第三極 より明確な国家観を示せ

朝日新聞 2012年11月18日

維新と太陽 腑に落ちない合流だ

石原慎太郎氏が率いる太陽の党が解党し、橋下徹大阪市長の日本維新の会に合流した。

合流後の維新の代表には石原氏が就き、橋下氏は代表代行になるという。

太陽の党は、結党わずか5日で姿を消した。あっけにとられた人も多いのではないか。

この「大同団結」は、腑(ふ)に落ちないことがあまりに多い。

まず、基本政策である。

太陽は、維新が掲げる「2030年代までの原発ゼロ」や環太平洋経済連携協定(TPP)への参加、消費税の地方税化などに否定的だった。

だからこそ、太陽の議員たちも、橋下氏も、党の合体はもともと想定外だったはずだ。

それが一転、原発政策やTPPなど8項目について合意文書を交わし、合流を決めたのだ。

「第三極」がばらばらでは選挙に勝てない。そう唱え、東奔西走して合流をまとめた石原氏の思いは分からないではない。

だが、今回の合意文書はあいまいな部分が目立つ。

たとえば原発政策では「30年代までの原発ゼロ」はおろか、「脱原発」の文言すらない。

TPPに関しては交渉には参加するが、「国益に沿わなければ反対」と両論併記のような書き方だ。外交は尖閣問題に触れている以外は何もない。

これでは政策の違いを棚上げしての、選挙目当ての帳尻合わせとしか思えない。

石原氏はきのうの記者会見で「いろいろな意見の違いはあるが、天下をとってから議論すればいい」と語った。

だが、ことは国の根幹に関わる政策である。そのような認識で選挙に臨むとすれば、有権者を軽く見ていると言われても仕方がない。

次に、理念である。

橋下氏はもともと、太陽とは「カラーが違う」と連携に否定的だった。太陽の保守色の強さへの違和感からだろう。

大阪の地域政党が母体の維新は地域主権をめざし、地方から国を変えることに主眼を置く。

一方の石原氏は、戦後体制を否定し、現行憲法の破棄が持論だ。維新と太陽はそもそもの立脚点が異なっている。

石原氏は、減税日本やみんなの党との協力を引き続き呼びかけていくという。両党とも、やはり基本政策で違いがある。

石原氏は太陽と減税日本との合流をいったん発表したのに、橋下氏が反発すると一夜で白紙に戻した経緯がある。

維新の勢いに乗りたい思いからなのだろうが、あまりに信義を欠いたふるまいではないか。

毎日新聞 2012年11月14日

「第三極」の結集 違いは、ささいでない

石原慎太郎前東京都知事と平沼赳夫元経済産業相を共同代表とする新党「太陽の党」が旗揚げした。民主、自民に対抗する第三極結集問題が注目されるが、合流を視野に入れた日本維新の会(橋下徹代表)などとの政策協議は衆院解散の足音が迫る中、難航含みとなっている。

基本政策が共通する新党が連携を深めることを必ずしも否定はしない。だが、原発や環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への対応のように国のかじ取りにかかわる政策の一致をささいなことと片付けるわけにはいかない。結集路線をどこまで追求するか、見極め時であろう。

石原氏の著作「太陽の季節」からイメージしたとみられる「太陽の党」は自主憲法制定や官僚支配打破を掲げ、衆院選に進出する。

石原氏は記者会見で「(新党は)一過程に過ぎない。必ず選挙前に大同団結する」と強調、日本維新の会を含めた第三極の結集を強い調子で訴えた。年内解散の可能性が高まり、まずは独自の新党結成を急がざるを得なかったということだろう。

日本維新の会、みんなの党、太陽の党3党の結集をめぐり、共通政策に向けた個別協議もすでに行われている。だが、皮肉なことに合流に意欲的な石原氏が率いる新党と他2党の理念、政策の方向が一番隔たりを感じさせている。

橋下氏は平沼氏らが「真正保守」を掲げている点について「(平沼氏が所属した)たちあがれ日本とはカラーが違う」と述べ、強い違和感を示してきた。戦後体制を否定し現憲法破棄を主張する石原氏と、実務的に統治機構改革を主張する橋下氏はスタート地点が違うのではないか。

原発政策も隔たりが解消されていない。維新の会は「2030年代までに原発ゼロ」目標を政権公約に掲げる検討をしているが、石原氏は同調するのか。TPPについては民主党に争点化を図る動きも出ている。石原氏はかつて「原発(問題)はささいなこと」と語った。だが、国の針路にかかわるこうした課題をはっきりすり合わせず結集を急いでも有権者の共感は得られまい。

年内衆院選の動きが加速し、新党勢も候補擁立など準備に追われている。維新の会は小選挙区で各都道府県「1区」に候補を優先擁立する方針で、第1次の公認候補を近く公表する。3党間で短期間に競合する候補の調整まで進めていくのは現実には容易であるまい。

維新の会が看板政策とする消費税の地方税化など、党独自の政策をどれだけ有権者に具体的に説明できるかも新党勢は問われている。結集にこだわるあまり、肝心の政策が逆に埋没する展開は願い下げである。

読売新聞 2012年11月19日

「第3極」 政策のあいまいさ放置するな

民主、自民の2大政党に続く「第3極」を目指すなら、日本が直面する課題について明確な政策を掲げる必要がある。

石原慎太郎前東京都知事が率いる太陽の党は、橋下徹大阪市長を代表とする日本維新の会への合流を決めた。

石原氏が代表、橋下氏が代表代行に就く。

知名度の高い石原、橋下両氏が組む相乗効果で、衆院比例選だけでなく、大政党に有利な小選挙区でも議席確保を見込んでいる。

ただ、石原氏は、いったん発表した減税日本との合流を白紙に戻すなど、動きが慌ただしい。「結集ありき」のような選挙互助会的政党には疑問を禁じ得ない。

維新の会と太陽の党がまとめた合意文書にも問題が多い。

焦点の原発政策に関しては、安全基準の「ルール構築」などにとどめた。「2030年代の原発全廃」を目指す維新の会と、脱原発には批判的な太陽の党の溝が埋まらなかったためだろう。

石原氏が言うように、原発政策は、経済・産業への影響など、複合的な観点から議論する必要がある。今から「原発ゼロ」を掲げるのは非現実的だ。

合意には、維新の会の看板政策とも言える「消費税の地方税化」が盛り込まれた。石原氏は地方税化に慎重だったはずなのに、政策をがらりと変えるのであれば、きちんとした説明が必要だ。

尖閣諸島問題では、中国に国際司法裁判所(ICJ)への提訴を促す、とした。これでは、日本が領有権問題の存在を認めることにならないか疑問だ。

環太平洋経済連携協定(TPP)については「交渉に参加するが、協議の結果、国益に沿わなければ反対」とした。維新の会の推進論と、太陽の党の反対論を併記しただけのように見える。

橋下氏は、「政策抜きの野合」との他党の批判に対し、「既存政党に比べれば、はるかに一致している」と反論している。

そうは言っても、民主党のように路線対立で混乱を繰り返すのではないか、懸念は消えない。

「第3極」を目指して、みんなの党が維新の会との選挙協力を進めている。国民の生活が第一も、反消費増税、脱原発を掲げ、他党との連携を模索している。

民主党政権下で政治不信が高まり、無党派層が増えたことを意識した動きだ。国民の歓心を買うような政策ばかりでは困る。政策の十分な吟味が必要である。

産経新聞 2012年11月18日

維新と太陽合併 国家や憲法でも合意必要

日本維新の会が全体会議で太陽の党との合併を正式に決めた。

新代表に太陽の党の共同代表だった石原慎太郎前東京都知事、代表代行に維新の会代表の橋下徹大阪市長がそれぞれ就いた。党名は「日本維新の会」で、維新の会が太陽の党を吸収した形だ。

石原氏が目指す「第三極の大同団結」につながるかはまだ不透明だが、来月の衆院選の台風の目になることは確実だ。

この合併は、衆院解散を受けて急遽(きゅうきょ)進められた結果だ。

石原氏は橋下氏との会談に先立ち、河村たかし名古屋市長率いる「減税日本」との合流を決めた。橋下氏はこれに不満を示し、みんなの党と大筋合意した内容をベースにした共通政策案を石原氏に提示した上で、「政策の一致が重要だ」と強調したとされる。

石原氏が橋下氏に同調し、減税との合流を白紙に戻した結果、太陽と維新の合流が決まった。

問題は、太陽と維新が政策でどこまで一致したかである。維新の全体会議で松井一郎幹事長は「道州制の実現、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉参加などで合意した」と発表した。

維新は「脱原発」を掲げていた。石原氏は先月の都知事辞任会見で「経済再生について10~20年先まで緻密な計画を立て、どれだけの電力がいるかのシミュレーションなしに、いきなりの提案は提案にもならない」と述べ、計画性のない脱原発論を批判した。

橋下氏は会見で「『2030年に原発ゼロ』という表記はしない」と述べたが、原発政策は日本の将来の国づくりにかかわる重要課題だ。合意の中身をもう少し明らかにしてほしい。

政策合意で「尖閣問題で国際司法裁判所(ICJ)への提訴を中国に促す」としているのは問題だ。橋下氏の持論だが、日本は固有の領土である尖閣諸島を実効統治し、「領土問題は存在しない」という立場だ。ICJ提訴を日本から持ち出す筋合いではない。

橋下氏は、韓国が不法占拠している竹島についても「どうやって共同管理に持ち込むかという路線に舵(かじ)を切らなければならない」と述べている。橋下氏の領土に関する考えには危うさもあり、是正する役割を石原氏に期待したい。

維新と太陽の合併が確かな第三極になるには、国家観や憲法改正での大筋の合意も必要だ。

産経新聞 2012年11月14日

太陽の党 閉塞状況打破の先導役に

石原慎太郎前東京都知事とたちあがれ日本の平沼赳夫代表の2人を共同代表とする新党が結成された。党名は「太陽の党」で、「自主憲法制定」など11項目を綱領にうたっている。

日本維新の会(代表・橋下徹大阪市長)などと連携した第三極が、政治の閉塞(へいそく)状況を破る原動力となることを期待したい。

石原氏は会見で、日本の現状を憂えた戦争未亡人の和歌を紹介しながら、したたかで強い日本への国づくりを訴えた。日本維新の会などとは「必ず大同団結する」と宣言した。

平沼氏は、日本の歴史と伝統文化を守ることと憲法改正の必要性を改めて強調した。

中国が尖閣諸島の奪取を狙い、北朝鮮が核実験を繰り返す危機的な状況に、「平和を愛する諸国民の公正と信義」への信頼をうたった現行“平和憲法”が通用しなくなっていることは明白である。

第三極を目指す維新の会、みんなの党(渡辺喜美代表)に加え、安倍晋三総裁の率いる自民党も「国防軍」を明記した憲法改正草案を示している。憲法を次期衆院選での争点にすべきだ。

太陽の党はまた、東日本大震災への対応の反省を踏まえた「危機管理体制の立て直し」「強い統治能力の回復」、資源争奪戦の激化や国際テロの横行に備えた「わが国の発言力と防衛力の倍増」などの大胆な提言を行っている。

ただ、第三極連携を意識し、消費税や原発政策で明言を避けているのが気がかりだ。国家の基本となる政策を曖昧にしてはなるまい。維新の会やみんなの党にも、より明確な国家観の提示を重ねて求めたい。

日本維新の会などとの政策協議では、教育改革も重要課題だ。

石原氏は足かけ14年に及ぶ都知事時代、都立高学区制全廃や徳育充実などの教育改革を進めた。橋下氏も大阪府知事時代から、学力向上や国旗・国歌の指導徹底を目指し、共通点が多い。

平沼氏によれば、太陽の党にはすでに10人近い国会議員から参加の打診があり、次期衆院選に数十人の立候補を予定している。維新の会は今週中にも第1次候補を発表する。選挙区で共倒れを防ぐ調整も行われているという。

第三極には、衆院選後の保守勢力の結集を含めた政界再編の先導役も期待される。

産経新聞 2012年11月10日

第三極 より明確な国家観を示せ

特例公債法案が衆院本会議で審議入りし、成立にめどがついたことで、年内解散の可能性が出てきた。次期衆院選に向けて、石原慎太郎前東京都知事らによる第三極の連携を模索する動きも活発化している。しかし、肝心の政策協議が難航し、確かな第三極を形成するには至っていない。

石原氏はみんなの党の渡辺喜美代表との会談で、「強いしたたかな日本をつくろう」と語り、渡辺氏も「大変結構だ」と応じた。石原氏は日本維新の会の松野頼久国会議員団代表とも会い、「『脱』霞が関、中央集権打破だけでも一致すればいい」と呼びかけ、松野氏も同意したという。

だが、「『脱』霞が関」だけでは、連携は無理だ。これからの日本の国づくりに向けた政策について、大筋の合意が必要である。

石原氏と維新の会代表、橋下徹大阪市長、たちあがれ日本の平沼赳夫代表の会談でも、衆院選に向けて政策や選挙協力を話し合うことで一致するにとどまった。

石原氏が「小異を捨て大同に」と呼びかけたのに対して、橋下氏は、石原氏個人とは連携するものの、たちあがれ日本とは「カラーが合わない」と述べ、連携は困難との考えを伝えたとされる。

たちあがれ日本はすでに、「強い日本」を目指す政策宣言をまとめ、「自衛軍」を明記した自主憲法大綱案も示している。

一方、維新の会は、「教育委員会制度の廃止」などを盛り込んだ維新八策(最終版)を公表し、憲法改正に関して、「首相公選制導入」などをうたっている。

橋下氏は、具体的な憲法改正の方向性をもっと明確に打ち出すべきである。現状では、地域政党の域を脱せないだろう。

みんなの党は、自衛権の明確化を求めた「憲法改正の基本的な考え方」を示している。ただ、党の「アジェンダ」などを見る限り、増税によらない「小さな政府」以上の国家像が見えてこない。

中国公船が尖閣諸島周辺で領海侵犯を繰り返すなど、日本の領土が危険にさらされている今、国のありようが問われている。

先月、都知事を辞任して国政に転じる意向を表明した石原氏は、「新憲法づくり」の必要性を強調した。来週、石原氏を代表に立てて結成される新党を含む第三極の連携を、憲法改正を軸にした保守勢力の結集につなげたい。

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