東京での国際通貨基金(IMF)と世界銀行の年次総会に、中国の謝旭人・財務相と周小川・人民銀行総裁の閣僚級2人が欠席する。
中国政府は尖閣諸島をめぐる日中関係の悪化を理由に挙げ、「日本に責任がある」としている。中国の代表団は次官級が率いる。
国境を越えた世界経済の減速にどう立ち向かうかを話し合う場に、国境問題を持ち出して背を向けるとは、何とも滑稽だ。国際的な協調を軽視していると受け取られても仕方がない。世界第2位の経済大国であればなおさらである。
中国は急速な経済成長を背景に、新興国の先頭にたって国際通貨体制での発言力の拡大を求めてきた。IMFでは米、日に次ぐ第3位の出資国へ昇格することが決まっている。1人増員された副専務理事のポストも中国が獲得した。
新興国の権利と責任をどう調整して、多極化の時代にふさわしい「新IMF」を築いていくか。まさにその話を本格化させる時に、中国がこのような姿勢をとることは、自らが求めるIMF改革にも逆行する。
トップの欠席は、中国の特異さを世界に印象づけることにもなる。直接投資など対中ビジネスのリスクをめぐり、世界の慎重な見方を強めるだけだ。
ここに来て、中国経済に世界が注ぐ視線も変化している。08年のリーマン・ショック後に4兆元(約50兆円)の景気対策で世界経済を支えて喝采を浴びたころとは異なり、いまは中国自身の景気減速が世界の懸念材料になっているからだ。
もともと今年は主要国で選挙が相次ぐ「政治の年」で、景気悪化への政治の対応力が落ちると警戒されていた。その中で、共産党独裁の中国は10年に1度の政権移行に際して国内安定を最優先させ、財政金融政策を駆使するとみられていた。
ところが、春以降、欧州不況のあおりであっさり減速してしまった。背景に共産党内の権力争いに伴う政治的な求心力の低下を指摘する声もある。
中国が国内景気を腰折れさせないよう、どのような手を打つのか。従来型の産業やインフラへの投資に依存する景気対策を続けるのか。あるいは、内需主導への転換のカギを握る個人消費の振興やサービス産業化に取り組むのか――。
世界の財政・金融政策のトップが集う会合で、こうした疑問に責任ある立場の人間が答え、不確実性を氷解させることこそ大国としての責務だろう。
この記事へのコメントはありません。