自由貿易を推進し、日本の成長に弾みをつけることが重要だ。野田首相は環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加を決断すべきである。
首相が衆院予算委員会で、米国が主導しているTPPについて、民主党の次期衆院選政権公約(マニフェスト)に盛り込む考えを改めて示し、「党内で議論を進めていく」と述べた。
首相が「TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入る」と表明してから1年が過ぎた。一段の市場開放に備えた農業の国際競争力強化策などの環境整備もしないまま、参加の決断を先送りしてきたのは問題である。
ただ、ここに来て、TPP参加によってアジアの活力を取り込み、日本の成長加速を目指す姿勢を鮮明にする意味は大きい。
年末から年始の可能性がある次期衆院選はTPPが争点となろう。活発な論議が求められる。
民主党内には依然、反対論が強く、首相の「TPP解散」を阻止する動きも活発化している。
だが、まずは交渉のテーブルに着かないと物事は始まらない。首相は腰砕けにならず、指導力を発揮してもらいたい。
一方、自民党は「関税撤廃を前提としたTPP参加に反対」という慎重な構えを崩していない。
しかし、自民党が政権奪還を目指すなら、通商国家・日本がいかに貿易を拡大し、経済を活性化させるか、具体的な道筋を示すことが不可欠である。
自民党内には、TPP参加への賛成論も少なくない。党内論議を尽くし、説得力のある政策を打ち出さねばならない。
懸念されるのは、日本が決断をもたついている間に、出遅れが決定的になる事態である。
すでにカナダとメキシコの参加が決まり、TPPを推進してきたオバマ米大統領が再選された結果、来年にかけて、11か国の交渉は加速する可能性が大きい。
このままでは関税撤廃・引き下げや貿易・投資ルール作りを巡り、日本抜きで交渉が進みかねない。日本がルール作りなどに関与し、意見を反映できるかどうかで、国益が左右されるだろう。
TPP参加は安全保障上も重要だ。日米関係の強化につながり、尖閣諸島を巡って対立する中国への牽制効果も期待できる。
TPPとともに、日中韓自由貿易協定(FTA)や東アジア包括的経済連携(RCEP)などにも並行的に取り組み、したたかな戦略を推進する必要がある。
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