民主化改革を進めるミャンマーに対し、国際社会が支援体制を整えたことを歓迎したい。改革と経済再建に弾みをつける必要がある。
先進国と世界銀行、アジア開発銀行によるミャンマー支援国会合が東京で開かれた。
ミャンマーが抱える延滞債務を来年1月に免除し、国際社会が20年以上も中止してきた金融支援を再開する方針で合意した。
約5000億円という最大の貸し手である日本は、大半の債権を放棄したうえ、円借款を来年早い時期に26年ぶりに再開する。
世銀とアジア開銀が新規融資を行えるよう、世銀などに対するミャンマーの借金を日本がいったん肩代わりする協力も決めた。
ミャンマーとの関係修復に積極的な日本が主導し、国際的な支援策をまとめた意義は大きい。
ミャンマーは軍事政権下の人権弾圧などを理由に、先進国側から長年にわたり経済制裁を受けてきた。そのため、東南アジア諸国連合(ASEAN)の中で取り残されてきた最貧国である。
しかし、2010年に民主化運動指導者のアウン・サン・スー・チー氏が軟禁を解かれ、昨春には民政移管を果たし、テイン・セイン政権が民主化を進めている。
こうした大きな変化を国際社会が評価して、ようやく支援再開にこぎつけた。
ミャンマーは人口が6000万人を超え、天然資源なども豊富だ。「アジア最後のフロンティア」として急成長が期待される。
アジア開銀の黒田東彦総裁も、「国内改革が進めば、今後5~10年で他のASEAN諸国に追いつける」と予想している。
先進国などの金融支援と投資拡大をテコに、経済発展を加速させることが肝要だ。
課題は、電力、鉄道などのインフラや、医療、教育などの整備が遅れていることである。日本は円借款供与によって、インフラ輸出の拡大も目指したい。
すでに大手商社などがミャンマーでの事業に乗り出している。経済特区の整備でも、政府と企業が全面的に協力する方向だ。
日系企業にとって、ミャンマーは、アジアの新たな生産拠点となる可能性が高い。官民連携を一層強化すべきである。
ミャンマーは中国と近接し、貿易量は多いが、中国の影響力に対する警戒感もうかがえる。
日本の積極的なミャンマー支援は、地域での存在感を強めようとする中国への牽制にもなる。
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