自民党総裁選 「野党ぼけ」の克服が急務だ

朝日新聞 2012年09月14日

自民党総裁選 国担う覚悟が聞きたい

自民党総裁選がきょう、告示される。5氏が立候補を予定しており、混戦になりそうだ。

民主党政権は苦境にあり、遠からず総選挙もある。いま総裁になれば首相に手が届く。そんな思いからの乱立だろう。

であればなおさら、総裁選を浮ついた「選挙の顔」選びにしてはならない。

野田政権のどこに問題があり、自分なら日本をどうするのか。聞きたいのは、一国をになう覚悟とビジョンである。

これまでの各立候補予定者の記者会見や公約をみる限り、満足な答えは聞こえてこない。

たとえば、社会保障と税の一体改革だ。

いずれも、民主、自民、公明の3党合意を守ると語っているのはいい。だが、持続可能な年金や高齢者医療制度など、結論の出ていない課題にどんな答えを出すのか。

それをなおざりにして、「国土強靱(きょうじん)化」に名を借りた公共事業拡充に熱を入れている場合ではない。

原発・エネルギー政策もあいまいだ。

5氏は、再生可能エネルギーを広げ、状況を見極めて原発の扱いを判断する、などと言っている。これでは「脱原発」の世論が静まるのを待って、原発の維持をねらっているのかと受け取られても仕方がない。逃げずに明確に考えを示すべきだ。

気がかりなのは、安全保障政策だ。5氏とも集団的自衛権の行使を容認すべきだと主張している。党の方針に沿ったものだが、平和憲法に基づく安保政策の転換につながる問題だ。

領土や歴史問題をめぐって思慮に欠けた発言も目につく。

石破前政調会長や石原幹事長、安倍元首相は、国有化した尖閣諸島に灯台や避難港などの施設を造り、実効支配を強めるという。

安倍氏は、慰安婦問題で「おわびと反省」を表明した河野官房長官談話を見直す考えも示している。

尖閣や竹島問題で、日本と中国、韓国との緊張が高まっている。それをさらにあおって、近隣国との安定した関係をどう築くというのか。

日本の社会と経済の立て直しは容易ではない。だからといって、ナショナリズムに訴えて国民の目をそらしたり、それで民主党との違いを際だたせたりしようというなら願い下げだ。

いま日本の指導者に必要なのは、そんな勇ましいだけの発言ではない。山積する課題に真摯(しんし)に向き合い、粘り強く解決に取り組むことである。

毎日新聞 2012年09月16日

自民「外交」論戦 骨太で体系的な方針を

自民党総裁選に立候補した5候補の論戦が始まった。記者会見やテレビで政見を披露し、15日には日本記者クラブ主催の討論会に出席した。

外交・安全保障政策では、保守色を強めているのが特徴で、対中強硬姿勢を打ち出す候補もいる。

日本政府の尖閣諸島国有化措置に対し、中国の海洋監視船6隻が尖閣諸島周辺の領海に侵入し、中国政府は人的交流の停止・延期を発表、高官が日本製品の不買運動を容認するなど対抗措置を強化させている。反日デモは拡大して一部暴徒化し、被害も出ている。中国側の反応は過剰であり、明らかに冷静さを欠く。

尖閣問題への対応について、5候補とも「実効支配を強める」ことで共通している。ただし、その内容には違いもある。最も強硬姿勢の安倍晋三氏は船舶の避難施設建設などを主張し、石破茂氏は法整備や日米共同訓練による抑止力の強化に言及した。林芳正氏は国有化を支持し、石原伸晃氏は国有化の「メッセージを事前に中国側に伝えていなかった」と政府を批判、町村信孝氏は新たな施設建設に慎重姿勢だった。

中長期的な実効支配強化は当然だが、目的は中国との緊張を高めることではない。内容とタイミングは熟慮する必要がある。自民党政権時代以来の戦略的互恵関係を強める対中外交推進の中で問題を解決する骨太の方針を示してもらいたい。

対米関係で5人に共通しているのは、集団的自衛権の行使容認の主張である。自民党は、4月に発表した憲法改正草案で「自衛権の発動」を明記して集団的自衛権の行使を認め、7月には、集団的自衛権行使を可能とする「国家安全保障基本法案(概要)」を決定した。この法案は、現憲法では集団的自衛権の行使は認められないとするこれまでの解釈を転換し、現憲法下でも同自衛権を行使できるとする内容である。

5候補の考えは、この法案に沿ったものなのだろう。しかし、同法案は集団的自衛権行使について「その国に対する攻撃が我が国に対する攻撃とみなしうるに足る関係性があること」と、条件を規定している。

石破氏は討論会で「米国に向かうミサイルの迎撃」も認められると述べた。この場合、日本への攻撃とみなす「関係性」は何なのか。集団的自衛権行使の限界についても、法案作成の責任者として説明してもらいたい。

次期衆院選で自民党が第1党に躍進する可能性が指摘され、総裁選候補者の言動は大きな注目を集めている。日本の外交力に関する国民の関心は高い。集団的自衛権、対中外交や尖閣をはじめとする領土をめぐる問題、普天間飛行場移設問題など、体系的な外交政策を聞きたい。

読売新聞 2012年09月12日

自民党総裁選 「野党ぼけ」の克服が急務だ

政権を奪還した後に自民党は何をどう実現するのか。日本のかじ取りを目指す以上、見識や政策で競い合うべきだ。

自民党総裁選に、石原幹事長が出馬を表明した。町村信孝元官房長官、石破茂前政調会長が既に表明し、安倍元首相、林芳正政調会長代理も意欲を示す。

次期衆院選の結果次第では、首相になる可能性が高い総裁の選出だ。白熱するのも当然である。

だが、派閥や国会議員間の数合わせの動きばかりが先行しているのはどうしたことか。

谷垣総裁は鳩山、菅両首相を退陣に追い込み、先の参院選で勝利してねじれ国会をもたらした。

野党第1党の党首として民主党に協力し、消費税率の引き上げを柱とする社会保障・税一体改革関連法を成立させたことは画期的だった。最新の読売新聞の世論調査では、次期衆院選の比例選投票先で、自民党は21%でトップだ。

それでも、「選挙の顔」に物足りないと評価され、総裁選出馬断念に追い込まれた。念願の政権復帰に手が届く状況にまで来て、さぞかし無念だっただろう。

背景には、一体改革以外に自民党らしい政策を打ち出せず、支持に広がりを欠いたことがある。

谷垣氏は、党運営を巡って、森元首相や古賀派の古賀誠会長らの不興を買い、外堀を埋められた。消費増税を実現した自民党をも批判する首相問責決議に対し、自民党が賛成することを主導して「自己否定」との批判も浴びた。

総裁選では、自民党の政権構想や政策が改めて問われよう。谷垣氏が目指した「党再生」は、道半ばであることを自覚すべきだ。

石原氏は、谷垣氏の下で進めてきた「政策、路線の実現が使命」と述べた。総裁が代わっても民自公路線による一体改革の実現を忘れてもらっては困る。

自民党は長年、原子力行政を推進してきたのに、「原発ゼロ」の方向を提言した民主党を傍観していいのか。現実的なエネルギー政策を提案してもらいたい。

自民党が、環太平洋経済連携協定(TPP)について「聖域なき関税撤廃を前提にする交渉参加は反対」とするのは無責任だ。自由貿易拡大による成長戦略の観点からも是非を論ずべきだろう。

対中・韓・露外交の立て直しや米海兵隊の新型輸送機オスプレイ配備も差し迫った課題だ。

政権に就いてから考えるのでは遅すぎる。総裁選を通じ、批判するだけで自らは判断しない“野党ぼけ”の克服が急務である。

産経新聞 2012年09月16日

自民党総裁選 見えてきた国家観の違い

自民党総裁選の公開討論会などを通じ、5人の候補者の国家観の違いが次第に見え始めた。

日本をどう立て直すかは歴史認識や、領土・主権への対応と密接に絡んでいる。総裁選は、次期衆院選を経て自民党が政権復帰した場合の首相候補選びでもあるだけに、さらに論戦を深めておくことが極めて重要である。

違いが際立っているのは、慰安婦問題をめぐる「河野官房長官談話」の見直しなどだ。

15日の討論会で、安倍晋三元首相は「米国で日本が韓国人女性を性奴隷にしたとする記念碑が建てられ、河野談話が根拠にされている」と指摘し、証拠がないのに日本軍による慰安婦の強制連行を認めた河野談話に代わる、新たな談話の必要性を強調した。

談話は韓国の不当な要求に根拠を与えている。その構図を断ち切れるかどうかが問われている。

14日の共同記者会見でも取り上げられ、町村信孝元官房長官と石原伸晃幹事長は、河野談話は「当時の一つの知恵」とし、林芳正政調会長代理も「積み重ねを踏まえる」と述べた。石破茂前政調会長は「談話という形が正しいかは別として、真実を探求する努力は当然だ」と語った。国の名誉がかかっていることを認識すべきだ。

首相の靖国神社参拝について、安倍氏は「首相在任中に参拝できなかったのは痛恨の極みだ。そのことから考えていただきたい」と参拝に強い意向を表明した。石破、石原両氏は「天皇陛下のご親拝の実現」の必要性を挙げ首相参拝には言及しなかった。林氏は回答を避け、町村氏は「首相になってから考える」と先送りした。

国のために亡くなった戦死者の霊に、最高指導者として、どう哀悼の意を示すのかをもっと語ってほしい。

尖閣諸島の実効統治についても、積極的に強化すべきだとする立場とそうでない慎重派に二分された。石破氏は「多様な事態に対処する部隊」として海兵隊創設にも言及し、安倍氏は避難港の創設や公務員の常駐などを訴えた。

これに対し、町村氏は「施設をつくれば実効統治が高まったと断定するのは性急だ」と外交努力の必要性を唱えた。政府による尖閣国有化を「虎の尾を踏んだ」と評した石原氏も外交的努力の不足を強調したが、尖閣奪取を強める中国をどうみているのだろうか。

産経新聞 2012年09月14日

自民党総裁選 領土と主権もっと論じよ

14日告示される自民党総裁選への立候補者5人が出そろった。

求められているのは、再び政権を担おうとする野党第一党として、日本をこういう国にするという明確なビジョンの提示だ。国家をどう立て直すかについて、論戦を通じて競い合ってほしい。

「国難の10年」(石破茂前政調会長)、「日本再起」(安倍晋三元首相)など、日本が危機的状況にあるという認識を5氏は示しているが、日本の領土・主権をいかに守るかをめぐってそれぞれの主張に濃淡はある。

積極的に取り上げている石破氏は「国家主権は他国に指一本触れさせてはならない」と公約でうたい、安倍氏は尖閣問題を「未曽有の国難」の要因と位置づけた。

林芳正政調会長代理は「領土問題等に毅然(きぜん)と対応する」とし、町村信孝元官房長官は「尖閣・竹島・北方領土への取り組み強化」を挙げた。

石原伸晃幹事長も「わが国の領土と主権を守る国内法や組織・機関の整備を進める」としたが、民放番組では「中国は(尖閣に)攻めてこない。誰も住んでいないから」とも語った。中国が尖閣奪取の姿勢を強める実態をどうみているのだろうか。

具体的措置として、安倍氏は避難港の創設や領海警備のための自衛隊法改正などを挙げた。石破氏も領海侵犯への対処を訴えた。町村氏は自衛隊や海上保安庁の人員、装備強化を課題とした。

対韓、対中外交では、歴史認識をめぐる政府の対応が相手に不当な要求を許す余地を与えた面がある。慰安婦問題で、証拠がないのに日本軍による強制連行を認めた「河野官房長官談話」などだ。

安倍氏は出馬会見で「強制性があったとの誤解を解くため、新たな談話を出す必要がある」との見解を示した。国家観にかかわる歴史認識を、政権復帰に合わせてどう転換するかが問われる。

5氏はいずれも集団的自衛権の行使容認に言及した。日米同盟の深化に欠かせない政策転換について、政権復帰後に確実に実現することを明確にしておくべきだ。

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)では「聖域なき関税撤廃に反対」などと、野田佳彦政権の対応への批判が多い。新たな自由貿易の枠組み作りから取り残される不利益は放置するのか。さらに踏み込んだ議論が必要だ。

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