年内解散へ動き 「0増5減」成立を急げ

朝日新聞 2012年11月13日

年内解散浮上 その前になすべきこと

野田首相が年内の衆院解散に踏み切る意向を固めた。

「近いうち」の解散を首相が約束し、自民、公明両党の協力をえて一体改革関連法を成立させてから3カ月。民自公3党のにらみ合いが続き、政治はほとんど動きを止めたままだ。

だからだろう、野田内閣の支持率は朝日新聞の調査で2カ月連続で18%にとどまっている。

本来なら、衆院議員は4年間の任期いっぱい仕事をするのが筋である。解散・総選挙をしたからといって、政治が一気に前に進む保証もない。

一方で、「ねじれ国会」のもと、3党の信頼関係が崩れたままでは、ゆきづまった政治を動かす展望が描けないことも、また現実である。

次の解散・総選挙を、政治を動かす契機とするよう求めたい。そのために、解散の前に、与野党にぜひ実行してもらわねばならないことがある。

私たちは、最高裁に違憲状態と指摘された衆参両院の一票の格差をただちに是正するよう、繰り返し主張してきた。

首相はきのうの衆院予算委員会で、衆院の格差を正す小選挙区の「0増5減」だけでなく、比例定数の40削減も実現したいと改めて強調した。

だが、比例区だけを大きく減らす民主党案には、野党各党に異論が根強い。今国会で合意を得られるとは思えない。

首相に提案がある。どうしても定数を削減したいなら、あすの党首討論で、より現実的な具体案を示してはどうか。

それが受け入れられない場合には、今国会では「0増5減」の先行処理にかじを切るべきである。

「0増5減」すらできず解散など許されるはずがない。首相は覚悟を決めるべきだ。

次に、衆参の「ねじれ」のもとでも国会審議が滞らないルールづくりである。

赤字国債発行法案は今国会で成立する見通しだが、首相が求める通り、来年以降は予算案と一体で成立させるべきだ。

予算執行に不可欠なこの法案を政争の具にすることは、国民生活を人質にとるに等しい。その愚かさは今回、どの党も肌身で知ったはずである。

国会同意人事で衆院の議決を優先することなど、国会を動かすルールをできる限り確認しておくことも重要だ。

さらに、社会保障をめぐる国民会議を設置し、本格的な議論を始めることも欠かせない。

限られた日数でも、せめて以上の三つくらいは実行する。政治の最低限の責任である。

毎日新聞 2012年11月10日

年内解散へ動き 「0増5減」成立を急げ

衆院解散をめぐる状況が動き出している。赤字国債を発行するための特例公債法案について民主、自民、公明3党は15日の衆院通過で合意、参院で早ければ19日に採決され成立する見通しとなった。

これで首相が解散の前提として挙げた三つの条件のうち、衆院選挙制度改革の動向に焦点は事実上絞られることになる。民主党は違憲状態にある衆院「1票の格差」を是正するための緊急措置の先行処理をすみやかに決着させ、民意を問う環境の整備を急ぐべきである。

特例公債法案の成立遅れは自治体への地方交付税の支払いの凍結などを招き、国民生活にも重大な支障を来しかねない状況だ。そもそもこうした案件を与野党攻防の人質にすること自体が不適切だ。

自民党の安倍晋三総裁が成立を阻止しない柔軟姿勢でのぞんでいることは責任ある対応として評価できる。民主党もあれだけ協力を野党に呼びかけてきたのだから、参院で一日も早い成立を図ることは当然だ。

残る大きな課題は衆院の選挙制度改革だ。民主党は衆院1票の格差を緊急是正するための小選挙区の「0増5減」案と比例定数の40削減案を提出する予定だ。だが、定数削減問題は選挙制度改革の抜本改革と並行して議論すべきもので、容易に結論がでないことは民主党自身がよくわかっているはずだ。

仮に「1票の格差」に何の手立ても講じられずに総選挙が実施された場合、最高裁による選挙無効判決が下される可能性は否定できない。たとえ次期選挙に新たな区割りが間に合わずとも、是正作業に向け立法措置を講じることは国会の最低限の責務であろう。

自民党が特例公債法案の成立に歩み寄るのであれば、民主党が今度は目の前の課題解消に協力する番だ。すみやかに「0増5減」の緊急是正を決着させるべきだ。解散先送りの道具として処理を引き延ばすような対応は厳に慎まねばならない。

自民、公明両党は衆院の年内解散を求めている。与野党の駆け引きは激しさを増しており、14日に予定される野田佳彦首相と安倍氏らの党首討論がひとつのヤマ場となる。

首相は討論で「1票の格差」是正を先行させる方針を表明し、衆院解散についてより踏み込んだ覚悟を示す時だ。そのうえで両党首は今後、予算関連法案を国会攻防の人質としない原則を確認してほしい。

民主党内には環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の争点化を図る動きも出ているが、主要な課題で意見集約に努めるのは当然だ。来る審判に向け、公約の具体化を急ぐよう各党に改めて求めたい。

読売新聞 2012年11月10日

「年内解散」検討 環境整備へ与野党は歩み寄れ

年内の衆院解散へ、与野党は懸案処理を急ぎ、野田首相が決断できる環境を整えるべきだ。

首相が解散・総選挙の検討に入った。民主党内に離党予備軍を抱え、衆院での与党過半数割れも視野に入る。首相は、追い込まれるよりも主導権を握った形での解散を模索しているのだろう。

前回衆院選から約3年2か月が経過し、国民に信を問う潮時を迎えつつあるのは確かだ。

首相の背中を押したのは、自民党の安倍総裁が解散の確約にこだわらず、赤字国債発行を可能にする特例公債法案の成立などに協力する方針に転じたことだ。

法案は15日に衆院を通過し、月内に成立する見通しだ。

自民党が、国民生活を「人質」とする戦術は取るべきではないと判断したのは妥当である。

衆参ねじれ国会の下、首相が重要法案成立と引き換えに解散時期の明示を迫られることは、解散権の制約につながろう。

こうした駆け引きが繰り返されれば、政権は短命化し、政治の混迷が続く。安倍氏の譲歩は、政権復帰を目指す自民党にとっても損にならないはずだ。

公明党も、解散の確約にこだわらず、自民党に同調した。部分的にせよ、民自公路線がこの局面で復活した意義は大きい。

3党は、来週の党首討論と衆院予算委員会の開催でも合意した。尖閣諸島問題や、首相が参加に前向きな環太平洋経済連携協定(TPP)を巡り、活発な政策論議を繰り広げてもらいたい。

解散へのもう一つの条件である衆院選挙制度改革に関し、民主党は、小選挙区の「0増5減」と比例定数削減の同時決着を求める姿勢を崩していない。だが、これでは野党の協力が得られず、法案成立のメドは立たない。

「違憲状態」のままの衆院選を避けるには、自民党の求める「0増5減」の先行処理が不可欠だ。民主党の輿石執行部は腹をくくって、方針を転換する時である。

一方、参院の野党は、首相問責決議を理由に、政権と全面的に対決する構えを示している。

民自公3党は、年金支給額を物価下落に応じ、適正水準に是正する国民年金法改正案の衆院通過でも大筋合意した。参院でも、3党が協力し、必要な法案については成立させるべきである。

参院民主党は、野党の反対で見送った参院本会議での首相の所信表明演説を求めている。要らざる挑発は控えた方がいいだろう。

産経新聞 2012年11月06日

首相と公債法案 嘘つきといわれぬ決断を

「近いうちの衆院解散」発言から3カ月近くたつが、野田佳彦首相はいまだに国民との約束を果たしていない。このままでは年内解散・総選挙は日程的にも困難になる。首相は「嘘つき」になってしまう。

この状況に対し、年内解散の約束が特例公債法案に協力する条件だとしてきた自民党の安倍晋三総裁が、「早くしないと政府の支払いが滞るから別途、考えている」と法案先行を容認した。

膠着(こうちゃく)状態を抜け出す大きな環境の変化で、政府が果たすべき責任を野党が共有する姿勢ともいえる。ここまでおぜん立てされては首相は決断を先送りできまい。

首相は特例公債法案成立と衆院の「0増5減」の格差是正、社会保障制度改革国民会議の設置を解散の「環境整備」としてきた。

特例公債法案の成立にめどが立てば環境は一気に整う。「0増5減」も首相が定数削減を切り離せば自民党との合意は難しくない。安倍氏は国民会議の設置についても協議に応じる構えだ。

政府・与党は解散要求に応じないまま特例公債法案を事実上放置し、野党に責任を転嫁する姿勢を見せてきたが、自民党の方針転換でその手はもう通じない。

産経新聞社とFNNの合同世論調査で、解散について「首相は約束を破っている」と思う人は55%に上り、6割超が「近いうち」は「年内」と答えた。特例公債法案が成立すれば、首相は解散すべきだと考える人が75%にもなることを重く受け止めるべきだ。

特例公債法案が成立しないため、予算執行が一部抑制される異常事態に陥っているが、27日を最後に国債の入札も当面、行われないという。国民生活への悪影響が拡大し、金融市場の混乱で財政への信用も低下しかねない。このまま放置することは許されない。

解散から公示日までには事務的に約2週間が必要とされる。12月16日投開票なら今月22日頃までに解散しなければならない。残された時間は少ない。

安倍氏は「首相は嘘つきではないことを証明する最後のチャンスだ」とも語った。方針転換について、自民党や公明党には「法案成立だけを食い逃げされないか」との懸念もある。

安倍氏の決断に首相が応える番だ。3党首会談を改めて開き、解散への手順を詰めてほしい。

朝日新聞 2012年11月10日

解散の前に 一票の格差を忘れるな

赤字国債発行法案が今国会で成立する見通しになり、野田首相が早期の衆院解散に踏み切る条件がひとつ、整う。

ゆきづまった政治を動かすには、首相が「近いうち」の解散の約束を果たすことが欠かせない。与野党がようやくその環境整備に動き出したことは、一歩前進といえよう。

だが、ここで改めて首相と民主党に強く求めておかねばならないことがある。

最高裁に違憲状態と断じられた衆院の「一票の格差」を、すみやかに是正することだ。

この問題で、民主党の姿勢は不誠実と言わざるをえない。

民主党は来週、次のような法案を国会に再提出するという。

▼小選挙区の一票の格差を正す「0増5減」。

▼最高裁が合理性がないと判断した、都道府県にまず1議席を割り振る「1人別枠方式」の条文の削除。

▼国会が身を切る姿勢を示すための比例定数の40削減と、比例区の一部に少数政党に有利になる連用制の導入。

比例定数の削減や連用制導入では各党の賛否が割れ、合意が得られる見通しはない。

なのに、民主党は一括処理にこだわっている。なぜか。

解散させないため、あえて野党に反対させ、法案成立を阻もうとしているのではないか。

そのあげく、「0増5減」もできないまま解散になったらどうなるか。

裁判になれば違憲判断が下るのは間違いない。選挙無効が宣言され、やり直し選挙が迫られる可能性も出てくる。

立法府の権威が傷つくだけではない。主権者である国民をないがしろにする暴挙でもある。

「違憲状態のまま唯々諾々と投票はできない」と、有権者のあいだで投票ボイコットが広がったとしても不思議はない。

そうなれば、政治が大混乱することは避けられまい。

ここは、首相みずから事態打開に動くしかない。

「0増5減」は、とりあえず一票の格差を2倍未満におさえる意味がある。今国会では最低限の緊急避難措置として、「0増5減」を先行処理すべきだ。

そのうえで、選挙権の平等をどう図るかや、定数削減と選挙制度のあり方については時間をかけて検討すればいい。

首相の諮問機関である選挙制度審議会をただちに立ち上げ、衆参の役割分担をふまえた抜本的な議論をゆだねるのだ。

最高裁は参院も違憲状態と指摘している。この際、両院を同時に改革する好機である。

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