WBC出場 選手会の決定を歓迎したい

毎日新聞 2012年09月09日

WBC参加問題 「不平等条約」の改正を

振り上げた拳をやむなく下ろしたというところではないか。日本の3連覇がかかる来年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)への不参加を決議していた労組日本プロ野球選手会(新井貴浩会長)が一転、参加を決断した。

WBCを主催するのは大リーグ機構(MLB)と大リーグ選手会が共同出資した会社で、参加国・地域の旅費や滞在費などを負担する代わりにスポンサー権など収入のすべてを握る。収益の配分もMLB側が66%を占め、日本の取り分は優勝しても13%というアンバランスな構造だ。

選手会は日本企業が大半を占めるスポンサー料やグッズなどの商品化権が日本野球機構(NPB)に譲渡されることを求め、今年7月の臨時大会で不参加を決議した。だが、その後の交渉で、WBCのロゴを使用しなければ大会期間中でも日本代表のスポンサー権が認められたことや、NPBがその権利を活用するために事業担当の専門部局設置を決めたことなどを評価して撤回した。

それでもMLB偏重という大会の構造自体は何ら変わらない。不参加決議を多くのファンが支持しただけに撤回は「腰砕け」と映るかもしれない。大会日程の発表が迫る中、WBCに出場して世界に実力をアピールしたい選手たち、過去2回の大会で味わった感動をもう一度というファンの気持ちを考慮した末の苦渋の決断だったといえる。

交渉の過程では、球界全体の利益を追求すべき最高責任者、加藤良三コミッショナーのリーダーとしての適格性への疑問が膨らんだ。自ら直接交渉に乗り出さないばかりか、8月末にはWBC参加が東日本大震災からの復興支援につながるという趣旨の発言をして選手会の不信感を増幅させた。根拠が不明であり、翻意させるためとはいえ、震災復興を持ち出すのはいかがなものか。

駐米大使時代に大リーグの始球式を務めるなど野球通としての経歴が買われてのコミッショナー就任だったが、巨人をめぐる昨年来の一連の騒動に対しても存在感はなく、職責を全うしているとはいいがたい。

日本を代表して米国にはっきりモノを申せなかったことが、WBCの日本開催分の興行権を巨人の親会社である読売新聞グループが持っていることとは無関係だと思いたい。

選手会が拳を振り上げた意味は大いにあった。WBCのいびつな収支構造を世間に広く知らしめ、独自のビジネス構築に積極的とはいえなかったNPBの背中を押した。新井会長は「これからがスタート」と言った。「平成の不平等条約」の改正に向けNPBと選手会は共同歩調を取って粘り強く交渉を進めてほしい。

読売新聞 2012年09月06日

WBC出場 選手会の決定を歓迎したい

世界一をかけた舞台で戦う「侍ジャパン」を三たび応援できる。

日本プロ野球選手会が来年3月の「第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」への不参加決議を撤回し、大会に出場することを表明した。

選手会の決定を歓迎したい。

2006年、09年のWBCで、日本が連覇した際、国中がわき返った。あの白熱した戦いを楽しめないとなれば、大勢の野球ファンが落胆しただろう。

選手会の新井貴浩会長(阪神)は「ファンも日本代表の試合を見たいと思うし、選手も代表のユニホームを着て試合をしたいという思いがあった」と語った。

野球が五輪の競技から除外されている現在、日の丸を背負って戦える貴重な世界大会である。

ファンも選手も喜ぶ結果となったのは、朗報と言える。

WBCは、米国の大リーグ機構と大リーグ選手会の共同出資会社が主催する。今回は、日本を含め、28の国・地域から代表チームが出場する。

日本の選手会は、代表チームのユニホームやヘルメットに企業名を掲示するスポンサー権について、日本側に認められていないのは問題だと主張してきた。

日本野球機構(NPB)は、主催者側と交渉を重ね、大会のロゴを使用しなければ、WBC期間中でもスポンサー権が日本側にあることを確認した。これが、選手会に方針転換を促した。

WBCの主催者側にとって、連覇を成し遂げている日本チームは、大会を盛り上げる上で、欠かせない存在と言えよう。

日本チームが不参加となっていたら、日米の野球界に亀裂を残したに違いない。

日本側から見て、運営方法に問題があるとしても、大会に参加する中で発言力を強め、改善を求めていくのが賢明だろう。

参加国が協力して、大会を成長させ、野球の国際化を一層、進めていく必要がある。五輪競技に復帰する上でも、野球のすそ野を広げ、各国のプレーのレベルを底上げしていくことが大切だ。

今後、日本代表のチーム編成が本格化する。どのような顔ぶれになるのか、楽しみだ。

シーズン終盤に向け、選手にとっては、代表入りという新たな目標ができた。国内でプレーする選手はもちろん、大リーグ球団に所属する日本人選手も、ファンを魅了するプレーで、存在感を大いにアピールしてもらいたい。

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