野田首相がニューヨークの国連総会での演説で、領土や海域をめぐる紛争は「国際法に従い平和的に解決するとの原則を、どのような場合でも堅持する」と表明した。
尖閣諸島や竹島の領有権を主張する中国や韓国を念頭に置いた発言だ。これらの問題に、歴史問題とからめて攻勢をかけてくる中韓への反論でもある。
国民感情がもつれて妥協が難しい問題でも、日本としては、国際法に基づいた公正な裁きに委ねる用意があるとの覚悟を示したものだ。
尖閣諸島をめぐっては、日本政府は「領土問題はない」としてきた。だが、首相がここまで言ったのだから、中国が国際司法裁判所(ICJ)に提訴する場合は拒む理由はない。
中国は首相発言に対し、「国際法を表に出して、欺こうとしている」(外務省報道官)と批判している。
演説に先立って行われた日中外相会談では、楊潔チー(ヤンチエチー、チーは竹かんむりに褫のつくり)・中国外相は尖閣購入を「中国の領土主権に対する重大な侵害」と位置づけ、「適切な措置で誤りをただせ」と迫った。
中国は「二国間での話し合いで解決すべきだ」との立場で、提訴には消極的だ。だが、幾度となく、領有の「歴史の裏付けと法的根拠がある」とも主張している。
対立を解消する外交ツールの一つとして、互いにICJ活用を真剣に検討してはどうか。
ただ、仮にICJに提訴しても判決まで何年もかかる。判決ですべてが解決される保証もない。提訴も選択肢にしつつ、打開点をさぐる幅広な外交努力を続けなければならない。
尖閣購入後、中国は矢継ぎ早に対抗策を打ってきた。
付近の海域に監視船が多数展開、日本領海に侵入し、日本の実効支配を崩そうと試みている。暴力的な反日デモが起き、交流事業は中断。税関での日本製品の検査強化など、経済制裁まがいの措置もとっている。
中国からの日本向け旅行はキャンセルが相次ぎ、日系の自動車メーカーに中国での生産を減らす動きが広がるなど、実体面での影響がすでに出ている。
首相は中国を名指しはしなかったが、「自らの主義主張を一方的な力や威嚇を用いて実現しようという試みは、国連憲章の基本的精神に合致しない」とも訴えた。
中国の動きには、国際社会も違和感を強めている。国連安全保障理事会の常任理事国でもある中国は、国際ルールを守る責任がある。
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