米大統領選討論 世界の脅威を語ったか

朝日新聞 2012年10月24日

米大統領選挙 問われる激動期の針路

11月6日投開票の米大統領選に向け、民主党のバラク・オバマ大統領と、共和党のミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事が激しく競り合っている。

両氏は3度の討論会に臨み、各回1時間半にわたって議論を交わした。大々的に中継され、有権者が候補者の政策や人柄に触れる貴重な機会だった。

米国はイラク、アフガニスタンと二つの戦争で大きく傷ついた。「アラブの春」のあとの中東では地殻変動が起き、対応に苦慮している。

2008年秋のリーマン・ショックで経済はつまずき、中国との産業競争も厳しさを増すばかりだ。世界唯一の超大国という立場は揺らぎ、国家財政の悪化で、これ以上、世界の問題を抱えきれないのが実情だ。

針路をどうとるか。外交をテーマにした最後の討論会では、米国の指導力をめぐる考え方の違いが出た。

オバマ氏は、核開発を進めるイランの制裁で中国やロシアの協力を取り付けたことを挙げ、「我々がどのようにして米国の威信と強さを世界で取り戻したかを示している」と述べた。

一方、ロムニー氏は「4年前と比べ、世界のどこを見ても米国の影響力は強まっていない」と批判。自由や人権、民主主義を守るため、強い米国でなくてはならない、と訴えた。

ただ、単独での軍事行動を辞さなかった共和党のブッシュ前政権とは一線を画した。内戦状態のシリアへの軍事介入の可能性は否定し、イランをめぐっても外交的手段で核開発を断念させることが重要だと訴えた。

オバマ、ロムニー両氏がともに強調したのは、米国の力の回復には、国内経済の立て直しが必要との基本方針だ。それだけに選挙戦では、雇用の拡大や財政赤字の削減など、経済政策が最大の争点となっている。

討論会で毎回とり上げられたのが、対中政策だ。

両候補とも、中国への雇用流出や、貿易の不公正さを問題にした。ロムニー氏は「執務初日に中国を為替操作国に指定する」と訴えており、当選すれば、中国との貿易摩擦が悪化しかねないとの懸念も出ている。

有権者受けを狙って対中強硬路線を打ち出している面もあるが、それだけ米国にとって中国の存在感が増していることの裏返しに他ならない。

言うまでもなく、外交・安全保障でも、経済でも、米国の進む道は日本の針路とも深いつながりをもつ。内向きになりがちな米国の有権者だが、世界の動きにも視野を広げてほしい。

毎日新聞 2012年10月24日

米大統領選討論 世界の脅威を語ったか

米外交の主たる関心は、やはり中東にあると再認識させる舌戦だった。11月6日の大統領選投票日まで2週間余り。民主党のオバマ大統領と共和党候補のロムニー前マサチューセッツ州知事が、米南部フロリダ州で最後の討論会に臨んだ。

テーマは外交と安全保障。外交が苦手とされるロムニー氏を相手に、オバマ大統領は終始攻勢を保ち、最終盤で貴重なポイントを稼いだ格好だ。しかし選挙の見通しは依然、予断を許さないものがある。

両候補の口調が熱を帯びたのはイランの核開発問題だ。イスラエルはイラン空爆を検討しており、これにイランが反撃すれば一大動乱に発展しかねないという危機感がある。

オバマ大統領は「イスラエルが攻撃されたら米国は同国と連帯する」と述べる一方、イランに種々の制裁を科してきたことを踏まえて「私が大統領である限り、イランは核兵器を持たない」と断言した。イスラエルの空爆をけん制したのだろう。

ロムニー氏の方は、イスラエルが攻撃された際の支援には「軍事」も含むと明言し、親イスラエルの姿勢を強調した。米国では親イスラエル団体の動向が選挙結果を大きく左右することもある。こうした政治風土には批判もあるが、今は両候補とも票固めに必死なのだろう。

また、オバマ大統領が国際テロ組織アルカイダを率いるウサマ・ビンラディン容疑者を殺害し、イラクとアフガニスタンでの軍事行動終結に道筋をつけた意義を強調したのに対し、ロムニー氏は在リビア領事館襲撃事件(9月)で米大使らが殺害されたことを挙げて、オバマ政権の取り組みの甘さを批判した。

だが、シリアへの対応も含めて両候補に大きな政策の違いがあるわけではなく、中東における米国の影響力も衰えている。ただ、「イスラムとの融和」を説くオバマ大統領に対してロムニー氏にはイスラムへの警戒感が強く、「21世紀の主たる敵はイスラムのファシスト」と指摘したブッシュ前大統領(共和)の認識に似ている点が注目されよう。

約1時間半の討論はもっぱら中東問題に集中したが、重大な問題は他の地域にもある。オバマ大統領が米国を「太平洋国家」と位置付けるのなら、東シナ海や南シナ海における中国の「海洋進出」と周辺国の対立にも真剣に向き合う必要があろう。

尖閣問題もその一環だが、討論会では険悪化する日中摩擦も、北朝鮮の核・ミサイル問題も、具体的なテーマにならなかった。国内向けの討論とはいえ、果たして世界の脅威を客観的に語ったか、米外交はあまりに中東偏重ではないか、という疑問が消せないのは残念だ。

読売新聞 2012年10月24日

米大統領選 対中圧力で一致した外交討論

接戦の米大統領選を制するのはどちらか。

再選に挑む民主党のオバマ大統領と、政権奪還を目指す共和党候補のロムニー前マサチューセッツ州知事が、最後のテレビ討論会で熱の入った論戦を展開した。

終了直後の世論調査ではオバマ勝利と見る結果が出た。失業率が7・8%に改善されたのと合わせオバマ氏に追い風となろう。

だが、支持率は拮抗(きっこう)している。11月6日の投開票まで、激しい競り合いが続くのは間違いない。

討論会のテーマは、外交・安全保障問題だった。

「アラブの春」やシリア内戦で混沌(こんとん)とする中東情勢、北朝鮮の核武装問題、東シナ海や南シナ海における中国の軍事的膨張などに、超大国・米国の次期大統領はどう対処していくのか。日本はじめ世界中が注目した。

ロムニー氏は「この4年間に米国の影響力は世界で弱体化した」と“弱腰”外交を攻撃した。

オバマ氏は、経済をテーマとした討論会では精彩を欠いたが、外交問題では雄弁だった。

イラクでの戦争を終わらせ、アフガニスタンでも米軍撤収に道筋をつけた。イラン核開発の阻止へ制裁強化が効果をあげている。こうした実績を示しながら、「米国は強くなった」と反論した。

だが、中国など新興国の台頭によって相対的に米国の影響力が弱まっているという意味では、ロムニー氏の指摘は正しい。

その中国を巡り、オバマ氏は、「敵であると同時に、ルールに従うなら国際社会でのパートナーになり得る」と述べた。

米国にとって中国は、主要な貿易相手国であり最大の貿易赤字相手国である。米国債の保有残高では日本を抜き世界最大の債権国となった。警戒すべき相手であると同時に相互依存の関係にある。

オバマ氏は、経済では国際基準に従うよう圧力をかけ、安全保障政策では同盟国などと連携を強化する路線を強調したと言える。

ロムニー氏も、中国のルール違反には厳しく対処し、「就任当日に為替操作国に指定する」と明言した。オバマ政権より強硬な対中姿勢を示したものだ。

オバマ氏は、米国が太平洋国家としてアジアを重視することを再確認した。ロムニー氏も基本的な認識は一致している。日本としては、歓迎できる。

日本は、米国と共に、中国に国際ルールを順守するよう求め、領土の保全や、航海、貿易の自由の確保に万全を期す必要がある。

産経新聞 2012年10月25日

米大統領選と日本 姿見えぬ同盟を懸念する

外交・安全保障を主題とした米民主党のオバマ大統領と挑戦者のロムニー共和党候補の最後のテレビ討論会で際立ったのは、アジア太平洋の「要石」とされる同盟国・日本について両氏が全く言及しなかったことだ。

大統領選の争点は内政が大半を占めるのが通例で、特に今回は空前の巨額債務を抱える中で雇用や経済再生策が問われている。そうした文脈で日本に触れずとも不思議はないし、初めてでもない。

だが、中国の急速な台頭にどう向き合うかに世界が注目し、現実に尖閣諸島をめぐる日中対立も起きている中で「日米同盟」も「日本」も登場しなかったことを日本政府は憂慮すべきである。

野田佳彦政権には同盟を強化し、対中抑止の実効性を高める方策に一層の奮起を求めたい。

討論では前半で中東情勢、イランの核開発問題などが論じられ、ロムニー氏は「4年間に世界のどこを見ても米国の影響力が弱まった」と批判し、オバマ氏は「ロムニー氏の主張は向こう見ずで、時代錯誤」と反撃した。

「力の外交」を重視するロムニー氏に対し、オバマ氏は「協調重視」という違いはあるものの、ともに「強いアメリカ」を掲げ、そのために米経済の再生を最優先する基本姿勢で共通していたことは評価されていい。

中国については「敵対者だが、ルールを守れば潜在的パートナーになる」(オバマ氏)との見方で一致した。米中の経済相互依存や中国が最大の米国債保有国であることとも無関係ではあるまい。

だが、現実の中国は国際規範を無視して周辺海域で強引に海洋権益を拡大しつつある。オバマ氏は昨年来のアジア太平洋にシフトした外交を強調したが、日本の存在や日米同盟に触れなかった。両氏ともに日中関係に言及しなかったことも、大いに気になる。

日本では過去3年の民主党政権下で普天間移設、オスプレイ配備などで同盟空洞化の危機を招いてきた。強い米国の再生に向け同盟国の義務をきちんと果たす存在として、あえて言及されなかったのなら問題はない。現実はそうでないところに問題がある。

いずれが勝っても、次期大統領がアジア太平洋の安定のため日本に一層の課題を迫ってくる可能性もある。同盟に甘えが許されないことを日本は認識すべきだ。

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