党首討論 まだ一度も開かぬとは

朝日新聞 2009年11月19日

党首討論 情けない首相の逃げ腰

政権交代から2カ月あまり。鳩山政権は10年度予算編成に向けて、自公政権下でとられてきた政策を次々に見直そうとしている。

麻生政権による補正予算の全面見直し。八ツ場ダムの建設中止。行政刷新会議の事業仕分け。米軍普天間飛行場の移設についても、日米で合意した計画の見直しを含めて「検証」を進めている。

なぜ、政策の大規模な変更なのか。どう実現するのか。鳩山由紀夫首相は説明責任を負っている。

下野した自民党の谷垣禎一総裁はどう反論するのだろうか。過去の党の政策をどう評価するのか。自民党の新しい道は何か。今ほど、有権者が両氏の主張のぶつけ合いを聞きたいと思っている時はないだろう。

ところが、両氏による党首討論がこの国会で開かれるのかどうか、怪しい状況になってきた。当初、与野党は初の討論をきのう開く方向で話してきたが、結局、政府与党が応じなかった。谷垣氏の自転車事故の前から、きのうの党首討論の可能性は消えていた。

一部の閣僚が公務で出席できないから、というのが言い分だ。確かに、討論には全閣僚の出席を原則とするという与野党の申し合わせがあるが、拒む理由としては納得しがたい。

党首同士がやりあうのに、なぜ全閣僚の出席が必要なのか。与党は申し合わせをたてに討論を避けた、と言われても仕方あるまい。

討論は原則として水曜日に開くという申し合わせもある。そうすると次の機会は25日だが、自民党の開催要求に政府与党はまだ応えていない。政府与党は30日までの会期中に開かなくてよいと考えているのだろうか。

閣僚が欠席したとしても何の不都合もないし、開催日をずらす手もある。野党時代、民主党は討論の開催を強く要求してきた。与党になったとたんのこの不熱心さは、なんとも説得力を欠く。政府与党は速やかに党首討論を実現させるべきだ。

予算編成に集中するため国会の会期延長は避けたい。法案処理が最優先なので時間がとれない。そんな解説は理由にならない。討論はわずか45分間という慣行なのだから。

自らの政治資金疑惑や政府内の足並みの乱れを突かれたくないからではないか。討論を避ければ避けるほど、そう言われるのを首相は覚悟しなければならない。

所信表明演説で「真に国民のためになる議論を力の限り、この国会でぶつけ合っていこうではありませんか」と呼びかけたのは首相だ。

この国会を逃すと、党首討論の機会は来年の通常国会までなくなる。歴史的な政権交代を果たしたというのに、そんな怠慢は情けない。

毎日新聞 2009年11月19日

党首討論 まだ一度も開かぬとは

「政治家同士の議論を」というのが民主党が掲げる国会改革のうたい文句である。与野党のトップが2人で議論を戦わせる党首討論はそのシンボルだろう。ところが、鳩山政権が発足して約2カ月、鳩山由紀夫首相と谷垣禎一自民党総裁との討論は一度も開かれていない。

一時、与野党で合意していた18日の開催は早々に見送られ、会期末(30日)を控えた来週25日も未定という。見送りの理由は法案審議を優先する民主党側の事情による。しかし、実際には鳩山首相が逃げているのではないか。そう見られても仕方がない状況だ。

今国会では政府提出法案の審議日程がなかなか固まらず、各法案の会期内成立が難しくなっているのは確かだ。このため、民主党は自民党に対し、法案の審議入りにめどがつけば党首討論に応じる姿勢を示している。つまり、党首討論は既に国会対策をめぐる駆け引きの道具と化しているといっていい。

だが、与野党党首が国の基本問題について論じ合うというのが党首討論の本来の趣旨だ。しかも、政権が交代した大きな節目で開催しないのは、その重要性を自ら否定しているに等しいではないか。

実はもっとほかに理由があるのではないかと疑いたくなる。

首相自身の「故人」献金問題は今も決着していない。その後も08年に株売却で得た所得を税務申告していなかった問題が発覚したのに続き、最近では首相の資産報告書などの記載漏れが判明し、総額5億円余相当に上る訂正をしたばかりだ。民主党が党首討論に消極的なのは、この問題を避けたいからではないのか。

早急に党首討論を開くべきだと考えるのは重要な理由がある。懸案となっている沖縄の米軍普天間飛行場の移設問題だ。先の日米首脳会談後も、鳩山首相のこの問題に関する発言は日々ぐらついている印象だ。いつ、どんな形で決着させたいと首相は考えているのか。党首討論は論点を整理する格好の場となる。

鳩山政権側にもメリットはある。岡田克也外相は自民党政権がなぜキャンプ・シュワブ沿岸部(沖縄県名護市)に移設する現行計画に至ったのか検証したいと再三語っている。ならば、党首討論で自民党総裁である谷垣氏に、その経緯や、なぜ現行計画が最善かを鳩山首相がただし、議論を重ねればいいではないか。

「新しい日本をつくる国民会議」(21世紀臨調)の小委員会が先にまとめた国会改革の提言には、党首討論を週1回定期的に開くことも盛り込まれている。与野党の駆け引きから離れて、最優先で開催するよう明確に制度化する時期だ。

読売新聞 2009年11月20日

党首討論見送り 首相の決断で応じるべきだ

国会を政治家同士の論戦の場としたい――。そう力説している民主党が党首討論の開催に応じないのは、まったく筋が通らない。

鳩山首相と谷垣自民党総裁による初の党首討論は当初、18日に開催する予定だった。ところが、民主党が先週になって難色を示し、日の目を見なかった。

党首討論は、各党の申し合わせで毎週水曜に開催するとなっているので、会期延長がなければ、来週の25日が最後の機会となる。

民主党は、法案審議を優先するためとしている。

しかし、党首討論は水曜の午後3時から45分間だけだ。開催を要求する自民党の協力を得て、その時間だけ法案審議を中断するなど工夫の余地はいろいろあろう。

そもそも法案審議の優先が理由なら、会期末ほど開催が困難で、25日の開催も危うくなる。鳩山政権初の党首討論を来年の通常国会まで先送りするつもりなのか。

各党の申し合わせでは、すべての閣僚が「原則として陪席する」となっている。民主党はこれを持ち出し、閣僚全員をそろえるのが容易でないとも釈明するが、自民党は「閣僚がそろわなくてもよい」と言っている。

いずれも、説得力を欠く理由ばかりだ。これでは、「首相の偽装献金問題を追及されたくないからだ」と批判する自民党を勢いづかせるだけだろう。それが不本意なら、鳩山首相は逃げ隠れせずに党首討論を受けて立てばよい。

国会対応の責任者である小沢幹事長も、自民党の要求に応じるべきだ。小沢氏は国会改革に関する法案の今国会提出をめざし、「国会も政治家同士の論戦に改めるべきだ」と強調している。

「政治家同士の論戦」の最たるものが、党首討論ではないか。

小沢氏の要請を受けた「新しい日本をつくる国民会議」(21世紀臨調)も、党首討論の毎週開催を提言している。新たな立法措置を必要とせず、民主党が決断すれば直ちに実現することだ。時間の短縮や全閣僚陪席の見直しなど、開催しやすくすることも大事だ。

子ども手当など新規施策の財源や、首相の発言がぶれる米海兵隊普天間飛行場移設の問題など、掘り下げるべき論点は多い。首相の偽装献金問題も、本人の口からきちんとした説明を聞きたい。

それを阻んでいるのは、明らかに民主党である。「疑惑隠し」「看板倒れの国会改革」のそしりを受けたくなければ、25日の党首討論開催に応じるべきである。

産経新聞 2009年11月18日

党首討論 見送りは国会改革が泣く

鳩山由紀夫首相と自民党の谷垣禎一総裁の党首討論が、新政権発足から2カ月を経た今も実現していない。

18日開催が見込まれていたが、民主党が閣僚の都合などを理由に見送りを主張して開かれない。会期末(30日)を考えれば、来週の25日が最後の機会だが、未定という。自民党は早期開催を主張しているが、政府・与党の消極的な姿勢は情けない。

党首討論は、政権交代可能な二大政党のトップ同士が国のありようや重要政策を直接、論じあう好機となる。本格的な政権交代が実現した今日、その重要性は一層高まっている。

民主党が唱える国会審議の活性化とは、政治家の議論をレベルアップすることではないのか。それなら党首討論が手本となるべきだ。法案処理優先で、党首討論など二の次という対応は残念だ。

虚偽献金疑惑を抱える首相が、開催に逃げ腰だとの見方も出ている。不名誉な風聞をぬぐう気があるなら、首相は開催日程を最優先で決めるべきだろう。

18日の開催を拒んだ民主党は、同日予定されている人事官の認証式に閣僚が立ち会わなければならないことを理由に挙げた。党首討論の舞台となる衆参の国家基本政策委員会に「国務大臣は原則として陪席する」という合同幹事会の申し合わせがあるためだ。

おかしいのは、自民党が「全閣僚の出席は必要ない」と主張したのに、民主党がこの申し合わせを強調したことだ。一閣僚の欠席が党首討論の運営に支障を来すとは思えない。厳しい追及から首相を守りたい思惑が感じ取れる。

だが、米軍普天間飛行場移設問題をどう決着させるか、日本郵政社長人事で揺らいだ民主党の「天下り」に関する考え方はどうなのか。突っ込んだ討論を行うべき課題は少なくない。首相の献金疑惑も、民主党や首相自身が説明責任を果たそうとしない以上、テーマとすべきだ。

小沢一郎幹事長も代表時代は党首討論に消極的だった。民間有識者でつくる「新しい日本をつくる国民会議」(21世紀臨調)が出した緊急提言は、国会審議活性化策の筆頭に毎週1回の定期開催実現など党首討論の充実を挙げた。

民主党は官僚答弁廃止に重点を置こうとしているが、まずは党首討論への誠実な取り組みが国会改革の試金石となる。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/119/