3党幹事長会談 政治空白の拡大を止めよ

朝日新聞 2012年10月25日

臨時国会 自民党は度量を見せよ

与野党激突ムードのなか、臨時国会が召集される。

参院の自民党は野田首相の所信表明演説にも、法案の審議にも、応じない構えだ。先の通常国会で首相に対する問責決議が可決されたためという。

こんな子どものけんかのような足の引っ張り合いを、いつまで続けるのか。ほとほとうんざりする。

自民党の安倍総裁には、よくよく考えてもらいたい。

審議に応じ、政治を前に進める。かつて長く政権を担った責任政党の度量を、いまこそ見せる時ではないか。

「近いうち」の衆院解散の時期を明らかにしない首相へのいらだちは分からなくはない。野党の不信を招いた首相の責任はたしかに大きい。

だが、解散権を握っているのはあくまで首相である。野党が審議を拒めば、赤字国債発行法案や衆院の「一票の格差」を正す法案の成立が遅れ、かえって解散・総選挙を先送りする口実を与えることになる。

しかも審議拒否が長引けば長引くほど、予算執行の抑制は続き、国民に深刻な影響を及ぼすことになる。いずれ世論の批判が自民党に向かうことは目に見えている。

民主党はもう、単独で政治を前に進める力を失っている。

言い換えれば、自民党が主導権をもって政治を動かすことができるということだ。そんなチャンスに、国民のくらしを人質にとって審議拒否をする愚は犯すべきではあるまい。

臨時国会で自民党がなすべきことは明らかだ。

首相が求める赤字国債発行法案と、衆院の「0増5減」法案を成立させる。社会保障をめぐる国民会議の人選を急ぐ。

赤字国債発行法案を予算案と一体で成立させるルールを作っておくことも、無用の政治の混乱を防ぐうえで意義がある。

ほかにも国会同意人事で衆院の優越を定めることなど、国会を動かすルールを与野党で合意しておきたい。いずれ自民党が政権に復帰した場合、役立つことは間違いない。

そうして早期解散ができる環境を整えたのに、首相が解散をためらうようなら、その時は大いに批判すればいい。自民、公明との3党首会談で「だらだらと政権の延命を図るつもりはない」と語った首相の言葉が食言ということになるからだ。

野田首相にも言っておきたい。逃げてばかりいてはだめだ。自公両党が求める再度の党首会談に応じ、事態打開に積極的に動くべきだ。

毎日新聞 2012年10月20日

党首会談決裂 これでは政治が動かぬ

野田佳彦首相と自民党の安倍晋三総裁、公明党の山口那津男代表による党首会談が行われた。首相は自身が「近いうちに」と約束している衆院解散について自公両党が求める年内解散の確約など時期の明示を拒み、会談は決裂した。

臨時国会は29日に召集される予定だが、このままでは冒頭から与野党激突は不可避な状況だ。首相は早期に民意を問う覚悟をより明確に示すべきだ。衆院「1票の格差」の是正や特例公債法案など、喫緊の課題の決着を主導しなければならない。

安倍総裁が誕生し初の正式な党首会談で政治の歯車は回らなかった。首相は「だらだら延命を図るつもりはない」と述べたものの、解散時期はほとんど踏み込まなかった。これでは輿石東民主党幹事長の「具体的な提案」とのふれこみが偽りだったと言われても仕方あるまい。

首相が8月に「近いうち」の解散を表明してすでに2カ月以上たつ。野田内閣の支持率は低空飛行を続け党内にはなお、年明け以降に衆院解散を先送りすべきだとする声が根強い。実態は首相も身動きが取れないのかもしれない。

だが、このまま国会に突入して果たして成算があるのだろうか。民主党は議員の離党に歯止めがかからず、今や衆院の単独過半数維持も危ぶまれている。

臨時国会で直面するのは放置できないテーマばかりである。最高裁が衆院「1票の格差」に違憲状態の判断を下してから1年半以上も国会は事態を放置してきた。今度は参院も違憲状態のレッドカードを突きつけられている。

赤字国債を発行するため必要な特例公債法案の成立も待ったなしだ。首相は予備費を活用した経済対策の策定を指示したが、付け焼き刃的な対策にどれほど効果があるかは疑問だ。予算執行に支障を来さないよう、公債法案を処理する方がよほど先決のはずだ。

民自公3党合意に盛られた社会保障制度改革国民会議の発足も現状ではままならない。いたずらな引き延ばしは政治の停滞を加速させることを悟るべきだろう。

一方で安倍総裁も年内解散に固執するあまり、最初から審議拒否で臨むような対応を取るべきでない。

むしろ懸案処理に協力することで首相を解散に追い込むのが早道ではないか。首相が提案した予算案と関連法案の一体処理ルールの確立などは検討に値しよう。

1年以内に必ず衆院選があるにもかかわらず解散時期の攻防ばかりに関心を集中させることは不毛である。首相と安倍氏は臨時国会を混乱に陥れてはならない。

読売新聞 2012年10月24日

臨時国会召集へ 年内解散へ「懸案」を処理せよ

党首会談が物別れに終わったままで臨時国会を開いても、空転するだけではないのか。

野田首相は国会で懸案を処理できるよう自民、公明両党党首との協議に再度臨むべきである。

民主党は与野党国会対策委員長会談で29日に召集する予定の臨時国会について、会期を11月末までの33日間とする考えを伝えた。

臨時国会の最大の目的は、赤字国債発行を認める特例公債法案の成立と、衆院選「1票の格差」の是正、社会保障制度改革国民会議の設置という三つの懸案を処理することである。

衆参ねじれ国会の下、与野党が協力しなければ、1か月余の会期内では実現できないだろう。

まず首相は、野党の要求する年内の衆院解散・総選挙に真剣に向き合わねばならない。

首相は、先の自公両党との党首会談で「だらだら政権の延命を図るつもりはない」と明言した。それが本意ならば、改めて3党首会談を開いて、速やかに衆院解散に踏み切ることを確約し、自公両党から協力を取り付けるべきだ。

首相の言う三つの懸案について前原国家戦略相は「解散の条件」と述べ、これを満たせば年内解散はありうるとの考えを示した。民主党幹部からは否定されたが、もっともな考え方ではないか。

野党側にも懸案の処理に応じる責任がある。

参院の野党は、通常国会での首相問責決議の可決を理由に、臨時国会では政府提出法案の審議にも、首相の所信表明演説にも応じない構えを見せている。

だが、審議拒否では何も得られない。政治不信を高めるだけとなることを肝に銘じるべきだ。

民主党も、自公両党も、参院の議席は半数に届かない。民自公3党の信頼関係を損ねれば、衆院選後も政治は前には進まない。

一方、外国人からの献金問題や暴力団関係者との過去の交際が発覚した田中法相が、ようやく辞任した。田中氏は「公務」や「体調不良」を理由に国会の委員会も欠席した。法務行政の責任者として不適格であるのは明らかだ。

ところが、首相官邸は当初、問題を深刻に捉えず、事態収拾で後手に回った。体調不良を口実に辞任させたのはおかしい。

首相が「任命した閣僚が職務を全うできなかった」として、自らの任命責任を認めたのは当然だ。首相はこれまでも閣僚人事でつまずいてきた。野党の厳しい責任追及を覚悟しなければなるまい。

産経新聞 2012年10月23日

臨時国会召集 3党首の再会談求めたい

臨時国会が29日から会期33日間で召集される運びとなった。だが、民主、自民、公明3党の党首会談が決裂したままでは成果は望めない。

赤字国債発行に必要な特例公債法案成立をめぐって、衆院の「年内解散」の明示を求める野党側と、解散の環境整備として法案成立が先決だとする与党側とのつばぜり合いが繰り広げられるだけだ。与野党とも打開の道を探るべきである。

注目したいのは、自民党の石破茂幹事長が召集前の党首再会談を求めていることだ。

野田佳彦首相にとっても再会談で与野党協力の枠組みを構築しなければ内外の懸案は解決できず、政権の行き詰まり状況は打開できない。当然、解散について首相の誠意ある回答が前提である。

3党党首会談の決裂について、前原誠司国家戦略担当相は21日のフジテレビの番組で、「私の感覚では、年明けに解散したら『近いうち』じゃない。首相は約束を絶対に守る人だ」と述べた。

首相は、本予算と一体で特例公債法案の成立を図るルール作りを行うことに加え、衆院の「0増5減」の格差是正、社会保障制度改革国民会議の設置の3つを解散前の課題に挙げている。

前原氏は「首相は3つが終わったら信は必ず問うと言っている。おのずと落としどころは決まってくる」とも語った。

だが、民主党の輿石東幹事長や藤村修官房長官らは「解散はあくまで首相の判断」と前原発言を打ち消した。法案成立を図る手立てがあるならともかく、事態を放置しているだけではないか。

政府側は「解散の日を特定しなければ何もしないなら、やる必要はない」(岡田克也副総理)と再会談に慎重だが、石破氏は「何月何日とは言っていない」と指摘する。「懸案を処理した後」「来年度予算編成が本格化する前」など歩み寄る余地はあるだろう。

自民党の安倍晋三総裁は、首相が8月の党首会談で「来年度予算編成はしないと約束した」との引き継ぎを、谷垣禎一前総裁から受けたと主張している。首相は「そういう認識はない」と反論するが、公明党の山口那津男代表も首相が年内解散・総選挙と受け取れる発言をしたとしている。

「私を信じて」という訴えだけでは説得力に乏しいことを、首相は認識すべきだろう。

朝日新聞 2012年10月20日

党首会談決裂 首相の責任感が見えぬ

野田首相は、政権の延命がそんなに大事なのか。さらなる離党者が出ることが、それほど怖いのか。

社会保障と税の一体改革をめぐって、首相が「近いうちに国民に信を問う」と自民、公明両党に約束してから2カ月あまり。ようやく、民自公3党の党首会談が実現した。

だが、会談の内容は寒々しいものだった。

首相は、赤字国債発行法案や衆院の「一票の格差」是正などへの協力を要請した。一方で、自公両党が求める「近いうち」の衆院解散の時期については具体的な答えを避けた。

要求するばかりで、相手の求めにはゼロ回答では、話し合いは成り立たない。会談が物別れに終わったのは無理もない。

首相には、政治を前に進める責任感がないのか。そんな疑いを禁じ得ない。

一体改革関連法が成立した後の、野田政権の惨状は目を覆うばかりだ。

たとえば、衆院に続き参院でも最高裁に違憲状態と断じられた、一票の格差の問題だ。国会の正統性そのものが否定されたに等しい異常事態なのに、政権の危機感はあまりに乏しい。

とりあえず衆院の違憲状態を解消するための「0増5減」法案を自民党が提案しているのに、あれこれ理由をつけて審議を拒んできたのは、ほかならぬ民主党ではないか。

赤字国債発行法案が先の国会で廃案になり、5兆円の予算の執行が抑制されている。これもまた非常事態である。

入閣したばかりの田中慶秋法相が早くも辞任する見通しだ。外国人企業からの献金や暴力団関係者との交際も問題だが、理由にもならない理由で国会審議を拒否するとは前代未聞、驚くばかりの無責任さだ。

こんな閣僚をなぜ起用したのか。能力や資質より離党者防止を優先した「内向き」人事のツケが早くも回った形だ。首相の責任は極めて大きい。

いまの野田政権は、政権の体をなしていない。そう批判されても仕方あるまい。

もはや民主党だけで政治を動かす力があるとは思えない。ならば、首相が最優先すべきことは明らかである。

29日に召集予定の臨時国会に向けて、3党の関係を修復する。そして、自公両党をはじめ野党の協力を得て、赤字国債発行法案や一票の格差是正など懸案の処理を急ぐ。

そのために必要なら、自公両党が求める早期の解散も逃げてはならない。

読売新聞 2012年10月20日

民自公党首会談 首相が守り一辺倒では困る

ようやく開催された民主、自民、公明3党の党首会談は、あっさりと物別れに終わった。山積する課題を解決するため、3党は、もっと積極的に妥協点を探るべきだ。

野田首相が自民党の安倍総裁、公明党の山口代表と会談し、赤字国債発行を可能にする特例公債法案の成立などへ協力要請した。

首相は焦点の衆院解散・総選挙について、8月の3党首会談での「近いうち」との自らの発言を「重たい確認事項」と述べるにとどめた。安倍氏らは政権への協力の前提として解散時期の明示を求めたが、首相は応じなかった。

首相が明言した「近いうち」の解散は「国民との約束」だとする安倍氏らの主張は理解できる。

ただ、衆院解散の確約なしでは法案成立に協力しないとか、参院の首相問責決議を理由に国会審議を拒否する、といった姿勢では、国民の理解は得られまい。

臨時国会は29日に召集される方向だ。むしろ論戦を通じて、震災復興予算の「転用」など、政府の問題点を追及する方が、自公両党にとっても得策のはずである。

より問題なのが、野田首相側の対応だ。民主、自民両党の党首選から党首会談の開催まで3週間以上が無為に経過した。苦戦が予想される衆院選の先送りを優先し、“時間稼ぎ”を続けた結果だ。

11月中の緊急経済対策の策定も中途半端で、解散先送り策の一環だろう。景気減速に本格的に歯止めをかけるのなら、予備費の活用でなく、臨時国会の会期を十分確保し、実効性のある補正予算を編成・成立させるのが筋だ。

野田首相は会談で、衆院解散に向けた「環境整備」として、特例公債法案と予算案の一体処理のルール作り、衆院選の「1票の格差」是正、社会保障制度改革国民会議の設置の3点を挙げた。

特例公債法案に関するルール作りは、衆参ねじれ国会の下、赤字国債が発行できない事態を回避する建設的な提案と評価できる。

だが、「1票の格差」是正では、定数削減問題も含めて幹事長協議に再び委ねるという提案にとどまった。これで野党と合意できるのか。自民党などの主張する小選挙区の「0増5減」の先行処理に同意すべきである。

安倍氏は会談後、衆院解散の時期に関する「新提案」がなかったことについて「失望した」と語った。首相も、守りの姿勢一辺倒では今の局面を打開できまい。

「解散先送りが第一」では、政府・与党の責任を果たせない。

産経新聞 2012年10月20日

3党党首会談 首相の先送りは無責任だ

民主、自民、公明の3党党首会談で、野田佳彦首相は衆院解散を「近いうち」と国民に約束したことについて「言葉の重みと責任は自覚している」と述べた。

だが、「それを判断するには環境整備をしなければならない」として特例公債法案成立などの条件を挙げ、解散時期を明示的には伝えなかった。

民主党の輿石東幹事長が前日に「首相の新提案」の見通しを示したことからも発言が注目されたが、進展といえるものは見当たらない。自公両党は「論評に値しない」と反発した。

「決める政治」を実現するためには、首相が年内解散を明示して両党の協力を得なければならなかった。そこに踏み込めなかった首相の対応は無責任そのものだ。

与野党が突っ張りあいを続けていては、内外の懸案を解決できぬまま国政への信用を失墜させるだけだ。その事態を避ける道を3党はなお模索してほしい。

特例公債法案が成立していないため、予算執行を一部抑制する異常事態に陥っているにもかかわらず、政府・与党には打開に向けた強い姿勢がみられなかった。ここにきて首相が特例公債法案成立を条件の一つに挙げるのは、「妨害しているのは野党だ」と責任転嫁を図っているように映る。

首相は社会保障制度改革の国民会議設置や、衆参両院の「一票の格差」を是正する関連法案の成立にも協力を求めた。だが、約束を守らないのに、自公両党が協力できると思っているのか。

首相は会談後、「だらだらと延命しない」と記者団に語った。その言葉通りの実行が求められている。問題は、外国系企業献金や暴力団との交際が発覚した田中慶秋法相の進退だ。

田中氏は18日の参院決算委員会への出席を「公務」を理由に拒んだ。暴力団との交際を追及されるのを避けたとみられ、19日には体調不良を理由に入院した。もはや閣僚を続けられないのは明らかなのに首相は放置している。

党首会談が決裂したのに、首相は臨時国会を召集する方針を表明した。安倍晋三自民党総裁は「審議に入る状況を作る責任は政府にある」と主張し、審議拒否も辞さない構えを示している。

このままでは、国民の利益や国益が損なわれることを野田首相は認識しなければならない。

読売新聞 2012年10月16日

3党幹事長会談 いつまで条件闘争をするのか

臨時国会を巡る民主、自民、公明3党の話し合いが難航している。

一体いつまで党利党略の駆け引きに明け暮れるつもりなのか。

民主党の輿石幹事長は自民党・石破、公明党・井上の両幹事長との会談で、臨時国会を月末にも開く考えを示した。18日に再度会談した上で、週内にも3党首会談を行うという。

スローテンポにはあきれるばかりだ。特に、これまで臨時国会の召集を先送りしてきた民主党の責任は重い。野田首相は、臨時国会で、改造内閣の所信を表明しなければならない。

尖閣諸島を巡る日中対立やエネルギー問題など課題は山積している。与野党議員は国会論戦もせず、職責を果たしていない。

田中法相の資質をただす必要もある。外国人献金問題を抱える法相には、暴力団との過去の交際も発覚した。法相として不適切であるのは、間違いない。

民自公3党間で直ちに解決すべき課題の一つは、衆院選の「1票の格差」是正である。

輿石氏は14日のNHK番組で、小選挙区の「0増5減」先行実施に応じる可能性を示唆した。だが、記者団には「全野党の一致」を条件とする意向も示している。

民主党が「0増5減」と定数削減の同時実施に固執してきたことで問題がこじれ、是正が遅れている。ここに及んで民主党が新たな条件をつけるようでは、格差是正に本気で取り組む考えがあるのか、疑わざるを得ない。

赤字国債発行を認める特例公債法案の成立も喫緊の課題だ。

自公両党は会談で、年内の衆院解散・総選挙を首相が明示するよう求めた。石破氏は、首相が「あまりに不誠実なら党首会談が開かれることはない」とも述べた。

このまま膠着(こうちゃく)状態が続けば、法案の成立がずれ込み、今年度予算の財源が底をつく。民自公3党は、国民生活に悪影響を及ぼすことのないよう妥協を急ぐべきだ。

3党がすでに合意している社会保障制度改革国民会議の設置について、自民党は衆院選後への先送りを唱えている。この点でも折り合いをつけてもらいたい。

参院は先の通常国会で首相問責決議を可決した。これを理由に国会を空転させるのなら、臨時国会を開く意味がない。既成政党への国民の不信感が高まるだけだ。

与野党は、衆参ねじれ国会の新たなルールとして、問責決議を次の国会にまで引きずらないことで合意すべきである。

産経新聞 2012年10月19日

党首会談 首相は年内解散を伝えよ 残る課題は集団的自衛権だ

野田佳彦首相がその真価を問われる決定的な時を迎えた。

首相が19日の自民、公明両党との党首会談の席上、語るべきは「近いうちに信を問う」と8月に述べた約束の具現化だ。すなわち、年内解散の意向を明示的に伝えることである。

このことを表明できない限り、赤字国債発行に必要な特例公債法案の成立などに欠かせない自公両党の協力は取り付けられない。

首相が忘れてならないのは、政治生命を懸けて取り組んだ消費税関連法の成立が、3党協力の枠組みで図られ、「近いうち」は国民との約束になったことだ。

≪3党で「決める政治」を≫

今月上旬の産経新聞社とFNNの世論調査でも、「近いうち」の時期について「年内に限られるべきだと思う」との回答が68%に上っている。

この国民との約束を果たさない限り、政治空白は続き、行き詰まった日本は没落の一途をたどることになる。覚悟と勇気をもって決断してほしい。

懸念するのは、首相が増税法成立後に新たな政治課題を示していないことだ。燃え尽きたわけではないだろう。

提案したいのは、首相の持論でもある集団的自衛権の行使容認という、自民党政権もなし得なかったテーマに挑むことだ。

尖閣諸島への中国の攻勢を考えれば、日米共同防衛の重要性はより増している。同盟深化に資する行使容認こそ、「決める」政治のテーマにふさわしい。

「権利は保有しているが行使できない」という集団的自衛権をめぐる政府の憲法解釈について、首相は「これを踏み越えることができるかどうかが一番の肝」と自著「民主の敵」で主張した。

政府の国家戦略会議の「フロンティア分科会」も今年7月に行使容認の必要性を提起する報告書を出した。首相は「提言も踏まえながら政府内での議論も詰めていきたい」と答弁したこともある。

自民党の安倍晋三総裁も行使容認を唱え、米国を狙った弾道ミサイルの迎撃など行使すべき具体例も挙げている。臨時国会が開かれ、首相と安倍氏が活発な議論を行うことを期待したい。

集団的自衛権の行使容認という新たな課題を掲げ、憲法解釈の変更に踏み込んでその妥当性を総選挙で問うことができれば、極めて大きな意味がある。

景気後退の懸念が高まる中で、野田首相は経済対策を11月中に取りまとめるよう17日に関係閣僚に指示した。

経済対策を通じて景気の下振れを防ぐのは当然だが、その手法には首をかしげざるを得ない。

今年度予算の予備費と剰余金を活用し、補正予算は編成しないことを前提としているためだ。これでどれだけの景気浮揚効果が見込めるのか。

≪景気回復は補正予算で≫

景気をきちんと支えるには、まず今年度予算の執行を着実に進める必要があり、特例公債法案の早期成立が不可欠だ。党首会談では、経済対策を見据えた協力関係を構築するしか方策がない。

来秋には消費税増税の是非を景気動向を踏まえて判断しなければならない。そのためには本格的な補正予算を編成して景気が落ち込む前に果断な手を打つべきだ。

「一票の格差」をめぐり、平成22年の参院選を「違憲状態」とした17日の最高裁判決によって、衆院の「0増5減」と参院の「4増4減」の格差是正を実現する緊急性はより高まっている。3党合意を再構築するしかあるまい。

社会保障・税一体改革の3党合意に基づき、民主、公明両党は社会保障制度改革国民会議の早期設置を主張している。

これに対し、総選挙後の設置を唱えてきた自民党は、民主、公明両党に同調するかどうか対応を決めなければならない。

18日の幹事長会談では、自公両党が「年内解散」を首相が明言するよう求めたのに対し、民主党の輿石東幹事長は「党首会談で首相からもう少し具体的な提案があるのではないか」と語った。

自公両党には、解散時期が確約されないなら党首会談を拒否するという選択もあったが、首相の決断を信頼して会談に応じることにしたという。

日本を救うか、沈没させるか。すべては、野田首相の決断にかかっている。

産経新聞 2012年10月16日

3党幹事長会談 政治空白の拡大を止めよ

民主党の輿石東幹事長が自民、公明両党との幹事長会談で「今週中にも党首会談をお願いし、今月末にも臨時国会を開催したい」と語った。

野田佳彦首相が内閣機能の強化を掲げて10人の閣僚を入れ替える改造を行ってから既に2週間が経過したが、ようやく国会が動き出しそうな状況になってきた。

何も決めようとしない政治への国民の批判が高まってきただけに何らかの対応をせざるを得なかったといえるが、あまりに鈍く、受け身の姿勢だ。政権の体をなしていない。

首相自らが体制刷新を図ったことに伴い、新たな国のかじ取りをどう考えているのか。臨時国会で所信を示さなくてはならない。新閣僚も担当職務にどう取り組み、内外の懸案をどう解決するか語るべきだ。

輿石氏はこれまで早期召集や党首会談開催に慎重な発言を繰り返していたが、14日のNHK番組などでは「離党者を恐れて衆院解散を先送りしている」との見方を否定した。また、衆院の「0増5減」の格差是正をめぐり、定数削減とのセット論を強く主張してきたものの、格差是正を先行させる自民党案について「考慮する余地がある」とも語った。

懸案を解決できない状況を放置したままでは、政権与党への批判は拡大する一方だ。自民党との協調を模索するため、柔軟姿勢に転じたとも受け取れる。

だが、求められているのは言行一致だ。首相が「近いうち」の衆院解散を約束したことは、首相が政治生命を懸けた消費税増税法の成立と結びついており、3党合意であると同時に国民との約束となっているといえる。

民主党が臨時国会の召集を遅らせようとするのは、さらなる離党者が出ることに加え、外国系企業献金や暴力団との交際が発覚した田中慶秋法相らが野党から厳しく追及され、辞任に追い込まれることへの警戒感だ。だが、こうした先送りの姿勢は政治空白を拡大するものでしかない。

輿石氏は次の会談では首相の意向を踏まえて協議すると両党に語った。自民党の石破茂幹事長は「あまりに不誠実なものなら、党首会談が開かれても実りはない」と会談拒否も辞さない構えだ。成果を出せる党首会談の実現へ首相が腹をくくるしかない。

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