領土問題は平行線だったが、2国間関係を改善する方針を確認した意義は小さくない。
玄葉外相と韓国の金星煥外交通商相が国連本部で会談し、「安定的で未来志向」の日韓関係の構築に向けて努力することで一致した。経済、人的・文化交流、安全保障などの分野で協力することでも合意した。
8月10日の李明博大統領の竹島訪問後、韓国側の一連の対応はあまりに感情的で、日韓両国は一時、非難合戦に陥った。ようやく大局的な観点から、関係の立て直しに動き始めたことを歓迎したい。
日韓の足並みが乱れては、核や拉致の問題で北朝鮮を利するだけだ。日韓の対立については、同盟国の米国も懸念を隠さず、関係改善を働きかけていた。
日本にとっては、尖閣諸島の国有化をめぐり対中関係が悪化している時だけに、対韓関係を安定化させる意味は大きい。
李大統領の在任中の関係改善は限定的なものとなろうが、来年2月の韓国新政権発足後も視野に入れ、当面は、外相級などで対話を重ねることが重要である。
竹島問題では、双方が従来の主張を繰り返すにとどまった。
金外相は国連演説で、「どの国も政治的目的のために国際法の手続きを利用すべきでない」などと語ったが、国際ルールに基づいて自国の主張を展開・実現することに何も問題はあるまい。
韓国が国際司法裁判所(ICJ)への共同提訴を拒否した以上、日本は、単独提訴に向けて、準備を粛々と進める必要がある。
野田首相は国連演説で、「法の支配」を重視し、領土紛争を「国際法に従い、平和的に解決する原則を堅持する」と宣言した。ICJに訴えられた際の応訴を義務づける「義務的管轄権」を各国が受諾することも呼びかけた。
日本は1958年から義務的管轄権を受諾しているが、中韓両国などは受諾していない。
韓国も、竹島の領有権の正当性を主張するなら、本来、ICJで堂々と争えば良いはずだ。
日本が国際法に基づき領土紛争を解決する姿勢をアピールすることは、尖閣問題で一方的で高圧的な外交を展開する中国との違いを鮮明にする効果もあろう。
いわゆる従軍慰安婦問題については、金外相が提起し、「国家的次元の措置」を求めたという。
日韓間の請求権問題は、65年の国交正常化時に「完全かつ最終的に解決」している。日本は、安易な妥協は厳に慎むべきだ。
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