プロ野球改革 選手の希望かなうドラフトに

毎日新聞 2012年10月27日

ドラフト会議 国際ルールを検討せよ

選手個人の意思を尊重しつつ、野球界全体の発展をどう図っていくのかを考えさせられた今年のプロ野球ドラフト会議だった。

米大リーグへの挑戦を表明していた岩手・花巻東高の大谷翔平投手が25日のドラフト会議で日本ハムから単独1位指名を受けた。厳しい環境でのスタートを覚悟している大谷投手は「アメリカでやりたい気持ちは変わらない」と話し、18歳の決断に揺るぎがないことを明かした。

日本ハムは入団拒否のリスクを承知しながら「今年一番魅力のある選手」という理由で大谷投手を指名した。昨年は巨人志望だった東海大の菅野智之投手をあえて指名し、独占交渉権を獲得した。菅野投手には入団を拒否され、1位指名枠を棒に振る格好になったが、ドラフト制度の形骸化にもつながる巨人の「一本釣り」を阻んだ指名は共感を得た。

国内外のプロ球団との交渉に必要なプロ志望届を9月に提出していた大谷投手を日本ハムが指名することはルール上も全く問題はない。昨年同様、将来のチーム編成を第一に考えた指名であり、批判すべきものではない。だから栗山英樹監督が「大谷君や関係者の気持ちを考えると申し訳ない」と話したことは、何かすっきりしない印象を残した。

ドラフト会議後、日本野球機構(NPB)は大谷投手が大リーグ球団と契約した場合、その後の日本球団との契約を制限する規定が適用されるとの見解を示した。これはドラフト指名を拒否して大リーグと契約した選手は日本に帰国した後にプロ入りを希望したとしても高校生は3年間、大学生・社会人は2年間、ドラフトの対象にしないとの内容で、「人材の国外流出」を阻む目的で4年前にできた。大リーグ挑戦をためらわせる、見せしめ的な規定であり、心ある野球ファンのみならず、多くの国民の共感は得られないだろう。速やかに撤廃すべきだ。

ドラフトによって日本ハムは来年3月31日まで大谷投手との独占交渉権を得たが、その間に大谷投手が大リーグと交渉するのも可能だ。大リーグのドラフトは米国、カナダ、プエルトリコの選手が対象で、日本を含めた他国についてはアマ選手もプロ選手も獲得は自由競争となる。日米間では「互いのドラフトは尊重する」との取り決めはあるものの、単なる申し合わせに過ぎない。

グローバル化の時代を迎え、世界規模での野球の普及を考えるのであれば、新人選手だけでなく、フリーエージェント(FA)権やポスティングシステム(入札制度)などプロ選手の移籍を含めた選手獲得の国際ルール作りを日米が主導して検討すべき時期だろう。

読売新聞 2012年10月27日

プロ野球改革 選手の希望かなうドラフトに

プロ野球ドラフト(新人選手選択)会議は、今年も様々なドラマを生んだ。12球団に指名された選手たちが、プロ野球を背負って立つ存在に成長することを願いたい。

巨人入りを望んでいた東海大の菅野智之投手は、念願がかなった。昨年、日本ハムの1位指名を拒否し、浪人生活を送った。「心が折れそうな時もあったが、すべて報われた気がします」。喜びの言葉には実感がこもっていた。

伸び盛りの時期に実戦から遠ざかった影響は、決して小さくないだろう。そのハンデを乗り越え、ファンの期待に応える投球を見せてもらいたい。

菅野投手のケースは希望球団に入りたくても入れないドラフト制度の問題点を浮き彫りにした。

ドラフトの目玉と言われた花巻東高(岩手)の大谷翔平投手は、日本ハムの1位指名を受けた。米大リーグへの挑戦を事前に表明したが、日本ハムは「その年の一番いい選手を」という方針の下、指名に踏み切った。

才能豊かな若者が海外でチャレンジするのは、素晴らしいことだ。大谷投手の世代は、イチロー選手らが大リーグで活躍する姿を少年期に見て育った。「自分もあの舞台で」との思いを抱くのは、自然なことなのかもしれない。

大リーグで日本選手の評価が高まり、米球団も日本を有望な新人の発掘先として重視している。

だが、優れた選手の海外流出が続けば、日本のプロ野球の地盤沈下は避けられまい。

ドラフト候補選手の獲得に関し、日米球界間には互いに獲得を自粛する紳士協定しかなく、明文化されたルールは存在しない。

米球団は獲得したい日本選手と自由に交渉が可能だ。ドラフトで交渉権を獲得しない限り選手と折衝できない国内球団よりも、有利な立場にある。日米の球団が対等な条件で獲得を競えるルールが必要な時代になったと言える。

大谷投手は今後、日本ハムに指名されたことに拘束されず、複数の米球団との交渉を進められる。自分の意思で球団を選ぶことができるわけだ。

これに対し、国内のドラフト制度は、選手が球団を選択できる仕組みにはなっていない。

有望選手が国内でプレーしたいと思うように、プロ野球をより魅力的なものにしなければならない。それと並行して、選手の希望が、ある程度は反映される制度へと改善していくことが求められているのではないだろうか。

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