日韓外相会談 対話継続で未来志向の関係を

読売新聞 2012年09月29日

日韓外相会談 対話継続で未来志向の関係を

領土問題は平行線だったが、2国間関係を改善する方針を確認した意義は小さくない。

玄葉外相と韓国の金星煥外交通商相が国連本部で会談し、「安定的で未来志向」の日韓関係の構築に向けて努力することで一致した。経済、人的・文化交流、安全保障などの分野で協力することでも合意した。

8月10日の李明博大統領の竹島訪問後、韓国側の一連の対応はあまりに感情的で、日韓両国は一時、非難合戦に陥った。ようやく大局的な観点から、関係の立て直しに動き始めたことを歓迎したい。

日韓の足並みが乱れては、核や拉致の問題で北朝鮮を利するだけだ。日韓の対立については、同盟国の米国も懸念を隠さず、関係改善を働きかけていた。

日本にとっては、尖閣諸島の国有化をめぐり対中関係が悪化している時だけに、対韓関係を安定化させる意味は大きい。

李大統領の在任中の関係改善は限定的なものとなろうが、来年2月の韓国新政権発足後も視野に入れ、当面は、外相級などで対話を重ねることが重要である。

竹島問題では、双方が従来の主張を繰り返すにとどまった。

金外相は国連演説で、「どの国も政治的目的のために国際法の手続きを利用すべきでない」などと語ったが、国際ルールに基づいて自国の主張を展開・実現することに何も問題はあるまい。

韓国が国際司法裁判所(ICJ)への共同提訴を拒否した以上、日本は、単独提訴に向けて、準備を粛々と進める必要がある。

野田首相は国連演説で、「法の支配」を重視し、領土紛争を「国際法に従い、平和的に解決する原則を堅持する」と宣言した。ICJに訴えられた際の応訴を義務づける「義務的管轄権」を各国が受諾することも呼びかけた。

日本は1958年から義務的管轄権を受諾しているが、中韓両国などは受諾していない。

韓国も、竹島の領有権の正当性を主張するなら、本来、ICJで堂々と争えば良いはずだ。

日本が国際法に基づき領土紛争を解決する姿勢をアピールすることは、尖閣問題で一方的で高圧的な外交を展開する中国との違いを鮮明にする効果もあろう。

いわゆる従軍慰安婦問題については、金外相が提起し、「国家的次元の措置」を求めたという。

日韓間の請求権問題は、65年の国交正常化時に「完全かつ最終的に解決」している。日本は、安易な妥協は厳に慎むべきだ。

産経新聞 2012年09月30日

日米韓外相会談 対中牽制の大局見失うな

訪米中の玄葉光一郎外相はクリントン米国務長官と会談後、韓国の金星煥外交通商相を交えた日米韓外相会談を行った。3カ国は東アジアで日米韓の協力を深め、北朝鮮に対し連携して対応する方針を確認した。

日本は韓国と慰安婦や竹島問題で、中国とは尖閣諸島問題で対立が深まっているが、「共通利益や価値で結ばれた同盟国」(クリントン長官)である日米、米韓がその原点に戻って対話と協力の必要性を確認し合ったことは評価できる。

とりわけ北の核・ミサイル開発や拉致問題の解決に3カ国の協調は欠かせない。中国の強引な海洋進出に対抗する上でも、日米、米韓同盟に日韓を加えた連携が肝要だ。野田佳彦政権は領土・主権などでは決して譲らぬ一方で、日米韓の協調と連携の速やかな回復に知恵を絞ってもらいたい。

玄葉氏は前日の27日、金氏と日韓外相会談を行い、竹島、慰安婦問題とも双方の主張は平行線に終わったが、「緊密な意思疎通を図る」ことでは一致した。

また日米会談では、クリントン氏が対中外交で「細心の注意の下に進めてほしい」と求めたのに対し、玄葉氏は「譲れないものは譲れないが、大局的観点で冷静に対処する」と説明したという。

米側が日米韓外相会談を呼びかけたのは、日中の対立が先鋭化する中で中韓による対日連携の動きなどに危機感を持ったからだといえる。このままでは、北の脅威に対処しつつ日米、豪、インドなどで対中包囲網を築いていくオバマ政権のアジア太平洋戦略にも悪影響が及ぶからだ。

クリントン氏は領土問題などで「仲介役は務めない」と直接対話で解決を求めた。野田政権に問われるのは、領土や歴史問題などで自らの主張を堂々と国際社会に説明するとともに、同盟国の米国を最大の味方につけることだ。

中国が米有力紙に尖閣諸島領有権を主張する広告を掲載したのに対し、日本政府が「一方的で事実に誤りがある」と抗議したのは当然だ。韓国に対しても、慰安婦問題は解決ずみであり、竹島問題の国際司法裁提訴に応じるよう説得を続けることが必要だ。

言うべきは言った上で、日米を軸に韓国と連携して対中牽制(けんせい)を強化する。それが日本の「大局的」方向だ。首相は腰を据えてしたたかに国益を確保してほしい。

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