11月6日の米大統領選投開票に向け、民主党候補のオバマ大統領と共和党候補のロムニー前マサチューセッツ州知事が直接対決する、第1回テレビ討論会が行われた。
計3回行われる討論会は、討論の中身は無論、表情や態度などテレビ映りの良さが有権者の判断材料となる重要なイベントだ。
自らの失言で支持率がなかなか伸びないロムニー氏にとって、劣勢を挽回する重要な機会である。激戦州で支持率が急落していただけに失敗すれば勝ち目はない。
終了直後の世論調査でロムニー氏に軍配が上がったのは、積極的に攻めに出たのが功を奏した結果だろう。選挙戦の行方は再び混沌としてきたと言える。
第1回討論のテーマ「経済・内政」は、経営者として成功したロムニー氏の得意分野だった。
米経済の状況は厳しい。景気減速から抜け出せず、失業率は高止まりしている。第2次世界大戦後、失業率8%台で再選された米大統領はいない。
4年間の「失政」を攻撃するロムニー氏には有利で、再選を目指すオバマ氏は防戦に追われた。
両候補に問われているのは、力強い景気回復をどう実現していくのか、実効性ある処方箋を示すことである。討論では、政策の違いが改めて浮かび上がった。
オバマ氏は、雇用を創出するため、連邦政府の役割を重視する立場だ。中間所得層向け減税、教員の再雇用、学校や道路など公共投資、再生エネルギーの拡大などの持論を展開した。
ロムニー氏は財政膨張だと批判し、富裕層を含む大幅減税と規制撤廃で民間の活力を高める必要性を強調した。エネルギー自給の推進や1200万人の雇用創出を改めて公約した。
財源をどう確保するのか。財政出動による景気刺激策なしに大規模な雇用を創出できるのか。両候補の景気浮揚策には、詰めるべき点が少なくない。
財政赤字は、4年続けて1兆ドルを超えている。財政再建は待ったなしの重要な課題だ。
そのために必要な歳出削減で、オバマ氏は国防費も例外扱いにしないが、ロムニー氏は反対だ。財政再建が今後、アジアを重視する米国の軍事戦略にどう影響してくるのか。日本の安全保障にもかかわる問題である。
2回目、3回目の討論では外交もテーマとなる。対中政策が大きな争点となろう。接戦の帰趨を決める論戦の行方を注視したい。
この記事へのコメントはありません。