統領も20日の野田佳彦首相との会談で「中国との問題が激化しないように望む」と述べ、日中双方が行動を抑制するよう要求した。過去の自民党政権時代から積み重ねてきた近隣諸国との関係を大事にし、対立をエスカレートさせず東アジア地域の安定を図ることが、日米両国の共通の戦略的利益ではないか。

安倍氏は06年の首相就任後、初の訪問国に中国を選び、小泉純一郎政権時代に靖国神社問題で悪化した対中関係を改善して戦略的互恵関係を結んだ。当時の安倍外交の現実的柔軟性は評価されていい。

今の日中関係は当時よりもっと困難な状況にある。そして、日中関係の持つ重要性は当時よりもっと大きくなっている。対中関係、対韓関係をめぐる自民党内の意見も強硬姿勢一本やりではないだろう。党内をまとめ、強固な日米同盟を再構築し、中韓両国との関係を戦略的に安定させることは、安倍カラーの外交と矛盾するものではないはずだ。その大局を見失わない外交を求めたい。

ともあれ、論戦の舞台は整いつつある。民主党をはじめとする他の政党も明確な路線を示し、骨太の政策論争を展開してほしい。

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