民主代表選始まる 党の危機自覚し議論を

朝日新聞 2012年09月11日

民主党代表選 自画像をさぐる場に

民主党代表選が告示された。

野田首相に、赤松広隆元農水相、原口一博元総務相、鹿野道彦前農水相の3氏が挑む。

首相の優位は動かないとみられる。それでも候補者乱立となったのは、低迷する党の現状への危機感の表れだろう。

この代表選を、「民主党とは何か」を問い直し、信頼を取り戻す第1歩とすべきだ。

近年の代表選の対立軸は、小沢一郎元代表だった。もっぱら「親小沢か反小沢か」の不毛な対立が繰り返された。

その小沢氏が離党した後の今回こそ、政策本位の論戦の場としなければならない。

まず消費増税をふくむ、社会保障と税の一体改革だ。

民主、自民、公明の3党合意で進めた一体改革に、異を唱えるのは原口氏だけ。赤松、鹿野両氏は党分裂を招いた首相の責任を追及しつつも、3党合意は継承する、という立場だ。

小沢氏ら70人以上の離党者を出し、党内もようやく収斂(しゅうれん)してきたといえよう。

「脱原発」の方向性では、4氏はおおむね一致している。論戦を通じ、具体化に向けて党内の意思統一をしてほしい。

物足りないのは、4氏の口から明確な国家像、社会像が聞かれないことだ。

民主党はいま深刻な「自己喪失」の状態にある。

09年総選挙で高福祉路線にもとづく公約を掲げたが、政権に就くや財源の壁にぶつかって次々と取り下げた。

一体改革法の成立は、野田政権の最大の成果だが、今度は逆に自民党との違いが見えなくなってしまった。党内から「自民党野田派だ」といった批判が起きるのも、「何をめざす党なのか」がわからなくなった悩みの表れといっていい。

自画像を描き直すのは簡単ではあるまい。だが、一体改革と原発問題に、ひとつのヒントがあるのではないか。

重すぎる借金も、原発による禍根も、将来に残してはならない。選挙権を持たない将来世代こそ弱者であり、そこに責任を持つ政治のありようである。

この代表選を機に、そんな政策体系をつくりあげることはできないか。

一方、自民党総裁選では谷垣禎一総裁が立候補を断念し、中堅、ベテラン議員が次々と名乗りをあげている。

民主党の低迷で救われてはいるが、将来ビジョンを描けない点では自民党も同じだ。

有権者が見ているのは、新しい両党首の「顔」だけではない。それを忘れてはならない。

毎日新聞 2012年09月11日

民主代表選始まる 党の危機自覚し議論を

民主党代表選が始まり、4候補が名乗りをあげた。野田佳彦首相に対抗する勢力の候補一本化が不発に終わったため、首相の代表再選は確実な情勢だ。

政権交代以来2度も首相が交代し、党分裂の混乱まで演じた民主党にまず求められるのは3年にわたる政権運営の真剣な総括である。税と社会保障の一体改革など諸課題について意思統一を図り、マニフェストをめぐる混乱にけじめをつける場としなければならない。

首相の優位が固まったのは、出馬すれば激戦必至とみられた細野豪志環境相が立候補を見送ったためだ。首相と政策的に大差ない細野氏の擁立論は「選挙の顔」だけが先走り、そもそも大義名分を欠いていた。

それでも41歳と若い細野氏が勝利しかねない、との見方がいったんは広がったことを首相は重く受け止める必要がある。

政権交代当時45%もあった民主党の政党支持率は失望感から今や10%にまで落ち込んでいる。混乱の帰結と言えばそれまでだが、党の崩壊を阻止したいのであれば「なぜ民主党が必要か」を改めて国民に説明できなければなるまい。

重要政策で党がまとまれない状況を脱するためには徹底論議が避けられない。とりわけ消費増税など3党合意をどうつなぎ、具体化するかが問われる。首相は4氏合同の記者会見で民自公3党合意を引き続き尊重する考えを表明、これに対し原口一博元総務相は首相問責決議で今後の協議の土台は崩れたと主張した。

また、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への参加には首相を除く3候補が慎重姿勢を示した。いずれも党内の「まだら模様」を放置していい問題ではあるまい。

脱原発依存の道筋をどう描くかも大きな論点だ。首相は「2030年代原発ゼロ」を目標とした民主党提言を踏まえ政府のエネルギー政策を取りまとめる考えを示した。他の3候補はさらに踏み込んだ対応を求めたが、具体的な進め方を突っ込んで議論すべきだ。

ほころんだ09年衆院選マニフェストの見直しは当然であり、財源を無視したような無責任な議論はもはや許されない。4氏の会見では設立予定の「日本維新の会」との連携におおむね慎重なトーンだった。政権の枠組みをどう考えていくかの議論も避けるべきであるまい。

これまで民主党の代表選は小沢一郎氏を軸とする権力闘争や多数派工作に関心が向けられがちだった。たとえ構図は無風であっても、党の外では世論の冷たい風が吹きすさんでいる。党の危機を直視した政策論争を求めたい。

読売新聞 2012年09月13日

民主代表選討論 「決める政治」の一歩とせよ

活発に議論した後は、期限内に結論を出す。その決定は党全体で守る。民主党は今回の代表選を機に、そうした政治文化を根付かせるべきだ。

民主党代表選の候補4人による公開討論会が、日本記者クラブの主催で行われた。

社会保障と税の一体改革をめぐる民主党の分裂について、赤松広隆元農相や原口一博元総務相は、一体改革関連法の党の了承手続きなどに問題があったと主張し、野田首相の責任を追及した。

首相は「責任は痛切に感じている」としつつ、「(一体改革の)判断に間違いがあったとは思わない。猛省しながら党を再生しなければいけない」と強調した。

持続可能な社会保障制度を実現する一体改革は、待ったなしだ。党執行部は、党内論議にも十分な時間を費やしたし、大きな瑕疵(かし)はなかったと言える。

むしろ問題は、困難な政策決定を安易に先送りしがちな民主党の体質にある。政権党がこれを放置していては、「決める政治」の実現はおぼつかない。

地域政党・大阪維新の会の人気が高いことに関連し、野田首相は、反省を込めて、「既成政党が結論を出すべき時に出す」ことの必要性を指摘した。その通りだ。

民主党は代表選を通じて、体質改善を図る必要がある。

今後の試金石は、環太平洋経済連携協定(TPP)への参加問題だ。首相は「推進」の立場だが、原口氏は「参加しない」、赤松氏と鹿野道彦前農相も「慎重」という対立の構図がある。

首相も討論会では、「関係国との協議が熟さないと、(日本が対応を)決めることはできない」と語るにとどまった。

しかし、交渉参加が遅れれば、新たな貿易・投資の国際ルールに日本の主張を反映できる余地が一層狭まるのは確実だ。

国内農業に与える影響などを含め、代表選で、TPPの参加論議を深めることが重要だ。

消費税率引き上げに伴う低所得者対策について、赤松氏は、「与野党合意を得やすい」として、食料品などの軽減税率の導入を主張した。鹿野氏も同調した。公明党が軽減税率を支持していることを踏まえたものだろう。

野田首相は、従来通り、「給付付き税額控除」を対策の柱とすべきだとの考えを示した。

軽減税率は、国民に分かりやすく、欧州各国も採用しており、有力な対策だ。代表選での、より踏み込んだ論争を期待したい。

産経新聞 2012年09月11日

民主党代表選 原発とTPP明確にせよ

民主党代表選が告示された。21日に選ばれる新代表には「決められない政治」からの脱却に向けた指導力を求めたい。

民主党はこれまで党内融和を最優先し、主要政策を曖昧にしてきた。

一度決めた政策が、その後の党内の異論によって進まなかったことも少なくない。国会で既に成立した消費税増税について、いまさら反対を持ち出すなどは政権党としてあまりに無責任だ。

今回の代表選でも、党の再分裂を懸念する声が強い。だが、国益や国民の利益を守るために政権党として何をすべきかが問われていることを忘れてはならない。

野田佳彦首相に加えて、赤松広隆元農林水産相、原口一博元総務相、鹿野道彦前農水相が立候補したが、今回の代表選を、こうした党体質を転換する機会とすべきであろう。

そのためにも、各候補は非現実的なマニフェスト(政権公約)に固執してきた3年を反省するとともに、曖昧にしてきた政策に明確な結論を出す必要がある。

その代表的な例が、原発政策や環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)だ。

4候補は10日の出馬会見などで、全員が「原発ゼロ」を掲げた。しかし、電気料金の上昇や電力不足など国民生活や産業への影響をどう回避するかについては、どの候補も明確でなく、とても現実的な選択とはいえない。

政権党に求められるのは、遠い将来の「理想」を語ることではなく、「今日、明日のエネルギー」をどう確保するかだ。各候補は、代替エネルギーが本当に確保できるのか、原発技術をいかに維持するかなど、具体的で実効ある方策を明示する責任がある。

TPPについて野田政権は新たな自由貿易の枠組みに参加する意思を明確にしてこなかったが、首相は国益確保を前提に「TPP推進」を明示した。反対・慎重を唱えた3候補との違いは示されたものの、さらに一歩踏み込み、「再選されたら交渉参加を表明する」と明言してもらいたい。

社会保障政策についても、3党合意をどう実現していくのか明確にすべきだ。民主党はいまだに莫大(ばくだい)な税財源を要する「最低保障年金」にこだわりをみせるが、膨張する年金、医療、介護費用をどう抑制させるのかとの問いから逃げてはならない。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/1166/