米大統領選討論 ロムニー善戦でオバマ守勢に

毎日新聞 2012年10月05日

米大統領選 世界うならせる討論を

あと1カ月、激しいつばぜり合いが続きそうだ。米大統領選(11月6日)の行方を占う1回目のテレビ討論会がコロラド州デンバーで開かれた。各種世論調査で優勢を誇るオバマ大統領(民主党)だが、討論会後に米CNNが実施した世論調査では、共和党候補のロムニー前マサチューセッツ州知事が論戦に勝ったと答えた人が67%に上ったという。

ロムニー氏は巻き返しへの手ごたえを感じただろう。一時は水をあけたかと思えたオバマ大統領だが、再選はそう簡単なことではない。あと2回、外交もテーマに開かれる大統領候補の討論会は大きな要素になろう。世界中の人々が、この超大国の指導者選びを見つめている。日本が対応に苦しむ尖閣問題も含めて、世界が感心する論戦を期待したい。

3日夜(日本時間4日午前)の討論会は内政がテーマだった。焦点の雇用対策でオバマ大統領が「過去30カ月で500万の雇用を創出した」と実績を誇れば、ロムニー氏はオバマ政権の「大きな政府」や「巨額の財政支出」を批判し、民間主導の雇用創出を訴えた。同氏は1200万の新規雇用を公約している。

また、実質的な国民皆保険制度に向けて医療保険改革を進めるオバマ大統領に対し、ロムニー氏は改革に金がかかり過ぎるなどとして、廃止を主張した。米国では医療保険改革に反対する人も多い。同氏が庶民に身近な問題を丁寧に説明し、おおむね落ち着いて大統領と渡りあった点が好感を呼んだのだろう。

資産家のロムニー氏は「(米国民の)47%が連邦所得税を払っていない」と、庶民を「たかり」呼ばわりするような発言もあって、支持率が低迷していた。金融機関救済や医療保険改革への公費注入を批判する草の根運動「ティーパーティー(茶会)」や、同性婚などに反対する保守層の支持を当て込み、あえて強硬な発言をする傾向もあった。もともと党内穏健派の同氏は、無理をせず自然体で行くのが得策ではないか。

オバマ大統領は大州のカリフォルニアとニューヨークでの勝利が確実で、共和党が大統領選に向けて全国大会を開いたフロリダ州の世論調査でもリードしている。全米538人の選挙人獲得を争う大統領選で、オバマ大統領は過半数(270人)確保へあと一息との報道もある。

だが、これは現時点の情勢で、米国には「オクトーバー・サプライズ」(10月の大事件)という言葉もある。00年の選挙の投票日直前、ブッシュ候補(前大統領)が二十数年前に酒気帯び運転で逮捕されたことが明るみに出たのも、その一例だ。水面下で陰謀も渦巻く米大統領選は、ぎりぎりまで目が離せない。

読売新聞 2012年10月05日

米大統領選討論 ロムニー善戦でオバマ守勢に

11月6日の米大統領選投開票に向け、民主党候補のオバマ大統領と共和党候補のロムニー前マサチューセッツ州知事が直接対決する、第1回テレビ討論会が行われた。

計3回行われる討論会は、討論の中身は無論、表情や態度などテレビ映りの良さが有権者の判断材料となる重要なイベントだ。

自らの失言で支持率がなかなか伸びないロムニー氏にとって、劣勢を挽回する重要な機会である。激戦州で支持率が急落していただけに失敗すれば勝ち目はない。

終了直後の世論調査でロムニー氏に軍配が上がったのは、積極的に攻めに出たのが功を奏した結果だろう。選挙戦の行方は再び混沌(こんとん)としてきたと言える。

第1回討論のテーマ「経済・内政」は、経営者として成功したロムニー氏の得意分野だった。

米経済の状況は厳しい。景気減速から抜け出せず、失業率は高止まりしている。第2次世界大戦後、失業率8%台で再選された米大統領はいない。

4年間の「失政」を攻撃するロムニー氏には有利で、再選を目指すオバマ氏は防戦に追われた。

両候補に問われているのは、力強い景気回復をどう実現していくのか、実効性ある処方箋を示すことである。討論では、政策の違いが改めて浮かび上がった。

オバマ氏は、雇用を創出するため、連邦政府の役割を重視する立場だ。中間所得層向け減税、教員の再雇用、学校や道路など公共投資、再生エネルギーの拡大などの持論を展開した。

ロムニー氏は財政膨張だと批判し、富裕層を含む大幅減税と規制撤廃で民間の活力を高める必要性を強調した。エネルギー自給の推進や1200万人の雇用創出を改めて公約した。

財源をどう確保するのか。財政出動による景気刺激策なしに大規模な雇用を創出できるのか。両候補の景気浮揚策には、詰めるべき点が少なくない。

財政赤字は、4年続けて1兆ドルを超えている。財政再建は待ったなしの重要な課題だ。

そのために必要な歳出削減で、オバマ氏は国防費も例外扱いにしないが、ロムニー氏は反対だ。財政再建が今後、アジアを重視する米国の軍事戦略にどう影響してくるのか。日本の安全保障にもかかわる問題である。

2回目、3回目の討論では外交もテーマとなる。対中政策が大きな争点となろう。接戦の帰趨(きすう)を決める論戦の行方を注視したい。

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