「16日解散」表明 首相の決断を評価する

朝日新聞 2012年11月15日

衆院、16日解散へ 「異常な選挙」の自覚もて

あす16日に衆院を解散する。

野田首相が、自民党の安倍総裁、公明党の山口代表との党首討論で表明した。

総選挙は来月4日公示、16日投開票の日程で行われる。

私たちは首相の決断はやむを得ないものと考える。

社会保障と税の一体改革関連法をめぐり、自民、公明両党の党首と「近いうち」の解散の約束を交わしてから3カ月。首相がその約束をなかなか果たさないことで野党の不信を招き、政治の動きはほとんど止まったままだった。

ぎりぎりまで追い込まれる前に、解散に打って出る。そのことで政治を前に進める契機をつくりたい。そんな首相の思いは理解できる。

首相は党首討論で、「16日解散」の条件として、赤字国債発行法案と衆院の選挙制度改革法案を、今週中に成立させることを求めた。

民主党がきのう国会に提出した選挙制度の法案は、最高裁に違憲状態と指摘された「一票の格差」是正のための小選挙区の「0増5減」と、国会議員が身を切る姿勢を示す比例定数の40削減が盛られている。

「0増5減」については自公両党も異存がない。

一方で、比例区の削減には野党各党の足並みがそろう見通しはない。

ならば、定数削減は来年の通常国会で実現する。それまでの間は議員歳費をカットして身を切る覚悟を示す。そのふたつを確約してほしい――。首相は安倍氏と山口氏にそう迫った。

自公両党は、この提案を受け入れた。赤字国債発行法案とあわせ、今国会では最低限、「0増5減」法案を成立させる必要がある。

そのうえで、各党にしっかりと自覚しておいてもらわねばならないことがある。

違憲状態下のきわめて異常な選挙を、有権者に強いるということである。

解散までに「0増5減」法案が成立したとしても、次の総選挙はいまの定数配分のまま行われることになる。具体的な選挙区割りと周知期間に、少なくとも数カ月はかかるからだ。

このまま次の総選挙が行われる結果、裁判になれば「違憲判断」が下る可能性がある。選挙の一部無効が宣言され、やり直し選挙が迫られるという見方も出ている。

つまり、新たに選ばれる議員は、民意を正しく反映しない選挙で選ばれるのだ。さらにいえば、次の政権はそうした議員たちによってつくられるということでもある。

そんな政権は正統性を欠く。そう批判されても仕方がないのである。「違憲状態の選挙に投票はできない」と投票をボイコットする有権者が出ても、不思議はない。

この事態の深刻さを、各党はかみしめるべきだ。

野田政権がすでに政治を前に進める力を失って久しい。

今の政権に、格差を是正した新制度での選挙が可能になるまでの数カ月間、仕事をせよというのは現実的ではない。事実上の「政治空白」を続けることになるからだ。

違憲状態の選挙は、今回で最後にする。次からはきちんと正統性の担保された選挙をする。

悩ましいが、今回はそうした次善の選択もやむを得まい。

各党に求めたいのは、マニフェスト(政権公約)に、選挙の正常化に向けた具体策を盛り込むことだ。

まずは人口に比例して議席を割り振る小選挙区の選挙権の平等を、どう確保するか。

衆参両院の役割分担を踏まえた抜本的な制度改革は、首相の諮問機関の選挙制度審議会に議論をゆだね、その結論に従うことも明記すべきだ。

総選挙が一気に間近に迫ったことで、各党はマニフェストづくりを急ぐことになる。

項目の羅列だけでは困る。次の政権の使命は何か、メリハリのついた争点を示すことだ。

首相は党首討論で、自民党政権時代の原子力政策や膨れあがった財政赤字を「負の遺産」と批判した。

「2030年代の原発ゼロ」を掲げた脱原発や、公共事業のあり方の改革を争点に訴えていくということだろう。

ならば民主党はこの3年の反省をふまえ、財源をふくめ現実的で説得力のある工程表を今度こそ示さねばならない。

その責任は野党も同じだ。

たとえば「民間投資をふくめ10年間で200兆円」の国土強靱(きょうじん)化を公約の柱に掲げる自民党も、財源を具体的に示してもらわねばならない。

衆参の「ねじれ」をどう克服し、政治を前に動かすかの具体策もぜひ聞きたい。

「第三極」を名乗る各党もふくめ、活発な政策の競い合いに期待する。

毎日新聞 2012年11月17日

衆院解散・総選挙へ 危機直視し針路を競え

衆議院が解散された。衆院選は12月4日公示、同16日の投票に向け各党による事実上の選挙戦が始まった。3年以上にわたる民主党政権の運営に審判が下る。

歴史的とも言える政権交代は結果的に政治の深刻な機能不全をもたらした。東日本大震災や福島原発事故を経て、日本を取り巻く内外の状況の厳しさはもはや「危機」と評しても過言ではない。

「郵政選挙」(05年)や「政権交代選挙」(09年)のような熱狂は今や不要ですらある。過激な議論や浮ついたムードを排し、各党が責任ある国の針路を競う時だ。

解散に先立ち、違憲状態の衆院「1票の格差」を是正するための「0増5減」の先行処理法が特例公債法とともに成立した。立法府がやっと最低限の責務を果たしたが、区割り作業は間に合わず、選挙は今の区割りで行われる。最高裁から選挙無効判決が下される可能性は否定できない。首相発言から2日でできた立法になぜ1年半以上要したのか。憲政史上に汚点を残した怠慢である。

解散後の記者会見で野田佳彦首相は「決められない政治の悪弊を断つための解散」と説明した。エネルギー政策などの争点化に意欲を示し、勝敗ラインは比較第1党とした。

各種世論調査で野田内閣や民主党の支持率が最低水準に落ち込む逆風下の解散だ。09年マニフェストに掲げた約束は財源破綻で総崩れ状態だ。政治主導は実現せず、内紛やお粗末な閣僚更迭を繰り返した。

議員の離党も止まらず、衆院で300を超していた与党は過半数割れした。解散間際に離党する無節操さにもあきれるが、確固たる党の理念がなかった証しだろう。国民の期待が高かった分、失望の強さを覚悟すべきだ。政権運営を真剣に総括し、責任ある公約を示さねばならない。

自民党は安倍晋三総裁の下、政権奪回を目指す。一昨年の参院選以来、ねじれ国会の下で特例公債法を国会攻防の人質に取り「決まらない政治」に加担するなど責任野党の存在感を示してきたとは言い難い。公共事業頼みなど「古い自民」の体質のままではないかとの疑念を払拭(ふっしょく)し、政権担当能力を示してほしい。

日本維新の会、太陽の党など新党勢が国政に進出し「第三極」を目指すなどとても多くの政党が候補を擁立するのも今回の特徴だ。新党が注目を浴びるのは既成政党への不信や2大政党の魅力不足の裏返しだ。

国政の担い手を目指す以上、新党勢も党首人気頼みではもちろん限界がある。基本政策の違いを無視して結集を急ぐのであれば野合との批判は免れない。一部の新党は改憲を正面から提起するが、どこまで説得力を持たせられるか。将来の政界再編につながるような政策軸を示せるかが問われよう。

戦後かつてないほどの厳しい状況に日本が置かれる中での選挙という自覚が必要だ。消費増税の審判を仰ぐ一方で一体改革はなお道半ばだ。国の借金は1000兆円規模となり、超高齢化時代に突入している。実現可能な年金、医療、福祉のビジョンを各党は競うべきだ。

外交も危うい。鳩山内閣を境に沖縄基地問題が混迷を深める一方で集団的自衛権の行使など日米同盟のあり方が論点となっている。尖閣諸島、竹島をめぐり中韓両国との関係がかつてなく悪化したのも外交力低下の表れだ。排外的な風潮が広がりつつあることに注意しつつ、冷静に外交再建を論じねばならない。

とりわけ、国の針路を左右する意味で原発などエネルギー政策と環太平洋パートナーシップ協定(TPP)は重要な争点となる。

民主党などが主張する脱原発依存の方向性は理解できる。だが、内閣が掲げる「2030年代までに原発稼働ゼロを可能とする」ためには、建設再開との整合性や再処理問題などで説得力が問われる。首相が会見で語ったTPP推進にしても民主党内の慎重論を抑え、どこまで公約に明記できるか。

自民党の両課題をめぐる見解はあいまいである。党内対立を恐れ争点化を避けるようでは論戦を乗り切れまい。同じ政党で基本政策をめぐる意見が混在しているような状態と民自両党は決別すべきだ。

多くの新党の参入もあり、選挙後の政権の枠組みも重要なポイントとなる。消費増税など税と社会保障の民自公3党合意路線の堅持は当然だ。選挙結果にかかわらず、参院とのねじれは続く公算が大きい。政策不在の数合わせが行われないためにもどの政策を重視し、どんな政権の枠組みで政治を動かすかを各党は具体的に有権者に説明すべきだ。

直近の2度の衆院選で私たちは自民、民主両党の圧勝を目のあたりにした。だが、郵政民営化や政権交代が政治の劇的な前進をもたらしたとは残念ながら言えまい。

バラ色の処方箋を掲げても目の肥えた有権者はもはやごまかせない。現実に裏打ちされた方策を示すことが逆に希望と安心を生み、政治の信頼回復につながるはずだ。政党、政治家のあり方そのものが問われていることを各党は心得てほしい。

読売新聞 2012年11月17日

衆院解散 問われる各党の公約と実行力

◆「第3極」の真価を見極めたい◆

民主党を中心とする政権の継続か、自民、公明両党の政権奪還か。日本維新の会など新党がどれだけ勢力を伸ばすか。

日本の将来を左右する極めて重要な衆院選となろう。

衆院が16日、解散された。衆院選は、12月4日公示、16日投開票の日程で行われる。事実上の選挙戦が始まった。

今回の衆院選では、まず鳩山内閣以来3代、3年にわたった民主党政権の実績が問われる。

◆民主党に不利でも決断◆

2009年衆院選では「政権交代」ムードが先行し、民主党が大勝した。その結果もたらされた国政の混乱と停滞を多くの有権者が痛感したのではないか。

誤った政治主導を振りかざした鳩山内閣の外交迷走、菅内閣の原子力発電所事故対応の不手際など、失政の具体例には事欠かない。

野田首相は記者会見で、衆院解散の目的について「社会保障と税の一体改革を実現した暁には、近いうちに信を問うと言った。その約束を果たすためだ」と説明した。

首相が、消費税率引き上げを柱とする一体改革関連法の成立を衆参ねじれ国会で実現したことは、確かに歴史に残る功績である。それに協力した自公両党との合意を大切にする姿勢は理解できる。

極めて選挙に不利な状況にありながら、首相が輿石幹事長ら党内の反対を押し切り、解散を断行したことも評価に値しよう。

野田内閣の支持率は低迷し、読売新聞の世論調査では昨年9月の内閣発足以来、最低の19%と危機的水準にある。民主党からの離党に歯止めがかからない。

一方で首相は、「決められない政治が続いてきた。その悪弊を解散で断ちたい」とも述べた。

衆院選の結果がどうであれ、参院で過半数の議席を有する政党はなく、少なくとも来夏の参院選までは衆参のねじれは解消しない。政治を前に動かすには、政党間の連携や連立が不可欠だ。

◆民自公の協調は必要だ◆

民主、自民、公明の3党合意に基づく消費増税は道半ばである。改革を成し遂げるためにも、選挙後、民自公協調路線を維持することが求められよう。

日本の再生にとって最も必要なのは、2大政党のいずれかを軸とする安定した政権である。合意形成に手間取るような多党化は、好ましくない。

しかし、民主、自民両党に次ぐ第3極を目指そうと日本維新の会、太陽の党など新党が続々と誕生した。10を超える党の乱立という異例の展開で、勢力結集へ模索が続く。既成政党への不満の受け皿になることを狙っている。

前議員が新党に走る動きは、生き残りのためではないか。第3極の真価を見極める必要がある。

各党は、日本のあるべき「国家像」を明確にし、政策の優先度を示してもらいたい。

09年衆院選での民主党政権公約(マニフェスト)に対する信頼は失墜した。月2万6000円の子ども手当や高速道路無料化など実現しなかったバラマキ政策は財源の裏付けを欠いていた。政治不信を増幅する原因になった。

国民の歓心を買うため、実現性のない、大衆迎合の政策を競う愚を繰り返してはなるまい。

新たな公約の作成に際しては、ねじれ国会で、他党の協力なしに法案が成立しないことを考えるべきだ。政策の達成期限や数値目標だけを示しても、意味はない。

野田首相は、30年代に「原発稼働ゼロ」を目指す方針を改めて強調した。「脱原発依存の方向感を持つ政党が勝つのか、従来のエネルギー政策を進める政党が勝つのかが問われる」と位置づけた。

◆大衆迎合の政策避けよ◆

国民の生活が第一、みんなの党、日本維新の会なども「脱原発」を唱えている。

だが、代替エネルギーの確保や電気料金の値上げ問題、経済・雇用への悪影響など多くの懸案があり、脱原発が果たして現実的な政策と言えるのか、疑問である。

自民党は「政府が責任を持って再稼働する」として安全性を確認した原発は活用する考えだ。中長期のエネルギー政策についても具体的に提示してほしい。

争点は、このほか、日本経済再生のための成長戦略、環太平洋経済連携協定(TPP)参加問題、社会保障、領土・主権問題、安全保障など数多い。

各政党、各候補の政策とその実行能力を厳しく吟味し、後悔しない「選択」を目指したい。

産経新聞 2012年11月17日

解散総選挙 国の立て直し競い合え 選択の誤りもう許されない

衆院が解散され、12月16日の総選挙で新たな政権選択が行われる。今度こそ、民主党政権を選んだ失敗を繰り返すことなく、日本を立て直せる新政権を構築することが求められている。

各党とも具体的かつ実効的な処方箋を国民にできるだけ早く示すべきだ。

問われるべきは国家観である。それを決定的に欠いていたのが民主党政権だ。

日本固有の領土である尖閣諸島に中国が奪取の動きをみせているのも、国家をどうするのかなどの意識が薄い政権が3代続いたことによるといえる。

≪第三極は何をするのか≫

求められているのは、領土・主権を守り抜く抑止力を強めることだ。また、国家として緊急事態に対処し、主権を守るため、新憲法制定を主要な争点にすることも重要である。

注目したいのは、橋下徹大阪市長が率いる日本維新の会と、石原慎太郎前東京都知事らの太陽の党を中心とした第三極の動きだ。

17日に大阪で両党の「合流」が発表される方向となった。既成政党に飽き足らない層の受け皿となる可能性があり、動向に目が離せない。

しかし、両党が掲げてきたエネルギー政策や消費税の地方税化など主要政策には決定的な隔たりもある。

総選挙後の政治への影響力を持つための「大同団結」を唱えるだけで、果たして有権者を納得させられるものなのか、もっと説明が必要だろう。

3年余にわたり国のかじ取りを民主党に委ねた結果を、厳しく検証しなければならない。

迷走の最大の原因は、民主党が政権交代前の段階から、党内対立や分裂を避けるため、重要政策の明確な方向付けを放置してきたことにある。最重要課題の一つである憲法改正も、具体的な方向性を示そうとはしなかった。

民主党は、長期政権による制度疲労などから行き詰まっていた自民党政権の崩壊を待つだけで、日本をどうするかの根本的なテーマを棚上げしたまま政権に就いたといえる。

前回衆院選でのマニフェスト(政権公約)では、「国民の生活が第一」という響きのいいスローガンの下に、子ども手当などのばらまき政策を並べた。肝心の財源について無駄の削減で16・8兆円を出せると主張したが、予想通り破綻した。

一方、マニフェストに書かれていない消費税増税に取り組んだものの、与党は分裂した。

福島第1原発事故を受けて民主党政権が脱原発路線を進めたことは、電力供給の不安定化や料金値上げなど経済の足を引っ張る結果を招いた。再生に必要な電力を確保する原発エネルギー政策こそ提起すべきだ。

≪尖閣いかに守るか語れ≫

失敗を繰り返さないためにも、政権を担おうとする政党は国家ビジョンを持ち、人気取りではない実現可能な政策を国民に提示しなければならない。

3年ぶりに政権復帰を目指す自民党にも同じことが求められる。政党支持率で自民党は民主党を大きく上回っている。だが、第三極勢力への関心の強さは、既成政党への不信を示していることを忘れてはならない。

自民党は自衛隊を「国防軍」と位置づけた新憲法改正草案をすでにまとめ、尖閣諸島の統治強化を唱えている。問題は、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)や原発政策で党の明確な方針が定まっていないことだ。

安倍晋三総裁は「われわれは日米同盟関係にふさわしい交渉の仕方ができる」と語り、民主党政権が掲げる「2030年代に原発ゼロ」は無責任と批判した。当然だが、自民党もこうした根幹の政策をもっと明快に語るべきだ。

特例公債法や衆参両院の「一票の格差」是正の関連法成立は、消費税増税法を成立させた民主、自民、公明3党の協力の枠組みの成果だ。総選挙後も参院のねじれは解消しないとみられ、今後も維持せざるを得ない。

野田佳彦首相は解散後の記者会見で、尖閣諸島の実効統治強化を念頭に「極論は排外主義につながる」と非難したが、自らの領土をどう守るかも語ってほしかった。尖閣の守りこそ国民に示すべき大きなテーマだ。

朝日新聞 2012年11月13日

年内解散浮上 その前になすべきこと

野田首相が年内の衆院解散に踏み切る意向を固めた。

「近いうち」の解散を首相が約束し、自民、公明両党の協力をえて一体改革関連法を成立させてから3カ月。民自公3党のにらみ合いが続き、政治はほとんど動きを止めたままだ。

だからだろう、野田内閣の支持率は朝日新聞の調査で2カ月連続で18%にとどまっている。

本来なら、衆院議員は4年間の任期いっぱい仕事をするのが筋である。解散・総選挙をしたからといって、政治が一気に前に進む保証もない。

一方で、「ねじれ国会」のもと、3党の信頼関係が崩れたままでは、ゆきづまった政治を動かす展望が描けないことも、また現実である。

次の解散・総選挙を、政治を動かす契機とするよう求めたい。そのために、解散の前に、与野党にぜひ実行してもらわねばならないことがある。

私たちは、最高裁に違憲状態と指摘された衆参両院の一票の格差をただちに是正するよう、繰り返し主張してきた。

首相はきのうの衆院予算委員会で、衆院の格差を正す小選挙区の「0増5減」だけでなく、比例定数の40削減も実現したいと改めて強調した。

だが、比例区だけを大きく減らす民主党案には、野党各党に異論が根強い。今国会で合意を得られるとは思えない。

首相に提案がある。どうしても定数を削減したいなら、あすの党首討論で、より現実的な具体案を示してはどうか。

それが受け入れられない場合には、今国会では「0増5減」の先行処理にかじを切るべきである。

「0増5減」すらできず解散など許されるはずがない。首相は覚悟を決めるべきだ。

次に、衆参の「ねじれ」のもとでも国会審議が滞らないルールづくりである。

赤字国債発行法案は今国会で成立する見通しだが、首相が求める通り、来年以降は予算案と一体で成立させるべきだ。

予算執行に不可欠なこの法案を政争の具にすることは、国民生活を人質にとるに等しい。その愚かさは今回、どの党も肌身で知ったはずである。

国会同意人事で衆院の議決を優先することなど、国会を動かすルールをできる限り確認しておくことも重要だ。

さらに、社会保障をめぐる国民会議を設置し、本格的な議論を始めることも欠かせない。

限られた日数でも、せめて以上の三つくらいは実行する。政治の最低限の責任である。

毎日新聞 2012年11月15日

「16日解散」表明 首相の決断を評価する

国民注視の中、異例の解散宣言だった。野田佳彦首相は14日の党首討論で、あす16日に衆院を解散する考えを表明した。民主党内には依然、早期解散に反対する声が渦巻いているが、首相は年内総選挙に突き進む覚悟とみられる。私たちは首相の決断をまず高く評価したい。

民主党政権が発足して3年余。首相が何かを決めようとしても足元の民主党内からすぐさま反対論が噴出してまとまらない光景を私たちは何度も見てきた。政権運営は限界に近づいており、ここは有権者の選択によって政治を立て直すのが「動く政治」実現への近道と考えるからだ。

党首討論で首相がどこまで解散時期に踏み込むか疑心暗鬼だった自民党の安倍晋三総裁も面食らったはずだ。野田首相は衆院小選挙区の「1票の格差」を是正するための「0増5減」の法改正を実現させるとともに、来年の通常国会で大幅な定数削減を図ることなどを条件に挙げ、それを安倍氏が確約すれば「16日に解散してもいい」と逆提案した。

安倍氏は直ちに答えられなかったが、討論後、自民党は定数削減に関しても協力する考えを表明、これで解散の条件は整った。

野田首相が自民党の谷垣禎一前総裁と「近いうち解散」を約束してから既に3カ月以上が経過した。首相が年内総選挙に踏み切る決断をしたのは、「うそつき」と批判されるのが相当こたえていたからだろう。

民主党は衆院でも過半数割れ寸前で今後、内閣不信任案が可決される可能性もある。追い込まれた形での解散を避け、攻めの姿勢をアピールしたい思いもあったはずだ。

次期衆院選の台風の目と見られている日本維新の会など「第三極」の結集に向けた各党協議はまだ始まったばかりで、候補者調整も含め準備が整わないうちに選挙戦に突入した方が、苦戦が必至の民主党には得策という計算もあっただろう。

しかし、首相が政治生命をかけると明言してきた消費増税法は成立したものの、税と社会保障の一体改革はまだ道なかばだ。民主党は小沢一郎元代表らの大量離党後も消費増税に反対して離党する議員が後を絶たない。このままでは自民党、公明党との間で結んだ3党合意も瓦解(がかい)しかねない。野田首相が最も恐れたのはそれではないか。

反対が相次ぐ中で解散に踏み切れば、民主党には新たな離党者が出る公算が大きい。だが、それも覚悟しての決断と思われる。そもそも民主党は9月の党代表選で野田首相の代表再選を決定したばかりだ。解散は首相の専権であり、その判断には最終的に従うのが政党人の責務だ。

ただし、「16日解散」には危惧する点がある。本当に「0増5減」の立法措置が間に合うかどうかだ。

私たちは司法が違憲状態と認定した現在の「1票の格差」是正は与野党合意が困難な定数削減と切り離し、優先して実現を図るべきだと再三指摘してきた。

解散後の日程は12月4日公示、同16日投票となる見通しだ。この日程では次期衆院選を是正後の新しい区割りで実施するのは不可能となる。だが、最低限、新区割りの前提となる法改正だけは成立させる必要がある。仮に法改正が間に合わないとすれば、あすの解散を1週間程度遅らせてでも実現させるべきだ。それは強く指摘しておく。

言うまでもないことだが、定数の大幅削減や、それに伴う選挙制度の変更は民主、自民、公明3党だけで決めるべきではない。次の通常国会では衆院だけでなく、参院のあり方も含めて、全党で具体的な協議を直ちに始めるべきだろう。

次の衆院選は民主党政権の3年間の実績が問われる選挙だ。消費増税など3党合意の是非や、今後、原発をどうするかをはじめエネルギー政策のあり方も大きなテーマとなるだろう。悪化する日中関係への対応など外交政策も従来に増して重要だ。「動かない政治」「決められない政治」の要因となってきた衆参のねじれにどう対応するかも選挙戦で各党が徹底的に議論してほしい。

前回の衆院選で民主党が掲げたマニフェストは財源の手当てをおろそかにした結果、破綻した。民主党はこの点をさらに厳しく検証し、マニフェストを再構築すべきだ。無論、各党とも公約作りを急ぐべきだ。

野田首相は環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉への参加を民主党のマニフェストに盛り込み、選挙の争点にしたい意向のようだ。TPP参加は日本の将来を左右する象徴的なテーマである。それを争点にするのは間違っていない。だが、これについても民主党内では反対論が相次いでいる。まずは党内をまとめることだ。

TPPに関しては自民党も意見がまとまっておらず、主張はあいまいだ。これまで、ともかく早期解散を要求してきた自民党だが、今後は早急に党内議論をまとめる必要がある。他党や新党も同様である。

ブームや風に流されず、政策が具体的にきっちりと語られる。そんな衆院選になるよう、各党準備を急ピッチで進めてほしい。

読売新聞 2012年11月16日

きょう衆院解散 民自公協調が「条件」を整えた

衆院はきょう16日、解散される。野田首相が掲げた解散の三つの「条件」がほぼ整ったためだ。

焦点だった衆院選挙制度改革では、「1票の格差」を是正する小選挙区の「0増5減」案が民主、自民、公明各党などの賛成多数で衆院を通過した。16日の参院本会議で成立する。

首相が自公両党に提案した比例定数削減に関しては、民自公3党が来年の通常国会での成立を目指すことで一致した。

与野党は、議員歳費を2割削減する法案も16日に成立させる。議員定数削減が実現するまでの間、国会議員が自ら「身を切る」姿勢を示そうというのだろう。

首相が党首討論で言及した「最悪のケース」で合意が実現することになる。

とはいえ、小選挙区の区割り見直し作業や周知期間を含めると数か月必要で、来月の衆院選は、最高裁に昨年3月指摘された「違憲状態」のまま実施される。

いずれ選挙無効を求める訴訟が起こされ、厳しい司法判断が下される公算が大きい。

もう一つの条件だった、赤字国債発行を認める特例公債法案も成立する見通しだ。財政規律に配慮することを前提に、2015年度までは、赤字国債を自動的に発行できるようになる。

民自公3党は、社会保障制度改革国民会議の月内設置でも合意した。持続可能な年金制度のあり方など論点は多いはずだ。

解散の条件ではなかったが、年金支給額を物価下落と見合う適正水準に減額する国民年金法改正案も、民自公3党の協力により、成立することになった。

自公政権時から放置されてきた年金の「払い過ぎ」がようやく是正される意義は小さくない。

衆参ねじれ国会であっても、与野党が真剣に接点を模索すれば、成立させることは十分可能だ。

社会保障・税一体改革の効率的な運用に不可欠な共通番号制度関連法案(マイナンバー法案)や、国際結婚破綻時の子の扱いを定めるハーグ条約実施法案などが今国会では廃案となるが、来年の通常国会で成立を図るべきだ。

衆院選後も、参院の会派構成が基本的に変わらない以上、政治を前に動かすには、民自公協力の枠組みの維持が重要となる。

各党の消長がかかる衆院選は、激しい“非難合戦”に陥りがちだが、民自公3党は、そのことを十分念頭に置いて、選挙戦に臨まねばならない。

産経新聞 2012年11月15日

16日解散 国難打破する新体制を 野田首相がやっと決断した

野田佳彦首相が16日に衆院を解散すると明言した。総選挙は12月16日投開票で実施される。民主党政権による「政策停滞」は顕著で、閉塞(へいそく)感が列島全体を覆っていた。遅きに失したものの首相の決断を率直に評価したい。

米国はオバマ大統領が再選され、中国も15日に習近平体制がスタートする。日本も国難を克服できる新体制に移行しなければなるまい。

中国が奪取しようとしている尖閣諸島をいかにして守るか、脱デフレの経済政策をどう展開するか、「脱原発」のエネルギー政策でこの国は大丈夫か、などを各党は具体的な政策として国民に示さなければならない。

≪憲法改正を争点にせよ≫

国家の危機乗り切りは、現在の枠組みでは対処できず、新たな憲法をつくるしかないという主張も広がりをみせている。日本をどう立て直すかを主要な争点に、国民に信を問う好機到来でもある。

首相が国民との約束である「近いうち」の解散を具体的に検討しはじめたことに対し、民主党内では「4年の衆院任期をやり抜くべきだ」「いま解散すればバタバタみんな落ちる」など反対の大合唱が起きていた。

首相が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の参加方針を打ち出し、総選挙で争点化しようとしていることにも異論が噴出した。輿石東幹事長は「解散反対は党の総意だ」と党内情勢を首相に伝えていた。

さらに、解散を阻止しようと「首相が自ら身を引くことも考えるべきだ」と公言する党幹部さえいた。首相はカンボジアで開かれる東アジアサミット(EAS)に出席するため18日から日本を離れる予定だ。その間に「野田降ろし」の動きが広がりかねないとの危機感を強め、16日解散で先手を打つ勝負に出たといえる。

消費税増税の是非をめぐり民主党は大きく分裂した。9月代表選で、野田首相は再選を果たした。だが、党側では再び重要政策の方向付けを先送りし、首相の専権事項である解散さえ認めようとしない動きが顕在化した。

党首の判断に従わず、国益より党利党略を優先させる構図は、3年余にわたる民主党政権下での内政・外交を通じた混迷の原因だった。首相の解散判断には、こうした党の状況を変えるねらいもあったのだろう。

一方、石原慎太郎前東京都知事らの太陽の党、橋下徹大阪市長が率いる日本維新の会など第三極と呼ばれる勢力は、既成政党を批判して支持を広げようとしている。首相としては、選挙準備や連携などが整う前に総選挙に持ち込む判断をしたともいえる。

野田首相は党首討論で、16日解散に絡め、民主党案では45削減となる衆院定数削減の今国会実現を自民党の安倍晋三総裁に強く迫った。自ら身を削る改革姿勢を強調し、解散先延ばしを批判してきた自民党に逆襲した格好だ。

≪3党の枠組みは堅持を≫

ただ、民主党が改めて提出した政治改革関連法案は、少数政党に意図的に議席を多く配分する連用制を比例代表に一部導入する内容のままで問題が大きい。来年の通常国会で確実に実施できるよう、自民、公明両党と削減の仕方をさらに詰める必要がある。

首相の解散明言を受け、赤字国債を発行するための特例公債法案は民主、自民、公明の3党の協力の枠組みで16日に成立する見通しとなった。

今年度予算は歳入の4割にあたる38兆円超の赤字国債を発行するが、特例公債法案が成立していないため、異例の執行抑制に入っている。成立がこれ以上遅れれば、行政サービスの低下など国民生活に影響を与えることが懸念されていた。それだけに3党の合意を歓迎したい。

さらに3党は平成27年度までは予算案が成立すれば、赤字国債発行を自動的に認めることも決めた。同法案は、衆参ねじれの下、「人質」として政府・与党を揺さぶる材料として使われてきた。

財政規律の確保は当然だが、「決められる政治」に向かう重要な合意だ。総選挙後も枠組みを維持し、国家や国民の利益となる政策実現の推進力とすべきだ。

社会保障制度改革国民会議についても人選を進め、膨張を続ける社会保障費見直しの議論に入らなければならない。

読売新聞 2012年11月15日

衆院解散表明 首相の重い決断を支持する

「1票の格差」是正を先行せよ

突然の衆院解散の表明だった。民主党内で早期解散への反対論が噴出する中、乾坤一擲(けんこんいってき)、中央突破を図ったのだろう。

野田首相が党首討論で自民党の安倍総裁に対し、衆院の定数削減を来年の通常国会で実現すると確約すれば、「16日に衆院を解散する」と言明した。

安倍氏は明言を避けたが、党首討論後、「通常国会で結論を得るべく全力を尽くす」と述べ、16日の衆院解散が固まった。

衆院選は、12月4日公示―16日投票の日程で行われる予定だ。

政治不信の増幅を回避

内閣支持率が低迷しており、次期衆院選では、民主党の大敗も予想される。首相があえて解散・総選挙を断行することは、見識ある、重い決断と評価できる。

8月に「近いうち」の解散を表明しながら、何もせずに年を越すようでは、首相発言の信頼性に疑問符が付き、国民の政治不信が一段と高まりかねない。

首相は、追い込まれる形でなく、主導権を持って解散を断行したい考えだった。日本維新の会など第3極の体制が整う前に、衆院選に臨む狙いもあろう。

民主党内の大勢を占める解散反対論者は、「解散は政治空白を招く」などと主張する。

しかし、野田政権の基盤が弱体化した中で、重要な政策課題を先送りし、いたずらに延命を図る方が、内政、外交両面で、より深刻な政治空白をもたらす。

野田首相の解散方針に反発する民主党議員は公然と離党の動きを見せている。解散は首相の専権事項であり、首相の決断に従えない以上、離党はやむを得まい。

年内解散を前提にすれば、解散日程が遅れるほど、来年度予算の編成や成立もずれ込むことが懸念されていた。景気への悪影響を抑える意味でも、最も早い「16日解散」は悪くない選択と言える。

年内に発足する新政権が、来年度予算を編成し、景気対策や外交の立て直しなどの重要課題に取り組むことが望ましいからだ。

党首討論の場で、野党に「踏み絵」を踏ませるかのように、解散条件の受け入れを迫る手法の是非はともかく、野田首相が党内の反対論にひるまず、解散権を行使することは支持したい。

民自公の信頼が大切だ

衆院選後も、衆参のねじれ状況が続く可能性が高い以上、民主、自民、公明3党が一定の信頼関係を維持し、協力できる体制を構築しておく意義は小さくない。

解散までの時間は限られているが、与野党は協力して、喫緊の課題を処理すべきだ。

赤字国債の発行を可能にする特例公債法案は、民自公3党が16日の成立で合意した。国庫が底をつかないよう、解散前に確実に成立させねばならない。

衆院選の「1票の格差」を是正し、「違憲状態」の解消を図ることも不可欠である。

解散を先送りする思惑から、この問題に真剣に取り組んでこなかった民主党の責任放棄の罪は大きい。民主党は今なお、小選挙区の「0増5減」と比例定数削減の一体処理に固執している。

「消費税率引き上げ前に国会議員が自ら身を切る」ため、有権者受けのする定数削減に積極的な姿勢を示すポーズだろうが、解散前に結論を出すのは明らかに時間的に無理がある。

「違憲状態」の解消には本来、「0増5減」の法案成立後、小選挙区の区割り作業を経て、新しい選挙区で衆院選を行う必要があるが、それには数か月を要する。

解散前に、まず「0増5減」の法案を成立させる。定数削減やその他の制度改革は来年の通常国会で実現する。これが現実的であり、衆院の最低限の責務だろう。

「0増5減」さえ見送ったまま衆院選を行った場合、「違憲」として、選挙無効とする司法判断が出かねない。そうした事態は回避しなければならない。

TPPや原発で論争を

衆院選では、3年余の民主党政権の評価が問われる。衆参ねじれ国会の下、「決められない政治」が続いたが、民主、自民の2大政党が引き続き主導するのか、あるいは、第3極が勢力を大きく伸ばすのかも焦点となろう。

政策面では、野田首相は、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加を掲げ、争点化する意向だ。自民党など他党も、あいまいな態度では済まされない。

社会保障と税の一体改革や、原発・エネルギー、外交・安全保障政策についても、各政党は政権公約(マニフェスト)を通じて、立場を明確にしてもらいたい。

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