日本の首相として初めて北朝鮮を訪れた小泉首相が、金正日総書記と日朝平壌宣言に署名してから17日で10年となる。
この間、拉致問題は解決できず、北朝鮮の核・ミサイルの脅威は増大した。
政府は、金正恩第1書記との間で原点の平壌宣言の有効性を確認し、政府間交渉を軌道に乗せる必要がある。
日朝首脳会談で金総書記は、国家が関与した日本人拉致を初めて認め、謝罪した。宣言は、北朝鮮が「日本国民の生命と安全に関わる懸案問題」を再び起こさぬよう適切な措置をとると明記した。
約1か月後、曽我ひとみさん、蓮池薫さんら拉致被害者5人が帰国、2004年5月の小泉首相再訪朝を機に、さらに被害者の家族が帰国するなど前進はあった。
だが、全容解明にはほど遠い。北朝鮮は08年の協議で拉致問題の再調査を表明しながら、一方的に反古にし、今日に至っている。
誠実に対応しようとしない北朝鮮の態度は極めて遺憾である。
金正恩体制下の先月末、4年ぶりの日朝政府間協議では、拉致問題を念頭に「双方が関心を持つ事項」について協議することで一致した。北朝鮮に変化の兆しが出てきたようにも見える。
北朝鮮が死亡したと主張する横田めぐみさんらの消息に関して、松原拉致問題相は「多くの生存情報が様々な接触から寄せられていることは事実だ」と述べた。
政府は被害者全員の早期帰国が実現するよう、戦略を立て直して交渉に臨んでもらいたい。
平壌宣言は、日朝国交正常化に向けて、核問題解決のため「国際的合意の順守」を確認し、核・ミサイルなど安全保障でも関係国間の対話の促進を明記した。宣言を受けて、北朝鮮と日米中韓露による6か国協議が発足した。
北朝鮮は、朝鮮半島の非核化を目指す6か国協議の開始後、国際社会の度重なる警告を無視して弾道ミサイル発射や核実験を強行した。今や「核保有国」を自称する。6か国協議も行き詰まった。
北朝鮮が、国連の経済制裁下に置かれ、日本独自の制裁対象にもなったのは当然である。
今後、北朝鮮が経済を再建するためには、中国の支援に依存するだけではなく、国際社会との関係を改善することが必要だろう。
日本との国交正常化は、拉致や核・ミサイル問題の包括的な解決が前提だ。それを金第1書記に認識させていかねばならない。
そのためにも、日本政治の安定が欠かせない。
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