デフレ対策 不安心理絶つ姿勢示せ

朝日新聞 2009年11月21日

デフレ再燃 たじろがず新成長戦略を

政府が「デフレ宣言」を出した。月例経済報告の基調判断に「物価の動向を総合してみると、緩やかなデフレ状況にある」という文言を盛り込んだ。政府が物価下落をデフレーションと認定したのは3年5カ月ぶりだ。

デフレは総需要の不足が原因で、物価が全般的に下がり続ける現象である。販売や生産、消費の不振を招く巨大な圧力となる。

日本はバブル崩壊後から消費者物価が下がり、先進国としては戦後初のデフレに陥った。政府は01年3月にデフレ宣言を出し、06年6月までデフレ状態と認めていた。長期にわたり物価下落が経済を圧迫してきたのだ。

その後、景気回復につれてデフレはおさまったが、政府は「逆戻りする可能性が残る」との判断から「デフレ脱却宣言」を見送り続けてきた。

そして今回、再びデフレ状態に舞い戻ったと表明。世界同時不況が引き起こした経済収縮で、デフレが悪化していることを認めざるをえなくなったといえよう。

消費者物価の連続下落が7カ月。国内総生産(GDP)統計の国内部門の物価指数も年初から3四半期連続で下がっている。経済協力開発機構(OECD)の経済見通しで、日本経済がデフレに陥っているとしているだけでなく、デフレが11年まで続くと予測していることをみても、政府の「宣言」は妥当だ。

宣言がきっかけで、「物価はこれからも下がる」という「デフレ期待」が国民の間に広がることを警戒する声も金融界などにある。人々の財布のヒモが固くなって、消費不振がさらにひどくなるのでは、という心配だ。

だが、いま必要なのは「宣言」の副作用を心配することではない。不況を長期化させかねないデフレをきちんと認識したうえで、その克服策を打ち立てることだ。

菅直人副総理兼経済財政相は、きのうの記者会見で日銀にデフレ克服策を求めたが、政府も日銀と力を合わせて、政策を総動員する必要がある。

バブル崩壊後のデフレを緩和するのに威力を発揮したのは、米国と中国の経済成長に引っ張られた輸出の増加だった。それに刺激されて設備投資が拡大し、企業業績は回復した。

いまは、鳩山政権が掲げる「コンクリートから人へ」の大方針に沿った福祉経済化や雇用対策、地球温暖化対策としての「グリーンな経済」づくりを基礎に、民間の投資や消費を引き出すような成長戦略を組み立て、実行に移すことが期待される。

来日したOECDのグリア事務総長は今週、日本の課題について、女性の社会進出や環境技術の発展で「新たな成長をめざす必要がある」と指摘した。このエールにこたえたい。

毎日新聞 2009年11月21日

デフレ対策 不安心理絶つ姿勢示せ

政府は11月の月例経済報告で、日本経済について「緩やかなデフレ状況にある」とモノが余って物価下落が続くデフレにあると認定した。月例報告に「デフレ」の表現を盛り込むのは2006年6月以来だ。一方、景気の現状については「持ち直してきているが、自律性に乏しい」と判断を据え置いた。

デフレ認定といっても、あわてたり、身構えたりする必要はない。今は、景気の緩やかな回復傾向とデフレが共存しており、景気後退とデフレが連鎖する恐慌へ、すぐに突き進む恐れはない。

デフレを招いている要因は複合的だ。経済のグローバル化によって、中国など新興国による低価格の圧力が国境を超えて時間差を置かずにかかり続けている。また、昨秋のリーマン・ショック以降、実物経済の動きは世界的に低調で、モノが余って価格下落を生む状態にある。ここまでは世界共通の現象である。

日本ではさらに別の要素も見逃せない。ムダな公共事業の削減や流通の簡素化、さまざまな規制改革、地価の適正化、そして技術革新などが「高コスト構造」と言われてきた日本経済を変えつつある。現政権によるダム計画中止や事業仕分けによる予算見直しなどは、結果的にデフレ圧力を伴う。こうした社会の仕組みの望ましい変化がデフレをもたらしている面もあるのだ。

とはいえ、価格引き下げ競争によって企業の収益が悪化すると、賃金が落ち込み、5%台にとどまっている失業率が悪化する心配がある。その結果、さらに消費が落ち込んで物価が下がれば、景気後退との連鎖に陥っていく。こんな状況は避けなければならない。

デフレは持てる人と持たざる人との格差も広げる。十分な現金を持っている人や安定した職がある人は、物が安くなった恩恵を存分に受けるかもしれないが、借金を抱える人は返済額が実質的に膨らむし、雇用が安定しない人は賃下げや失業の恐れに直面する。

政府がデフレを認定したのは、今後の2次補正予算や来年度予算の編成で、さまざまな対策を盛り込む用意をしているからだろう。だが、目先の対応に追われ、望ましい変化の手を緩めてはならない。公共事業で需要刺激などナンセンスだ。持たざる人への手厚い対応で、社会不安を増大させないことも注文しておきたい。

伝統的な金融政策が手詰まりの状態にある日銀も含め、国民生活を脅かしかねない事態に真剣に対処しているという姿勢を打ち出すことが大事だ。そうしたメッセージが不安心理の増幅を絶ち、デフレの深刻化を食い止めるだろう。

読売新聞 2009年11月21日

デフレ認定 日銀は政府と危機感の共有を

やはり日本経済は、物価が下がり続けるデフレに陥っていた。

政府は月例経済報告で「緩やかなデフレ状況にある」と認定し、デフレが景気を腰折れさせる恐れがあるとの見方を示した。

政府は2001年3月、物価下落が長期化したため、戦後初めてデフレを認定したが、今も脱却宣言はない。全快を確認できないまま、デフレがぶり返した。

政府と日銀は、連携を密に政策を総動員し、今度こそ完治を図らねばならない。

物価が下がれば消費者にとってはうれしいが、企業の利益は減少し、給料カットや失業として跳ね返る。その影響による消費の減少で物価がさらに下がれば、デフレと不況が連鎖するデフレスパイラルにつながる。

デフレからの脱却には、最大の原因である需要不足の解消が欠かせないが、先行きは不透明だ。

家電のエコポイントやエコカー補助などが奏功し、実質国内総生産(GDP)は、この2四半期連続でプラス成長となった。

だが、失業率は高く、冬のボーナスも大幅減が確実だ。年末商戦の見通しは暗い。鳩山内閣が公共事業の一部を凍結した影響も心配だ。円高で輸入品が安くなるもうひとつのデフレも懸念される。

政府は、今年度2次補正予算と来年度当初予算を、雇用、環境、子どもへの対策を重点に編成するという。

ただ、財政は厳しい。国債を大増発すれば金利が急上昇しかねない。大盤振る舞いを避け、需要拡大に即効性のある事業に絞った予算配分が必要となろう。

政府内には「住宅版エコポイント」などの新たなアイデアもあるという。子ども手当などの政権公約にとらわれず、効果的な対策に知恵を絞ってもらいたい。

需要の穴埋めを財政だけに頼らず、民間主導の成長実現に向けた中長期的な戦略も、策定を急がねばならない。

一方、デフレ退治の主役であるべき日銀が、デフレへの危機感を、政府としっかり共有しているのか疑問がある。

経済協力開発機構(OECD)は19日、日本のデフレが2011年まで続くとし、日銀に量的金融緩和で戦うべきだと提言した。

だが、日銀は20日の金融政策決定会合で政策を現状維持し、白川方明総裁は量的緩和の拡大など追加策は不要との考えを示した。

政府より、デフレに対する認識が甘いのではないか。

産経新聞 2009年11月22日

デフレ宣言 「鳩山不況」阻止へ総力を

政府が11月の月例経済報告で「日本経済は緩やかなデフレ状況にある」と宣言した。これまで日本経済への危機感が感じられなかった鳩山由紀夫内閣もようやく厳しい現実を認識したようだ。

それなのに成長戦略など需要喚起を目指す対策を盛り込んだ平成21年度第2次補正予算の編成は年明けに持ち越すという。政府と日銀は足並みをそろえて対策を打ち出し、デフレの早期脱却に全力を投入しなければならない。

物価が継続して下落するデフレは、売り上げの減少が企業収益を悪化させる。それが賃下げや失業増を招いて消費が低迷し、さらに企業収益が悪化する負の連鎖を呼び込みかねない。悪循環を断ち切るには、従来の発想にとらわれずに思い切った政策が必要だ。

日本経済は平成10年から16年にかけて深刻なデフレに悩まされた。この時は世界経済に支えられて輸出の増加で切り抜けたが、昨年9月のリーマン・ショックで世界経済がマイナス成長に転じ、日本に再び本格的なデフレの波が押し寄せている。

すでに生鮮食料品を除く消費者物価は、9月まで7カ月連続で前年同月を下回った。国内総生産(GDP)も、物価の影響を除いた実質成長率では7~9月期に2四半期連続で前期に比べてプラス成長を示したものの、生活実感に近い名目成長率では昨年4~6月期から6四半期連続でマイナス成長が続いている。

デフレからの脱却には需要不足に対応して福祉や医療、環境など実需に結び付く対策が必要不可欠だ。第2次補正予算には雇用の安全網整備だけでなく、将来を見通した成長戦略が求められる。

金融政策も重要だ。菅直人副総理(経済財政担当相)は日銀に対して「政策協調で金融面での支援を期待する」と指摘した。日銀も今後3年間は物価が下がると予想している。だが、白川方明総裁は追加的な対策には消極的だ。日銀には量的緩和の拡大など果断な金融政策を強く求めたい。

企業も安売りに走るのでなく、新たな市場を開拓するような創意工夫に力を注ぐべきだ。民間主導でダイナミックな成長戦略をみせてもらいたい。世界の主要な株式市場をみると、リーマン・ショックからの戻りは日本が一番遅れている。「鳩山不況」に陥らないためには、国を挙げた総力戦で臨まなくてはならない。

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