環境税導入 廃止含め早期の見直しを

毎日新聞 2012年10月05日

温暖化対策税 使途の透明性を高めよ

石油や石炭など化石燃料に課税する地球温暖化対策税(環境税)が今月から導入された。温暖化を招く二酸化炭素(CO2)の排出を抑制するためで、税収は省エネの推進や再生可能エネルギーの導入拡大に使われる。東京電力福島第1原発事故が起き、省エネや再生可能エネの重要性が増している。温暖化対策を脱原発につなげるためにも、政府は税収を効果的に活用してほしい。

課税は、化石燃料のCO2排出量に応じ、現行の石油石炭税に上乗せする形で行われる。14年度と16年度に段階的に引き上げ、完全実施後の課税額は石油1リットル当たり0.76円、ガス1キロ当たり0.78円、石炭同0.67円となる。電力会社やガス会社が料金への転嫁を検討中で、東京電力は9月からの電気料金値上げの中に増税分を織り込んだ。環境省は、一般家庭で年間約1200円程度の負担増になると試算する。税収総額は今年度が約390億、16年度からは約2600億円となる見込みだ。

同省は、価格上昇に伴う消費抑制や税収を財源とした対策でCO2排出量を1990年比で最大2・2%削減できると胸算用する。同省の来年度予算概算要求でも、地方自治体の環境事業に助成する基金への拠出拡充や洋上風力発電の実証事業など税収をあてこんだ予算措置がずらりと並ぶが、財源のばらまきに終わらぬよう、費用対効果を厳しく検証し、施策に反映する必要がある。7月に始まった再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度に続き、新たに消費者の負担を求める制度となるだけに、税収の使途に高い透明性が求められるのは当然のことだ。

環境税導入は温暖化対策の大きな一歩だが、対策強化のため、政府には国内排出量取引制度の導入も改めて検討してもらいたい。

政府は温室効果ガスを20年までに90年比で25%削減する国際公約を掲げてきたが、9月にまとまった「革新的エネルギー・環境戦略」では、国内での削減分を同5~9%とした。一方で、日本の優れた環境技術を海外に提供することによって生まれた削減分を、日本の削減目標に活用する「2国間オフセット・クレジット制度」を今後の国際貢献の柱に掲げた。

脱原発を進める上で短期的な目標の見直しはやむを得ないが、温暖化の脅威に変わりはなく、「50年に80%削減」という長期目標の順守は先進国としての責務だ。

政府は今後、削減目標の見直しを世界に説明する必要があるが、国際交渉の場では、2国間クレジット制度について了解が得られていない。原発事故というハードルに向き合いながら、国内対策を総動員してこそ、理解も得られるのではないか。

産経新聞 2012年10月01日

環境税導入 廃止含め早期の見直しを

石油や天然ガスなどの化石燃料に1日から環境税(地球温暖化対策税)が導入される。温室効果ガスの排出抑制に充てるため、電気料金などに転嫁され、最終的に消費者が負担する仕組みだ。

段階的に税率を引き上げる同税は、東京電力福島第1原発事故の前に内容が決まった。その後、事故の影響でほとんどの原発が運転を停止し、天然ガスなどの輸入が急増している。

このまま予定通りに増税が行われると、先行した再生可能エネルギー全量買い取りなども加わって電気料金の大幅な上昇が避けられない。野田佳彦政権は状況変化をきちんと踏まえ、環境税の即時廃止も含めて抜本的見直しに取り組んでもらいたい。

環境税は現行の石油・石炭税に上乗せして課税される。ガソリンは1日から1リットル当たり0・25円の増税となり、2014年4月と16年4月にも、ほぼ同額が増税される。電気・ガス料金の上乗せを含めて、1世帯の負担は年に1200円程度増える見込みだ。

だが、増税決定の経緯や使途をみると首をかしげざるを得ない。同税は温室ガス排出削減に向けて一昨年末の税制改正で決定されたものだ。法案は震災の影響などでいったん流れたが、内容を改めないまま今年3月に成立した。

その際に原発停止や化石燃料の輸入増などの事情が考慮されなかったのは問題だ。太陽光や風力などの再生エネを全量買い取る制度も7月に始まった。料金値上げの要因がめじろ押しで、経済や国民生活への影響は避けられない。

一方で、本来の目的だった温室ガスの排出削減をめぐる環境も大きく変化している。

政権交代直後、当時の鳩山由紀夫首相は温室ガスを「2020年までに1990年比で25%削減する」と公約した。非現実的な公約だったが、野田政権が打ち出した「2030年代に原発ゼロ」方針で、目標達成は破棄されたに等しい。それなのに、温暖化対策向けの増税を行うのは国民の納得が得られまい。産業界からは廃止を求める声が上がっている。

燃料輸入が増える中での増税のため、税収は大幅に増えそうだ。総務省や農水省などが予算獲得に意欲的だが、増税自体に疑問が強い中で、ばらまき財源に当て込むなどはもってのほかだ。野田首相には早期対応を強く求めたい。

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