原子力規制委員会は来月初めから、全国六つの原発で活断層の現地調査を始める。
国の指針では活断層の上に重要施設を建ててはならないことになっている。しかし経済産業省の旧原子力安全・保安院による審査の甘さが指摘され、新体制で調べ直すことになった。
調査は再稼働する原発を選ぶための作業ではない。不十分だった過去の調査を反省し、専門家が予断ぬきで危険性を判断する作業の一環だ。
手始めは、現在、唯一稼働している関西電力大飯原発(福井県おおい町)だ。調査団の5人の専門家の中には、敷地内の断層が活断層である可能性を指摘している研究者も含まれる。
過去の審査にとらわれず、徹底的に調べて、説得力のある判断を示してほしい。
活断層とは、過去に活動し将来もずれを起こす可能性がある断層だ。ここで地震があれば、直上はもちろん、周辺にも大きな揺れをもたらす恐れがある。
大飯の場合、焦点はF―6と呼ばれる断層だ。2号機と3号機の間にあり、重要施設である非常用取水路の直下を走る。
別の断層と連動して動く可能性も指摘され、活断層なら原発の運転には致命的となる。
規制委の田中俊一委員長は活断層の可能性が高ければ3、4号機の停止を求める方針だ。
現地調査は北陸電力志賀原発などでも順次おこなわれる。調査の結果、活断層なら無論だが、断定にいたらなくても疑いがあれば、安全優先の立場から「黒」とみなすべきだ。
東京電力福島第一原発では、津波の危険性が指摘されながら東電が軽視し、対策を怠ったことで事故に結びついた。同じ轍(てつ)を二度と踏んではならない。
原子力規制委は現地調査と並行し、活断層の審査指針なども来年夏までに改める。
島崎邦彦委員長代理は、12万~13万年前以降に動いた断層を活断層とする現行の指針を、40万年前より後に動いたものとする考えを示した。
活断層を、過去40万年の間に繰り返し動いているものと規定する政府の地震調査研究推進本部の見解に合わせる形だ。見落としをなくすため、安全審査の幅を広げるのは当然だ。
現在の安全審査は原発直下の活断層が主眼だが、それで十分か。東日本大地震で地下の構造が変化した地域もある。原発周辺の活断層についてもさらに調査し、リスクをきちんと見定めるべきではないか。
疑わしきは危険性あり。それを大原則として貫いてほしい。
この記事へのコメントはありません。