オスプレイ安全宣言 不安拭えぬ見切り発車

朝日新聞 2012年09月20日

オスプレイ配備 危うい「安全宣言」

政府は、米軍の新型輸送機オスプレイの沖縄・普天間飛行場への配備にあたって、「安全性は確認された」と宣言した。

これを受けて、米軍は、山口県・岩国基地での試験飛行をへて、10月中に普天間での本格運用を始める方針だ。

だが、このままでは日米同盟はかえって危うくなる。沖縄県民の強い反発を考えると、そう危惧せざるを得ない。

日米両政府で合意した安全対策は、たとえばこんな内容だ。

低空飛行訓練は高度約150メートル以上、原子力施設、史跡、人口密集地を避ける。米軍施設・区域周辺では人口密集地を避け、海上を飛行する。回転翼から固定翼への「転換モード」での飛行は、時間を短くする。

「可能な限り」とか「運用上必要となる場合を除き」といった留保が、たくさんついている。10月配備ありきで日米両政府が合意を急いだ、ととられても仕方ない。

両政府はまた、今年起きた2件の墜落事故について、機体に不備はなく、人為ミスが原因だと強調する。それはわずかなミスでも墜落するということではないのか。不安は拭えない。

政府は今後も、オスプレイの運用について米側と話し合っていくという。

その際、忘れてならないのは、この問題の根っこにあるのは、普天間返還への道筋が一向に示されないということだ。

これが解決されない限り、オスプレイ配備は、逆に日米安保体制のリスクとなりかねない。

市街地のど真ん中にある普天間飛行場の周辺では、緊急着陸できる余地も少ない。小さなミスやトラブルでも、大きな被害につながりやすい。

万一の事態など想定したくないが、仲井真弘多(ひろかず)沖縄県知事は事故が起きれば、全米軍基地の「即時閉鎖撤去」を求めると言っていた。そうなれば安保体制の致命傷になる。

政府は一貫して、日米安保条約上、配備は拒否できないと説明してきた。問題がこじれると同盟がゆらぐといい、対日攻勢を強める中国を利することになるとの声も聞かれた。

もちろん、日米安保体制は日本の安全に欠かせないし、日米同盟にヒビが入るのは望ましいことではない。

だが、すでに沖縄では、問題はオスプレイの安全性という次元を超え、日米両政府への強烈な不信となって広がっている。

これをくいとめるには、普天間返還の実現でこたえるしかない。日米両政府は、原点に戻って検討を急ぐべきだ。

毎日新聞 2012年09月20日

オスプレイ安全宣言 不安拭えぬ見切り発車

政府は、米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイについて「安全宣言」を出した。一時駐機している米軍岩国基地(山口県)で近く試験飛行を行い、10月に沖縄の米軍普天間飛行場に配備する計画だ。

4月にモロッコで、6月には米フロリダ州で墜落事故を起こしたオスプレイの配備には、安全性について沖縄などで懸念が強い。住民の不安を拭えないままの見切り発車で、極めて残念な決定である。

政府は宣言で、二つの事故は「人的要因によるところが大きい」との米軍の調査結果を追認し、「機体自体に問題があるわけではないことが確認された」と述べている。

一方、安全性向上のため、日米合同委員会で運用ルールを決めた。両事故が垂直離着陸モードから水平飛行モードへの転換時に起きたことから、垂直離着陸モードの飛行を米軍施設・区域内に限り、転換モードの飛行時間をできるだけ短くするという。また、基地への進入・出発経路は人口密集地を避け、低空飛行訓練では高度約150メートル以上で飛行することとした。宣言は、これによって「運用に関しても最大限の安全性を確保できる」としている。

しかし、これらの対策で住民の不安が解消できるとは到底思えない。普天間は宜野湾市の中心部にある。住宅に囲まれ、近くには公共施設も多い。宣言は、飛行経路について「可能な限り学校や病院を含む人口密集地域上空を避けるよう設定」し、「可能な限り海上を飛行する」としたが、普天間飛行場では、住宅密集地の上空を飛ばざるを得ない。

周辺住民の危険性除去こそ普天間移設の出発点だった。そこにオスプレイを配備する計画に、県民大会で10万1000人(主催者発表)が反対の声を上げたのは当然である。

墜落事故後も、海兵隊のオスプレイは、7月と9月に米ノースカロライナ州で緊急着陸するトラブルを起こしている。宣言はオスプレイ配備による「抑止力」の向上を強調しているが、事故におびえながら生活する普天間周辺住民の苦痛と引き換えにすることはできない。

宣言について福田良彦岩国市長は森本敏防衛相に「認められないという気持ちは変わらない」と不満を表明した。沖縄県の仲井真弘多知事も記者団に「基地周辺の県民に、落ちてくるかもしれないものを抱えておけという論理は成り立たない」と語った。

宣言は「(オスプレイの)事故率や件数は高い数字でない」と言う。しかし、普天間周辺では小さなトラブルも人命に関わる事故につながりかねない。そんなことになれば日米安保体制を揺るがす事態になることを、日米両政府は自覚すべきだ。

読売新聞 2012年09月20日

オスプレイ配備 抑止力と安全性の両立を図れ

在日米軍の抑止力の強化と訓練の安全性を両立させることが肝要だ。

政府は、米軍の新型輸送機MV22オスプレイについて、「安全性は十分に確認された」と結論づける安全宣言を発表し、国内飛行を容認した。

米軍岩国基地に一時駐機中のオスプレイ12機は、週内にも試験飛行を行った後、沖縄県の普天間飛行場に配備される。10月中旬に本格運用を開始する予定だ。

安全宣言は、4月のモロッコと6月の米フロリダ州の墜落事故に関する日本独自の原因分析に加えて、日米合同委員会で具体的な安全確保策に合意したことを踏まえたものだ。日本側として安全策を追求した成果と評価できる。

日米合意は、低空飛行を地上150メートル以上に限るほか、事故が起きた、垂直飛行から水平飛行に移行する「転換モード」を最小限にすることなどを盛り込んだ。

米軍は当初、部隊運用の制限に反対し、日米協議は難航した。だが、日本の国内事情に配慮して譲歩し、政治決着したものだ。米軍が今回の合意を順守し、安全性の確保に努めるよう求めたい。

沖縄、山口両県の関係自治体は政府の安全宣言にもかかわらず、配備反対の姿勢を変えていない。配備に地元の同意は不要とはいえ、安定した運用に向けて、政府には、地元への説明を尽くし、理解を広げる努力が欠かせない。

そもそもオスプレイが極めて危険な航空機であるかのような見方は、誤解に基づく部分が多い。

無論、航空機である以上、事故や故障は起こり得るが、最新の安全対策を講じており、老朽化したCH46輸送ヘリなど米軍の他の航空機より危ない、といった議論は合理的ではない。

見過ごしてならないのは、オスプレイの優れた機能による在日米軍の抑止力の強化である。

CH46より最大速力は2倍、搭載能力は3倍、行動半径は4倍となり、緊急時の海兵隊の機動展開・即応力が大幅に向上する。

尖閣諸島をめぐる中国との軋轢(あつれき)が高まり、今後も中長期的に続く恐れがある中、日米の防衛協力を通じて、南西諸島の離島防衛や北東アジアの安定に貢献しよう。

オスプレイの訓練は、沖縄だけでなく、本土の米軍・自衛隊施設でも行われる予定だ。航続距離が長く、空中給油もできるため、訓練の本土移転が可能になる。

沖縄の基地負担の一部を本土が受け入れるとともに、日米連携を強める観点から推進すべきだ。

産経新聞 2012年09月24日

オスプレイ 本格運用急ぎ対中抑止を

米海兵隊の新型輸送機MV22オスプレイに関する日本政府の安全宣言を受け、米軍岩国基地で第1陣12機の試験飛行が始まった。調整を終えた順に沖縄県の普天間飛行場へ配備され、来月中旬にも本格運用に入る。

当初計画よりも遅れたのは残念だが、運用準備が整ったことを評価したい。オスプレイは海兵隊の展開能力を大幅に強化し、日米同盟の抑止力を高める上でも不可欠だ。

尖閣諸島奪取を狙う中国の攻勢などで日本の安保環境が急速に悪化する中で、その導入は一刻の猶予もならない。野田佳彦政権は安全確保に関する日米合意を踏まえつつ、早期運用開始へ全力を投じてもらいたい。

オスプレイは現行のCH46ヘリと比べて速度、積載量、行動半径が2~4倍に強化される。

とりわけCH46の行動半径140キロに対し、オスプレイは600キロある。普天間(沖縄本島)から約420キロ離れた尖閣諸島の有事に即応できるなど、軍事・戦略上のメリットは極めて大きい。

森本敏防衛相が「米海兵隊の抑止機能が格段に向上し、日本の安全保障にかかわる大切な措置だ」(21日)と述べたように、中国の強引な海洋進出や尖閣への攻勢を牽制(けんせい)・抑止し、朝鮮半島の緊急事態に備える上で欠かせない意義があることを銘記すべきだ。

安全性に関する地元の懸念は完全に払拭できていないものの、日米の運用合意では低空飛行訓練の最低高度を150メートル以上とし、市街地の安全や騒音などにも配慮することで米側も歩み寄った。

国内の反対論には頭から「オスプレイは危険」と決めつけ、日本の平和と安全を守る必要性に聞く耳を持たない姿勢もみられる。そうした一部の声に流されたり、ひるむようでは、国民の生命と安全、領土・主権は守れない。

今後はこうした運用ルールを徹底しつつ、体験搭乗なども活用して国民をいかに説得していくかが問われる。森本氏や野田首相はその先頭に立ち、オスプレイ導入の意義や必要性を積極的にアピールしてもらいたい。

同時に、普天間移設を中心に遅れている在日米軍再編を加速させる作業も忘れてはならない。地元の基地負担を軽減し、日米の抑止力を強化することが米軍再編の原点だ。オスプレイ配備をその重要なきっかけとしていきたい。

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