ミャンマー支援 民主化と経済再建に弾みを

読売新聞 2012年10月13日

ミャンマー支援 民主化と経済再建に弾みを

民主化改革を進めるミャンマーに対し、国際社会が支援体制を整えたことを歓迎したい。改革と経済再建に弾みをつける必要がある。

先進国と世界銀行、アジア開発銀行によるミャンマー支援国会合が東京で開かれた。

ミャンマーが抱える延滞債務を来年1月に免除し、国際社会が20年以上も中止してきた金融支援を再開する方針で合意した。

約5000億円という最大の貸し手である日本は、大半の債権を放棄したうえ、円借款を来年早い時期に26年ぶりに再開する。

世銀とアジア開銀が新規融資を行えるよう、世銀などに対するミャンマーの借金を日本がいったん肩代わりする協力も決めた。

ミャンマーとの関係修復に積極的な日本が主導し、国際的な支援策をまとめた意義は大きい。

ミャンマーは軍事政権下の人権弾圧などを理由に、先進国側から長年にわたり経済制裁を受けてきた。そのため、東南アジア諸国連合(ASEAN)の中で取り残されてきた最貧国である。

しかし、2010年に民主化運動指導者のアウン・サン・スー・チー氏が軟禁を解かれ、昨春には民政移管を果たし、テイン・セイン政権が民主化を進めている。

こうした大きな変化を国際社会が評価して、ようやく支援再開にこぎつけた。

ミャンマーは人口が6000万人を超え、天然資源なども豊富だ。「アジア最後のフロンティア」として急成長が期待される。

アジア開銀の黒田東彦総裁も、「国内改革が進めば、今後5~10年で他のASEAN諸国に追いつける」と予想している。

先進国などの金融支援と投資拡大をテコに、経済発展を加速させることが肝要だ。

課題は、電力、鉄道などのインフラや、医療、教育などの整備が遅れていることである。日本は円借款供与によって、インフラ輸出の拡大も目指したい。

すでに大手商社などがミャンマーでの事業に乗り出している。経済特区の整備でも、政府と企業が全面的に協力する方向だ。

日系企業にとって、ミャンマーは、アジアの新たな生産拠点となる可能性が高い。官民連携を一層強化すべきである。

ミャンマーは中国と近接し、貿易量は多いが、中国の影響力に対する警戒感もうかがえる。

日本の積極的なミャンマー支援は、地域での存在感を強めようとする中国への牽制(けんせい)にもなる。

産経新聞 2012年10月14日

ミャンマー支援 中国リスク回避の拠点に

民主化に取り組むミャンマーを支援するため東京で開かれた国際会合で、日本政府が主要国の先頭に立ち、新たな資金提供方針を表明した。

中国は尖閣諸島を国有化した日本への反発から会合に参加しなかった。相変わらずの嫌がらせだ。日本は粛々と民主化を後押しして、異様な国との違いを世界に示した。

日本はミャンマーに約5千億円の資金を提供してきた最大の債権国だ。城島光力財務相は会合で、来年1月に一部の債権放棄などを実行し、両国が合意している円借款の再開についても「来年のできるだけ早い時期に行う」と明言した。世界銀行とアジア開発銀行(ADB)も同調した。

四半世紀に及んだ軍政の独裁支配で米欧の経済制裁が続いたミャンマーには、主要国や国際金融機関による支援の再開が不可欠だ。つなぎ融資を盛り込んだ日本の提案で、新たな資金支援が可能となる道筋がついた。

ミャンマーの民主化も、一定の進展を見せている。

昨年3月の「民政移管」で就任したテイン・セイン大統領は民主化運動指導者アウン・サン・スー・チー氏との対話を図り、政治犯の釈放にも踏み切った。

さらに8月の内閣改造で、汚職疑惑のあった閣僚を更迭するなど改革断行の姿勢を明確にした。一方、今年4月の国会補選ではスー・チー氏が率いる国民民主連盟(NLD)が大勝している。

米国が先月、対ミャンマー経済制裁をほぼ全面解除したことも歓迎したい。この流れを後戻りさせてはならない。現憲法は上下両院定数の4分の1を軍人に割り当てており、日米などは支援を通じ、憲法改正を促す必要がある。

最貧国に甘んじてきたミャンマーだが、天然ガスや鉱物資源は豊富だ。人口約6200万人、識字率も高い。消費市場としても生産拠点としても潜在力は大きい。

ミャンマーにとっての急務はインフラ整備だ。日本のゼネコンが現地事務所を開設したり、通信大手が現地法人の設立準備を進めたりしているほか、自動車メーカーにも進出の動きが出ている。

中国における反日デモの暴徒化で打撃を被った日本企業にとって、ミャンマーへの投資は「リスク回避」の意味合いもある。日本の支援を、経済の互恵関係を生む好循環へとつなげたい。

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