石原慎太郎氏が率いる太陽の党が解党し、橋下徹大阪市長の日本維新の会に合流した。
合流後の維新の代表には石原氏が就き、橋下氏は代表代行になるという。
太陽の党は、結党わずか5日で姿を消した。あっけにとられた人も多いのではないか。
この「大同団結」は、腑(ふ)に落ちないことがあまりに多い。
まず、基本政策である。
太陽は、維新が掲げる「2030年代までの原発ゼロ」や環太平洋経済連携協定(TPP)への参加、消費税の地方税化などに否定的だった。
だからこそ、太陽の議員たちも、橋下氏も、党の合体はもともと想定外だったはずだ。
それが一転、原発政策やTPPなど8項目について合意文書を交わし、合流を決めたのだ。
「第三極」がばらばらでは選挙に勝てない。そう唱え、東奔西走して合流をまとめた石原氏の思いは分からないではない。
だが、今回の合意文書はあいまいな部分が目立つ。
たとえば原発政策では「30年代までの原発ゼロ」はおろか、「脱原発」の文言すらない。
TPPに関しては交渉には参加するが、「国益に沿わなければ反対」と両論併記のような書き方だ。外交は尖閣問題に触れている以外は何もない。
これでは政策の違いを棚上げしての、選挙目当ての帳尻合わせとしか思えない。
石原氏はきのうの記者会見で「いろいろな意見の違いはあるが、天下をとってから議論すればいい」と語った。
だが、ことは国の根幹に関わる政策である。そのような認識で選挙に臨むとすれば、有権者を軽く見ていると言われても仕方がない。
次に、理念である。
橋下氏はもともと、太陽とは「カラーが違う」と連携に否定的だった。太陽の保守色の強さへの違和感からだろう。
大阪の地域政党が母体の維新は地域主権をめざし、地方から国を変えることに主眼を置く。
一方の石原氏は、戦後体制を否定し、現行憲法の破棄が持論だ。維新と太陽はそもそもの立脚点が異なっている。
石原氏は、減税日本やみんなの党との協力を引き続き呼びかけていくという。両党とも、やはり基本政策で違いがある。
石原氏は太陽と減税日本との合流をいったん発表したのに、橋下氏が反発すると一夜で白紙に戻した経緯がある。
維新の勢いに乗りたい思いからなのだろうが、あまりに信義を欠いたふるまいではないか。
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