華やかな未来は約束されていない。それを覚悟でメジャー挑戦をえらんだ超高校級右腕の決心を見守りたい。
岩手・花巻東高の大谷翔平投手が、大リーグに挑むと宣言した。ドラフト1位候補の高校生が、日本球界を経ずに米国をめざす初のケースだ。
高校生最速の時速160キロをマークした逸材には、ドジャースなど米国の10球団近くが熱い視線を送る。
下積みのマイナーリーグで勝てなければ、メジャーの扉は開かない。
日本でプロになり、実績を作って大リーグを狙うほうが現実的だし、収入も安定する。
そんな損得計算も両親の反対も、18歳は押し切った。
イチロー選手がさっそうと大リーグに登場した年に小学1年生だった世代にとっては、現実味がある目標なのだろう。
25日のドラフト会議で、日本の球団が指名しても、米国行きを阻む法的効力はない。
4年前、社会人の田沢純一投手がレッドソックスと契約した。1位指名の確実な選手が日本球界を経由せずにメジャー契約を結んだ初のケースだった。
危機を感じた日本球界は防衛策を考えた。
ドラフトを拒んで外国の球団に入ったら、退団しても高卒は3年間、大卒・社会人出身は2年間、日本の球団と契約できない申し合わせだ。
しかし今回、高校生の夢が揺らぐことはなかった。一部の球団には「契約できない期間を延長すべきだ」という意見もあるようだが、若者の可能性を邪魔する内規はやめるべきだ。
サッカー界でも近年、高校生がJリーグを経由しないで欧州のプロクラブと契約する例があるが、日本に戻ればすぐにJリーグで活躍できる。野球界も有能な人材を締め出す手はない。
大谷投手はいう。
「ずっとメジャーでやりたい気持ちが強かった。若いうちから行きたいというのもあった」
今のルールでは高校生が日本の球団に入ると、自由に契約する球団を選べるフリーエージェント(FA)権は、国内移籍で8年、海外移籍は9年かかる。国内外を問わず、FA権の取得年数を縮めてはどうか。
日本でキャリアを始めても、全盛期で米国に渡れば、峠を越す前に復帰し、再び花を咲かすケースも増えるだろう。グローバル化に逆らい、日本に閉じ込めておく発想は、捨てよう。
嫌がらせのような規制では、若者の挑戦を止められない。それを日本球界は教えられた。
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