尖閣諸島を安定的に維持・管理するうえで一歩前進である。
政府が、尖閣諸島の魚釣島と北小島、南小島の3島について、地権者と売買契約を結ぶことで合意した。約20億5000万円の購入費用は予備費から支出する方針だ。
政府が重い腰を上げたのは、東京都の石原慎太郎知事が地権者との買い上げ交渉を進めたからである。石原氏も国有化を容認し、都が募った14億円を超える寄付金を政府に渡す意向を示している。
尖閣諸島は80年前に政府が民間に払い下げてから、譲渡によって所有者が交代している。国有化で不安定な個人所有からようやく脱することは評価すべきだ。
政府は現在、3島を地権者から賃借し、管理下に置いている。政府関係者以外の立ち入りを規制して、最低限の管理業務だけを行ってきた。
領有権を主張する中国を刺激したくないとの配慮からだろう。
だが、中国の漁業監視船は、尖閣周辺で挑発行為を繰り返している。中国内の世論でも、尖閣問題で日本批判が強まっている。
政府は灯台の改修、環境保護はもとより、領土保全と実効支配を一段と強めるための方策を練っていく必要があろう。
石原氏や地元の沖縄県石垣市は、荒天時に備えた漁船の避難港や、漁業無線の中継基地の設置などを求めている。政府はその妥当性を判断し、必要なら具体化を検討すべきである。
小笠原諸島などで離島管理のノウハウを持っている都との連携を図ることも一案ではないか。
尖閣諸島の警戒監視を強化するには、海上保安庁の体制と権限の拡充が必要だ。今国会で成立した改正海上保安庁法は、その一つの手立てである。
外国人が不法上陸した場合、従来は近隣の島から警察官を運ぶ必要があったが、施行後は、海上保安官が検挙できるようになる。
米軍の抑止力の重要性も忘れてはならない。新型輸送機オスプレイが沖縄に配備されれば、米海兵隊の機動性は高まり、中国をけん制する効果が期待できる。
香港の反日活動家は10月に再び不法上陸する構えだ。香港当局が尖閣諸島への出航を許せば、日中関係を揺るがし、中国にも不利益をもたらすことになるだろう。
週末のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の際、日中首脳会談が開かれれば、両国首脳は大局的観点に立って日中関係の将来を話し合うべきだ。
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