「違憲状態」判決 衆参とも急ぎ格差是正を

朝日新聞 2012年10月21日

両院違憲状態 恥を後世にさらすのか

衆参両院あわせて719人の国会議員は、あらためて憲法を読んでもらいたい。

第41条 国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。

ところがいま、その足元が大きくゆらいでいる。言うまでもない。一票の格差の問題だ。

最高裁は昨年3月、衆院の議員定数の配分は、投票価値の平等をもとめた憲法に違反する状態にあると判断した。そして今月17日には、参院についても同様の見解が示された。

司法の判断が確定した以上、すみやかに従い、是正する。それが、憲法が定める権力分立であり、民主主義のいろはだ。だが、「国権の最高機関」はサボタージュを続けてきた。

党首会談が物別れに終わり、衆院の「0増5減案」は成立の機運が遠のいた。このさき合意がなっても、区割り作業などの時間を考えると、次の総選挙は現行定数のまま実施することになるという声もある。

見直しのための期間を確保するため、判決を急いだ裁判所の配慮など、どこ吹く風だ。どの党が選挙を制するにせよ、ゆがめられた民意のうえに立つ「違憲の政権」が指導力を発揮できるのか。政治は崖っぷちに立っている。与野党とも、その認識を共有しなければならない。

参院は事情が違うとの言いわけも通用しない。最高裁はすでに3年前の判決で、「格差を縮めるには選挙制度自体の見直しが必要だ」と述べている。検討の時間は十分あった。

驚くのは、「継続審議になっている4増4減案が通れば、違憲状態は解消される」などと話す有力議員がいることだ。17日の判決はあえてこの案に触れ、「改正されたとしても、最大格差は1対4.75である」「単に4増4減するにとどまる」と指摘している。そこに込められた意味を考えるべきだ。

「人口の多い都市部に議員がかたより、地方の切り捨てになる」という、旧態依然の判決批判にもあきれる。「選出された地元のことしか考えられない」と告白するに等しい。自分は全国民の代表だという自覚をもてない議員は、さっさと胸のバッジをはずしたらどうか。

衆参そろって違憲状態という前代未聞の状況は、国会が目をさます最後の機会だ。国民の意思を正しく反映する議会をつくり、未来に道を開くのか。最後まで党利党略に走り、混迷を抜けだせなかった「選良」として、後世に恥をさらすのか。

議員一人ひとりの見識と覚悟が問われている。

毎日新聞 2012年10月18日

参院選「違憲状態」 抜本改革を突きつけた

参院選の「1票の格差」が限度を超えているとの厳しい警告だ。

最大5.00倍だった10年7月参院選について有権者らが選挙無効を求めた訴訟で、最高裁大法廷は著しい不平等状態の存在を認定し、「違憲状態にある」と判断した。

最高裁がこれまで参院選の1票の格差について、憲法で保障された「法の下の平等」に反し違憲状態にあると判断したのは、最大格差が6.59倍だった92年の選挙だけだ。

その後は5倍前後の格差が常態化していたが、国会の裁量権を広く認め違憲性に言及してこなかった。

07年参院選の判決で、最高裁は現行選挙制度の見直しの必要性を国会に求めたが、10年の参院選は是正なしに行われた。最高裁は、これ以上国会の不作為に目をつぶることができないと判断したのだろう。

最高裁が参院選の1票の格差について比較的寛容だったのは、選挙区選挙の区割りが都道府県単位となっており、地域代表的な性格があるとみなしてきたこともある。

だが、参院も衆院と同様、国民の代表だ。投票価値の平等がいつまでも軽んじられていいはずがない。

与野党は、参院の選挙制度改革の議論を続けてきた。民主、自民、公明3党が今年、全体の定数を変えずに格差を改善する「4増4減」案で合意。通常国会では参院で可決したが、衆院の採決はしなかった。

5倍近い格差が依然として残るこの案は一時しのぎに過ぎず、抜本解決にほど遠いのは明らかだ。この日の最高裁判決も、現行の仕組み自体を改める本格的な選挙制度改革を再び国会に促した。

次の選挙は来年だ。与野党で駆け引きを繰り返す時間はない。すぐにも協議をスタートさせるべきだ。

「1票の格差」に対する最高裁のこれまでの姿勢も問われる。

07年の参院選に関しては「大きな不平等が存在している」としながら、違憲状態と判断しなかった。立法裁量権に配慮しすぎたきらいがあったのではないか。衆院選についても言えるが、そうした姿勢が結果的に国会の怠慢を許してきた側面も否定できない。

だが、風向きは変わりつつある。最高裁は昨年、衆院選についても格差2・30倍で違憲状態と判断した。両院とも違憲状態という異常事態だ。違憲状態が相当期間続けば、次は違憲判断が出てもおかしくない。今回の判決で「違憲」の立場を取った3人のうち2人の裁判官は、13年の参院選が抜本改革なしで行われれば、選挙無効の判断もあり得るとした。

最高裁は、今後の国会の動きをチェックし、「憲法の番人」として厳格な判断を示すべきだ。

読売新聞 2012年10月18日

参院1票の格差 抜本改革へ最高裁の強い警告

「1票の格差」の抜本的な是正に取り組まない国会に対する最高裁の強い警告である。

1票の格差が最大5・00倍となった2010年の参院選について、最高裁大法廷は「違憲状態にあった」との判決を言い渡した。

15人の裁判官のうち12人の意見で、残る3人は、より厳しい「違憲」判断を示した。

最高裁は、都市部への人口集中が進む中で、47都道府県を単位とする選挙区制度のままでは、「投票価値の平等という要求に応えるのは、もはや著しく困難」と改めて指摘した。

現行制度では、人口が最も少ない鳥取県にも定数2を割り振らざるを得ないからだ。

民主、自民両党が先の通常国会に提出した公職選挙法改正案は、この制度に手を付けず、選挙区定数を「4増4減」するものだ。

判決は、一部の選挙区の定数を増減させるだけでは解決にならない、との見解も示した。仮に「4増4減」案が成立しても、違憲状態は解消されないとの疑義が示されたとも言える。

こんな弥縫(びほう)策だけで来夏の参院選を迎えれば、選挙後、定数訴訟が相次いで起こされるのは間違いないだろう。裁判所が違憲と判断し、一部選挙を無効とする判決を出す可能性すら排除できない。

与野党は、「4増4減」よりも踏み込んだ定数是正案をまずは検討すべきではないか。

最高裁が求める抜本的な制度改革も急ぐべきである。

10年からの与野党の参院選制度改革論議では、選挙区を、都道府県単位からブロック制に改める案なども()(じょう)に載せた。格差を縮小しやすい利点があるからだ。

旗振り役の西岡武夫前参院議長の死去で立ち消えになったが、検討し直すべきではないか。

国会の対応はこれまで、常に後手に回ってきた。これでは、国会議員には当事者能力がない、ということになり、国民の政治不信を高めるだけである。

最高裁は09年衆院選でも、「違憲状態」との判断を示している。両院ともに、法の下の平等を定めた憲法に違反した状態にあると司法が断じる異例の事態だ。

参院選の制度は比例代表と選挙区の2本立てで、衆院選と類似している。衆参の役割分担も視野に入れた論議が不可欠である。

与野党は、次回の選挙に間に合うよう、早急に臨時国会を開き、違憲状態から脱するための措置を講じなければならない。

産経新聞 2012年10月18日

「違憲状態」判決 衆参とも急ぎ格差是正を

最大5倍の「一票の格差」が生じた平成22年7月の参院選について、最高裁大法廷が「著しい不平等状態だった」として「違憲状態」の判断を示した。

最高裁は21年8月の衆院選(格差2・30倍)についても、昨年3月、「違憲状態」と判断している。法の下の平等にかかわる投票価値の是正への努力が足りない、と衆参両院ともに警鐘を乱打された事態は深刻であり、その是正が急務だ。

臨時国会で緊急避難措置として参院の「4増4減」、衆院の「0増5減」の定数是正法案を成立させるとともに、抜本改革への取り組みを開始すべきだ。

「4増4減」案をめぐっては、先の通常国会で民主党が公職選挙法改正案を提出し、会期末直前に参院で可決されたが、衆院で継続審議となった。

判決が格差5倍の参院選に関して、「国会の裁量権の限界を超えるとはいえない」と「違憲」には至らないとした理由には、「4増4減」案の付則に選挙制度の抜本的な見直しの検討が盛り込まれたこともある。

神奈川、大阪で各2増、福島、岐阜で各2減の「4増4減」では格差は4・75倍にしか縮まらず、是正効果は薄いとの批判もある。だが、参院の改選議員の任期は来年7月までである。直ちに抜本的な制度改革を行うのは困難だ。

今回の判決は、参院の選挙区を都道府県単位としている現行制度の見直しにも踏み込んだ。与野党間で抜本案をまとめられず、制度改革に着手しないことへの苛立(いらだ)ちともいえる。

与野党の調整でも、人口の少ない選挙区どうしの合区、ブロック制の導入などが浮上したが、合意には至らなかった。首相の諮問機関として、現行の小選挙区比例代表並立制導入を答申した選挙制度審議会が存在する。いまは休眠状態にあるが、抜本改革について諮問することも必要だ。

衆院の「0増5減」案も、昨年の最高裁判決を受けて都道府県にまず1議席を配分する区割りルールを廃止するもので、当面の格差是正策としては妥当といえる。

重要なのは、選挙制度の抜本改革で二院制のあり方など憲法上の問題を含めて議論することだ。両院の制度を別個に論じ小手先の定数是正にとどまるなら、有権者の政治不信も決定的になる。

朝日新聞 2012年10月18日

定数判決 参院のあり方論ずる時

一票の格差が最大5倍あった2年前の参院選について、最高裁が「法の下の平等に反する状態だった」と判断した。

以前から是正を求められながら、手をこまぬいてきた国会の責任は重い。同じく違憲状態と指摘されて久しい衆院とともに改革を急がねばならない。

判決は「都道府県を単位として定数を配分する現行の方式をしかるべき形で改めるなど」と具体的なやり方まで挙げ、制度を見直す必要を指摘した。

権力分立の観点から、立法のありようについて司法は慎重なもの言いをしてきた歴史がある。それだけに、憲法の番人たちのいら立ちが伝わってくる。

半数ずつ改選する参院では、各選挙区に最低2議席を割りふる必要があり、一票の格差を縮めるのは簡単でない。このため最高裁も長い間、寛容な姿勢をとってきた。判断を正当化したのが、参院選挙区の議員には都道府県の代表のような性格があるという考えだった。

だからといって、民主政治の基盤である投票権の不平等に目をつぶるのは、本末転倒といわざるを得ない。

最高裁も少しずつスタンスを変え、3年前の判決で初めて、選挙の仕組み自体の見直しに言及して注目を集めた。

国会はどう応じたか。

複数の県で選挙区をつくる合区案や、全国をブロックに分けて大選挙区制とする案も検討はされた。しかし大きな変化をきらう民主、自民両党などは、一時しのぎの4増4減案で合意。先の国会で参院を通過し、衆院で継続審議となっている。

現定数のまま来年の参院選を迎えるよりは、ましかもしれない。だが、憲法上の要請よりも自分たちの都合を重んじるこうしたふるまいが、政治不信を深めてきた一因ではないか。

朝日新聞は、政党が身を律せないなら、有識者による首相の諮問機関を設けて改革案を詰めよと唱えてきた。判決を受け、その感はいよいよ深い。

そこでは、参院の役割は何かという根本から議論を重ねることが必要だ。ねじれ国会の下、首相の解散権が及ばない参院が政権の死命を決するような現状は、明らかにおかしい。

憲法の規定を踏まえつつ、衆参両院の関係をどう位置づけ、参院にはいかなる権能を担わせるか。そこをはっきりさせることが、どんな選挙の仕組みをとるべきか、一票の格差はどこまで許容し得るか、という問いへの答えにつながる。

司法の警告を重く受けとめ、速やかに議論を始めるべきだ。

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