環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の参加に向けて、環境整備を急ぐことが重要である。
野田首相がプノンペンでオバマ米大統領と会談し、日本の交渉参加に関する日米協議を加速することで一致した。首相は「関係国との協議を決定した当時(1年前)と決意は変わらない」と参加へ意欲を示した。
日米協議は今年2月に始まったが、停滞している。日本政府が民主党内の反対・慎重論を踏まえ、交渉参加の正式決定を先送りしているうえ、米側も大統領選中、日本参加を警戒する自動車業界などに配慮していたためだ。
日本がアジア太平洋地域の活力を取り込み、経済成長につなげるには、自由貿易の新たなルール作りに関与し、自らの主張を的確に反映させる必要がある。
より強固な日米関係を構築し、将来的に中国に国際貿易ルールの順守を迫る基盤を作るうえでも、TPPの優先度は高い。
衆院選で、首相は「TPP推進」を民主党候補の公認基準とする意向だ。安倍自民党総裁も交渉参加に前向きの考えを示した。
だが、両党とも、交渉参加に反対する勢力を抱えている。
衆院選後にどんな政権ができても、早期にTPP交渉に参加できるよう、各党は参加論議を深めるべきだ。政府が自動車などの日米協議を加速しつつ、農業の国内対策を進めることも欠かせない。
野田首相は会談で、南シナ海の領有権をめぐる中国とベトナム、フィリピンの紛争に言及し、「アジアの平和と安定に直結する国際社会共通の関心事だ。国際法の順守が重要だ」と強調した。
南シナ海の問題は、日本にとって人ごとではない。尖閣諸島の国有化後、中国は連日、多くの政府船を派遣し、日本の実効支配を実力で突き崩そうとしている。
中国の手法は、日本だけでなく、アジア共通の懸念材料だとの認識を国際社会に広げることが肝要である。日米が連携し、中国に自制を求めることも大切だ。
首脳会談では、野田首相が、沖縄で米兵の事件が相次いでいることを指摘し、米軍の綱紀粛正の徹底を大統領に要請した。
10月の強姦事件後、米軍が夜間外出禁止令を出したが、これを破った米兵の住居侵入事件が2件発生した。看過できない問題だ。
米軍は、より実効性のある再発防止策を講じるべきだ。日米同盟の根幹である米軍の駐留を安定したものにするには、事件・事故防止へ真剣な努力が求められる。
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