谷垣氏不出馬 政権どう担うか知りたい

毎日新聞 2012年09月11日

谷垣氏出馬断念 論戦もせずに撤退とは

何とも唐突で不透明感が漂う不出馬表明だ。自民党総裁選で再選を目指していた谷垣禎一総裁が10日、一転して立候補を断念することになった。候補者が乱立気味の総裁選だが、これで現執行部系候補は石原伸晃幹事長に一本化されるという。

断念した理由について、谷垣氏は「執行部の中から2人出るのは良くない」と語った。だが、谷垣氏は9日も次期衆院選に関し、「この壁は私自身が体当たりしてぶち破っていかなくてはならない」と述べて、出馬に強い意欲を示していたはずだ。それからわずか1日。一体、どんな状況変化があったのか。なぜ、総裁選で論戦することもなく自分が降りるのか。明確な説明はなかった。

紆余(うよ)曲折を経ながらも、消費増税を中心とする税と社会保障の一体改革に関する民主、自民、公明3党合意に谷垣氏が踏み切ったことを私たちはこれまでも高く評価してきた。ところが、こうした政策面での実績は自民党内でほとんど評価されなかったようだ。

確かに谷垣氏は通常国会で衆院解散に追い込めなければ、再選は困難と言われてきた。先の国会の最終盤では消費増税を批判する他野党発案の問責決議に乗って「自己矛盾」に陥り、「谷垣降ろし」のきっかけを自ら作ってしまった面もある。

しかし、突き詰めれば、衆院選を控えて新しい「選挙の顔」を求める党内の声に、谷垣氏は抗し切れなかったということなのだろう。政策や実績より優先されるのは人気。近く国政政党を結成する大阪維新の会の動向におびえる姿がここにある。

一方、森喜朗元首相や谷垣氏の出身派閥である古賀派の古賀誠会長らが谷垣氏不支持を表明したことが、出馬断念の契機となった点も見逃せない。前回衆院選で衆院議員が激減し、「脱派閥」や「世代交代」が叫ばれながら、依然、長老たちの意向が党内を大きく動かしている現状も見せつけたといっていい。

自民党の支持率が伸び悩んでいるのは、谷垣氏に人気がなかったからだけなのか。なぜ、野党に転落したのか。自民党はそれを十分反省してきたのか。党の体質は本当に変わったのか。所属議員はもう一度考え直した方がいい。

これまでも注文してきたように、民主党と自民党のダブル党首選は、先の3党合意をきちんと軌道に乗せるための選挙にしなくてはならないと私たちは考える。

谷垣氏の不出馬により、総裁選の告示前に合意の当事者の一人が早くも退場することになった。谷垣氏は不出馬会見で「執行部の路線が明確にならなくなるのを心配している」と語ったが、路線変更につながるような総裁選になっては困る。

産経新聞 2012年09月11日

谷垣氏不出馬 政権どう担うか知りたい

自民党の谷垣禎一総裁が石原伸晃幹事長との一本化調整の不調などを理由に、総裁選への再選出馬を断念した。

野党の総裁を引き受けてから3年の間、参院選など各種選挙で勝利し、2人の首相を辞任に追い込む実績を挙げた。

にもかかわらず、日本が抱える内外の懸案を自民党ならどう解決するか、という国民の期待と疑問に谷垣氏は答えてきたのだろうか。

民主党政権への批判の受け皿だけでは自民党支持は広がらない。民主党に代わり日本をこうするという具体案が求められている。

この課題は、政権復帰を目指す今後の戦いの先頭に誰が立つとしても問われる。総裁選の重要な論点である。

谷垣氏は、野田佳彦首相や公明党の山口那津男代表と社会保障・税一体改革関連法を成立させることで合意し、民主党内の混乱から3党合意が瓦解(がかい)しかけたときにも踏みとどまった。

不出馬会見でも「執行部の路線が明確にならなくなることを心配している」と3党合意の重視を強調した。日本の危機克服のため、与野党の枠組みを維持しようとしたことは評価できる。

だが、早期衆院解散を要求したのに対し、「近いうちに」との発言しか首相から引き出せなかったとして、党内の風当たりは強まった。通常国会終盤では、3党による消費税増税を批判する他の野党が出した問責決議に賛成し、自己矛盾に陥る混乱を露呈した。

主要政策では、エネルギー政策をめぐって当面の原発再稼働をどう進めるかの具体論を示していない。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への交渉参加についても極めて慎重な態度のままだ。

民主党の出方を待ち、党内の意見を集約しようとしないところに限界があったのではないか。

谷垣氏の再選出馬に対し、古賀派の古賀誠会長が「次の総裁は選挙の顔だ」と不支持を伝えた。再選を支持していた森喜朗元首相も不支持に転じたことなどで、先週の段階で困難になっていた。

ベテラン、長老組には、谷垣氏や他の候補者よりも「意思疎通を図りやすい」として石原氏を推す動きもある。だが、政権を奪回して何をするかよりも、派閥や世代の利益を優先させる発想がいまだにあるなら残念だ。生まれ変わった自民党とは到底いえまい。

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