2期連続の成長 安心と希望生む政策を

朝日新聞 2009年11月17日

GDP4.8%成長 補正で民需の奮起促せ

民間の予測を大きく上回った。7~9月期の国内総生産(GDP)の実質成長率は年率換算で4.8%。前期に続くプラス成長だった。

生活実感に近い名目GDPは年率マイナス0.3%で、水準自体も景気回復と呼ぶにはまだ遠い現状だが、元気づけられる要素が増えた。その象徴は、縮小続きだった設備投資が拡大に転じたことだ。おかげで内需が成長に寄与するようになった。いずれも6四半期ぶりである。

エコポイントなど、これまでの政府の景気対策で個人消費が刺激された。中国や北米などへの輸出も復調の傾向にある。これを受けて、環境関連の新設備の導入が自動車や電機といった主力産業で目立つようになった。

世界的な政策協調と日本の景気対策が、ようやく民需に波及するサイクルが見えてきたといえる。

半面、気になるのはデフレ傾向だ。全般的な物価下落が経済を縮小させる圧力として働き続けている。それが雇用に影を落とし、失業率が高止まりしたままの厳しい状態が続く。冬のボーナスは大幅カットが見込まれ、個人消費の動向も楽観できない。

景気を刺激する諸施策の効果が切れれば、景気全体が再び下降し、「二番底」に陥る危険がある。この意味では、政府による景気刺激策の役割はなお終わっていない。

だが、「生活第一」を掲げる鳩山政権は、自公政権のような「ばらまき」型の刺激策を採るべきではない。とくに、場当たり的な公共事業で需要を継ぎ足すような政策ではいけない。

社会的安全網の強化で雇用や消費を支えると同時に、回復の動きを見せている設備投資などの民需を喚起することが必要な局面である。

民間主導の自律的な景気拡大につなげていくための呼び水として有効な政策を、重点的に打ち出すことが求められているのだ。

この意味で、鳩山政権は内需を前向きな拡大に導くメッセージ性を込めて、2次補正と来年度の本予算の姿を早く示すことが肝心だ。

鳩山由紀夫首相が「コンクリートから人へ」と目標を語ったように、ここでも「人間」重視の姿勢を生かしてほしい。具体的には、新たな産業基盤として期待される医療・福祉や環境分野への民間の投資を促すような政策を打つことだ。

これらの分野は、雇用の受け皿としても大きな可能性を秘めているが、なおビジネスが育っていない。財政・金融政策による支援や規制改革をテコに、雇用創出が進んでいくと、国民が期待できるようにしたい。

2次補正でその流れを作り、来年度予算で加速させることが最大の景気対策になるといっても過言ではない。

毎日新聞 2009年11月17日

2期連続の成長 安心と希望生む政策を

内閣府が16日発表した今年7~9月期の国内総生産(GDP)の速報値は、実質成長率が年率換算の前期比で4・8%と2期連続のプラス成長になった。「100年に1度の経済混乱」といわれた昨秋のリーマン・ショックが、予想外に短期で大きな痛手をもたらさずに収束しつつあるといえる。前政権時代からの政策の総動員で、経済を底割れさせなかったことをひとまず評価したい。

今回発表の成長率は、エコノミストが予想した平均値の2%台半ばよりも高かった。外需の輸出が引き続き好調で、内需の個人消費と設備投資が、自動車や家電製品の買い替えを促すエコポイント制度などの効果で予想外によかったためだ。

しかし、景気刺激策の効果はピークを過ぎた。株価も最近は一時の勢いがない。失業率は高止まりだし、大企業の冬のボーナスは前年実績比で過去最大の落ち込みになる見通しだ。だれもが「先行きは不透明」と感じ、「ここから先が心配だ」と思っている。

今後は成長が鈍り、四半期単位でのマイナス成長も覚悟しなければならないかもしれない。だからといって、目先の景気刺激策を繰り返すのはきりがない。これから政府が検討する2次補正予算案では、中長期の観点で家計に元気を与える失業対策や生活支援策を柱とした政策に知恵と限られた財源を投入することが大事だ。

年末にかけて本格化する来年度予算案の編成や来年度の税制改革論議も、思いのほか重要だ。日本の経済に必要なのは、技術革新や生産性の向上ばかりでなく、国民の間に将来への希望や安心感が広がっていくことである。それが家計支出となって経済の歯車を動かす。

予算案作りを通じ、税金を国民の暮らしにきちんと生かそうとしているか。税制改革で、所得の再配分や税の公平にどれだけ気を配っているか。国民は新政権の本気度を測ろうとしている。日々一喜一憂する株式などの市場関係者も、意外にそうした基本姿勢を注目している。政策と政策運営に対して国民の信頼感と共感が得られれば、経済対策として非常に大きな意味を持つ。今、心配されるデフレも不安心理の増幅によって生み出されるものだから、デフレ対策にも有効である。

その意味で、直嶋正行経済産業相が発表前の成長率を業界との会合で漏らしたのは、信頼を大きく損なってしまった。「解禁時間を知らなかった」とは経済閣僚としてお粗末である。ミスで片づけられず、資質を問われても仕方ない。経産相は猛省しなければいけないし、政府としても軽く扱うべきことではない。

産経新聞 2009年11月18日

景気対策 二番底回避に全力挙げよ

7~9月期の国内総生産(GDP)の実質成長率が年率4・8%増と2四半期連続でプラス成長となり、日本経済が統計上は立ち直りつつあることを示した。

だが、プラス成長は中国などへの輸出回復とエコカー減税、エコポイント制度など景気刺激策の下支え効果が大きい。景気回復の実感とは程遠いというのが大方の見方ではないか。

10~12月期以降に再びマイナス成長に転じる「二番底」の懸念が消えない。政府には日銀との緊密な連携の下で自律的な景気拡大につなげる対策が求められる。

回復の実感が薄いのはプラスに転じてもGDPの水準がまだ低いからだ。ピーク時と比べて、輸出は約7割、生産は約8割にすぎない。失業率も高止まりし、冬のボーナス大幅減などもあって、消費の息切れが懸念される。

政府は景気失速を防ぐために、経済対策の指針をまとめた。2次補正予算には麻生前政権時の1次補正予算を見直して捻出(ねんしゅつ)した2・9兆円のうち2・7兆円を充てる。来年度予算と一体の「15カ月予算」とする方向だ。

「コンクリートから人へ」を掲げる鳩山政権は雇用、環境、子供を3本柱に掲げる。だが、どれほどの景気の押し上げ効果が期待できるだろうか。政府はすでに1次補正の執行停止で実質GDPが0・2%押し下げられると認めている。それを踏まえて2次補正を組まねばならないのに、一律に「公共事業は無駄」というのでは選択の幅を狭めてしまいかねない。

経済対策には財政とともに金融政策が欠かせない。物価の安定を図るのは日銀の役割だ。だが双方の意思疎通がうまくいっているかが心配だ。前政権までは日銀総裁が経済財政諮問会議メンバーだったが、諮問会議廃止に伴い、閣僚との協議の場がなくなった。

政府は先月、日銀と「協議の場を設ける」と発表したが、いつ始めるのか。双方が景気認識を共有し、役割を分担しなければならない。先延ばしが許される状況ではない。

政府は自律的成長を可能にする中長期の成長戦略も忘れてはならない。特に、デフレ抑止には企業や消費者の心理が改善されて、景気回復への期待が高まるかどうかが重要だ。

「生活第一主義」だけでは、不十分だ。経済全体のパイを大きくする政策こそ求められる。

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