田中法相問題 これ以上「醜態」を見たくない

朝日新聞 2012年10月23日

田中法相問題 政権の体なしていない

野田政権の体たらくは目を覆うばかりだ。

外国人企業からの献金や、過去の暴力団関係者との交際を認めた田中慶秋法相が、ようやく辞任する見通しだ。

田中氏に法務行政の責任者が務まらないことは、いくつもの理由から明らかだった。

辞任は当然のことだが、それで済む話ではない。

まず、外国人献金問題だ。この問題は昨年、当時の前原外相や菅首相らにも発覚し、前原氏は外相を辞任している。

つまり、政治資金規正法違反に当たることは、当時から分かっていたはずである。なのに今回、本紙に指摘されるまで是正を怠ってきた田中氏の脇の甘さは度し難い。

次に、過去に暴力団組長の宴席に出たり、暴力団幹部の仲人をしたりしたとの週刊誌報道の事実関係を認めたことだ。

暴力団と付き合いのある法相が、暴力団の摘発にあたる検察を指揮・監督する。たちの悪い冗談だとしか思えない。

こうした問題を野党に追及されるのを恐れたのだろう、田中氏は先週、参院決算委員会の閉会中審査を欠席した。まさに前代未聞の国会軽視である。

閣僚は、国会に答弁や説明を求められれば出席しなければならない。これは憲法63条に定められた義務である。

法相就任以来の田中氏の記者会見では、しどろもどろの答えが続いたり、質問と答えがかみ合わなかったりする場面が目立った。

こんな「素人法相」に、検察改革など喫緊の課題を任せるわけにはそもそもいかなかった。

野田首相はなぜ、田中氏を法相に任命したのか。

結局は、9月の党代表選で旧民社党グループの支援を受けた見返りに、グループ会長の田中氏を初入閣させた。つまり、能力や経験より論功行賞、党内融和を優先させた安易な組閣の帰結というほかない。

首相の任命責任は極めて重いと言わざるをえない。

もうひとつ、あいた口がふさがらないのは、民主党の側から田中氏に決算委員会の欠席を求めた経緯があったことだ。

「国会を欠席せよ」と言われて唯々諾々と従う田中氏も田中氏だが、「答弁されるよりまし」と欠席を求めた民主党の姿勢にもあきれるほかはない。

法相の問題も響き、朝日新聞の世論調査では内閣支持率が18%に下がり、初めて2割を切った。野田内閣の政権担当能力そのものに、重大な疑問符がつきつけられている。

毎日新聞 2012年10月24日

法相やっと辞任 緩みきった政権のタガ

目を覆う政権の弛緩(しかん)である。暴力団関係者との交際や外国人からの献金問題が指摘されていた田中慶秋法相がやっと辞任した。

醜聞に加え国会出席も放棄した法相の辞任は当然で、野田佳彦首相はただちに更迭すべきだった。これまでも閣僚人事をしくじった経験に学ばず、同じ失態を繰り返したいいかげんさにあきれる。改造人事から3週間ばかりで内閣は危機的な状況にあることを自覚すべきだ。

「体調不良(による辞任)なので任命責任にはつながらない」。23日午前の記者会見での藤村修官房長官の開き直りにモラルハザードすら感じてしまった。

田中氏の辞任はもちろん「体調不良」で説明できるものではない。交際問題などが批判される中、参院決算委員会を公務を理由に欠席した対応は国会軽視のそしりを免れない。その後入退院し辞表を提出したが、表面化した問題だけで法相として不適格なのは自明である。

にもかかわらず首相や藤村長官の対応は遅れ、傷口を広げた。早急に手を打てなかった首相官邸の危機管理能力の欠如は深刻だ。

首相は昨年の政権発足以来、資質が疑問視される議員を防衛相などの閣僚に起用し、更迭を迫られるパターンを繰り返してきた。野党から「在庫一掃」「(入閣の)思い出づくり」とやゆされる党内事情優先の改造人事を行った任命責任はこれまでにも増して重い。首相としての資質すら問われかねない大失態である。

民主党政権3年余で何度も閣僚人事を重ね田中氏で法相は8人目だった。人材も払底し所管分野の素人を起用せざるを得ないのであれば、与党としての政権担当能力そのものに疑問符がつく。

首相がさきの3党首会談で明示を拒んだ衆院の解散時期をめぐっても内閣は迷走している。前原誠司国家戦略担当相は条件が整えば「解散は年内」との認識を示したが、藤村長官は不快感を示している。

衆院「1票の格差」是正、特例公債法案などの決着にまず努力すべきなのは与党だ。首相の本心が前原氏の言う通りであれば、「環境が整えば来年度予算案は編成しない」と自分で野党に伝えれば済む。3党首の再会談も拒むべきであるまい。

閣僚人事がほころび、重要案件をめぐり発言の統制が取れない状況は政権の末期症状と呼ばれる。このままでは首相が衆院解散を断行する求心力すら失い、政治がいたずらに混乱する事態になりかねない。

「だらだら政権の延命を図るつもりはない」。無為無策の先送りを続けるのか。首相は党首会談での自らの発言をかみしめてもらいたい。

読売新聞 2012年10月20日

田中法相問題 これ以上「醜態」を見たくない

野田首相は手をこまねいている場合ではあるまい。田中法相の更迭に踏み切るべきである。

外国人からの献金や暴力団関係者との過去の交際が発覚した田中法相が19日、体調不良を理由に閣議を欠席し、入院した。官房長官には「辞任しない」意向を伝えたという。

体調不良が事実なら入院はやむを得ないが、法相は実のところ、自らの進退問題から逃げ回っているだけではないのか。

田中氏は、前日も野党から出席要求の出ていた参院決算委員会を「公務」を理由に欠席した。

閣僚が国会の要求に応じて審議に出席するのは、憲法63条に規定された義務である。法相の姿勢に野党側が一斉に反発して、罷免要求を強めているのは当然だ。

臨時国会を控える野田政権にとって、このままでは政権運営の支障になる。民主党の一層のイメージダウンも避けられない。

田中氏を巡っては、法相就任直後、自身が代表を務める民主党支部が、在日台湾人の経営する会社から献金を受けていたことが、明らかになった。

政治資金規正法は、外国人や外国人が主な構成員の団体から寄付を受けることを禁じている。田中氏は今月4日、事実関係を調査して説明すると述べながら、いまだに説明責任を果たしていない。

約30年前、暴力団幹部の宴席に出席し、別の暴力団関係者の仲人を務めたことも判明した。田中氏は記者会見でこれを認め、「大変申し訳ない」と謝罪している。

法務行政のトップとして不適格なのは、もはや明らかだろう。

内閣改造後、わずか半月あまりで、法相の進退問題が浮上したことは、民主党代表選での論功行賞や党内融和色の人事が目立つ布陣の(もろ)さを露呈している。

野田首相は「内閣の機能強化」を改造の目的とした以上、能力や適性を見極める必要があった。

田中氏については、国会での答弁能力すら、疑われている。このような人物を法相に据えた首相の任命責任は、厳しく問われてしかるべきである。

これまで野田内閣では、防衛相を更迭された一川保夫、田中直紀の両氏をはじめ、野党がその資質を問題にした閣僚が少なくなかった。首相の人事管理能力には疑問符をつけざるを得ない。

日本は今、外交・安全保障や財政再建、景気対策など様々な重要案件を抱えている。首相は、田中法相の進退問題をこれ以上、引きずってはならない。

産経新聞 2012年10月24日

田中法相辞任 もはや政権担当資格なし

外国系企業からの献金や暴力団との交際の責任を問われた田中慶秋法相の辞任は当然であり、むしろ遅きに失した。

野田佳彦首相は、かねて不適切な「政治とカネ」の問題が指摘されてきた田中氏を法の番人たる法相に任命し、本人が問題を事実として認めた後も更迭せずに放置してきた。首相の任免権者としての責任は極めて重大である。

田中氏の辞任について首相は、「体調不良のため加療が必要ということで、大変残念だが辞表を受理した」と述べた。田中氏が辞任に追い込まれた真の理由を覆い隠す驚くべき発言だ。

田中氏は暴力団の幹部の仲人を務め、組長の宴席にも出席していた。法相としてばかりか、国会議員としても失格である。田中氏は体調不良を理由に一時入院したが、直ちに辞任すべきだった。

田中氏は就任記者会見で、質問と答えがかみ合わないなど、職務執行能力も疑問視されてきた。首相は法務行政への信頼を失墜させた根本原因が自らにあることを、認識していないのだろうか。

首相は問題発覚後も田中氏をかばい続けたが、その田中氏は18日の参院決算委員会を公務を理由に欠席し、招請されていなかった会合にも急遽(きゅうきょ)、出向いていた。国会答弁で窮地に陥ることを恐れた民主党の判断があったともいう。事実なら言語道断だ。

外国系企業からの献金でも、民主党幹部らから「献金相手に国籍は聞きづらい」との擁護の声が相次いだ。極めて認識が甘い。

同じく辞任に追い込まれた一川保夫、田中直紀両氏の防衛相起用をはじめ、野田内閣は昨秋の発足後、党内融和第一の「内向き人事」で失敗を重ねてきた。

田中氏の閣僚起用についても、9月の民主党代表選で支持を受けたことへの「論功行賞」だとされる。政権基盤の安定を優先して法務行政をないがしろにしたものなら、本末転倒と言うほかない。

田中氏は拉致問題担当相も兼務していた。拉致被害者の帰国から10年という節目の年に、適性が疑われる人物の登用は、野田政権が拉致問題を軽視していることを如実に物語る。拉致被害者家族の落胆の声をどう聞くのか。

民主党に政権を担う資格が欠如していることは、すでに明らかだ。野田首相は一刻も早く国民に信を問うべきである。

毎日新聞 2012年10月20日

法相進退問題 「思い出作り」の重い罪

暴力団関係者との交際や外国人からの献金問題が指摘されていた田中慶秋法相の辞任が避けられない情勢となった。法相は野党の要求に応じず、18日の参院決算委員会を欠席し、19日の閣議も「体調不良」を理由に欠席した。法相は辞任を否定しているというが、もはや遅すぎるといってもいいほどだ。野田佳彦首相は一刻も早く決着を図るべきである。

それにしてもである。なぜ首相は「内閣機能の強化」と今回の内閣改造の目的を説明しながら、法務行政に精通していたわけでもない田中氏を起用したのか。

野党が「在庫一掃」「思い出作り」などと批判したように、民主党内の旧民社党系グループのベテランである田中氏に対する温情や、党内融和を優先した以外に、やはり理由は見当たらない。しかも、それは首相の判断というより、旧民社党系グループなどからの推薦をそのまま受け入れただけではなかったろうか。

案の定というべきだ。就任早々、田中氏自身の政治団体が台湾人の経営する企業から政治献金を受領していたことが発覚。田中氏は早急に詳細を調査すると明言したが、今も結果を公表していない。続いて週刊誌報道で暴力団関係者との過去の交際も明るみに出た。法の厳正な執行をつかさどる立場にある法相として適格性を著しく欠くのは明らかだ。

にもかかわらず、今月1日の改造以来、漫然と時間を過ごしてきた罪も大きい。野田政権が臨時国会の開会を遅らせているのは1日でも衆院解散を先送りしたいという選挙恐怖症とともに、「果たして国会で田中氏が野党の追及をかわせるか」という不安もあったはずだ。結局、臨時国会を召集せざるを得ない時期が近づいて、野党からは田中氏の辞任を求める声が強まる中、「このままでは国会が持たない」とあわてて田中氏の早期辞任論が与党内でも強まったというのが実相だと思われる。

懸案をともかく先送りしようとする今の内閣を象徴していよう。首相の責任は極めて重い。改造後も何も動こうとしない野田内閣に対し、私たちは「このままでは立ち枯れだ」と指摘してきたが、その思いは強まるばかりだ。

もう一点、指摘しておきたい。外国人からの献金に関しては、自民党の石破茂幹事長も同じ問題が発覚した。もちろん、今の法律に照らして厳正に対処すべき話である。しかし、外国人といっても例えば在日韓国・朝鮮人が日本名を名乗るような場合には、国籍が分かりにくいのは確かだ。今後、ネットを通じた献金の拡充も予想される。制度のあり方を点検し直す必要はないか。与野党の冷静な議論を改めて望みたい。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/1208/