米大統領選は、11月6日の投開票まで、あと2か月余りに迫った。
4年ぶりの政権奪還を目指す共和党がフロリダ州で党大会を開き、ロムニー前マサチューセッツ州知事とライアン下院予算委員長を正副大統領候補にそれぞれ指名した。
ロムニー氏は、指名受諾演説で、オバマ政権の失政を厳しく批判し、経済を立て直して「米国を再生させる」と公約した。対決色を鮮明にしたと言える。
社会保障など連邦政府の歳出は大幅に削減する一方、幅広い減税策や規制緩和によって、民間活力を通じた景気浮揚を図ろうとする「小さな政府」路線である。
具体的には、エネルギー自給の推進や貿易拡大、中小企業支援を通じた1200万人の雇用創出計画、巨額の債務削減、国防予算の削減反対、オバマ政権の医療保険制度改革の撤廃などを挙げた。
民主党は、財政再建に必要な歳出削減では国防費も例外扱いにしていない。格差是正を重視し、低所得者や高齢者など弱者への政府支出は極力削らない立場だ。
米国は、景気減速が続いており、欧州債務危機の影響を受けて、先行きも不透明だ。
失業率はオバマ大統領の就任時の7・8%を下回ることなく、8%台前半に高止まりしている。
財政赤字は4年連続で1兆ドルを超えた。当面の景気浮揚と中長期的な財政再建で、実効性ある政策が求められよう。
ロムニー氏の唱える、大幅減税と巨額の財政赤字減らしは、両立し難く見える。歳入を減らさずに赤字は減らせるという道筋を具体的に明示する必要がある。選挙戦で争点になるのは間違いない。
民主党は4日からノースカロライナ州で党大会を開き、大統領再選へ挙党態勢をアピールする。
世論調査では、オバマ、ロムニー両氏の支持率は拮抗している。10月に3回にわたって行われる大統領候補討論会が、接戦の帰趨を決する重要な機会となる。経済や外交・安保政策を巡り、大いに論戦を展開してもらいたい。
共和党も民主党も、ともに「米国は太平洋国家」とアジア重視を唱えている。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉を完了させるという主張でも一致している。
米国主導によるアジア太平洋地域の安定と繁栄の維持を図る狙いがあろう。同盟国の日本にとっても望ましい方向だ。
米大統領選は、日本の内政、外交にも影響する。両候補の政策対決の行方を注視したい。
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