オスプレイ配備 事故報告を再発防止に生かせ

毎日新聞 2012年09月01日

オスプレイ 市街地飛行に不安強い

「これで安全が保証できるかというとできない」「安全は政府が保証に近い形でやってもらわないと」

米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの沖縄配備について、仲井真弘多沖縄県知事は、先月29日の森本敏防衛相との会談で「安全の保証」を5回繰り返した。政府はこれにどう応えるのだろうか。

会談は、今年4月にモロッコで起きたオスプレイ墜落事故に関する日本独自の検証結果を説明するため、防衛相の求めで開かれた。機体の問題ではなく、人為的なミス−−米軍の調査結果を追認する内容である。知事の結論は「今の段階で(配備)受け入れは難しい」だった。

仲井真知事は会談後、記者団に「安全の保証」と「住民の不安の払拭(ふっしょく)」が前提になると強調し、「こういうものがない限りとてもオーケーとは言えない」と述べた。

一方、米軍は6月に米フロリダ州で起きた空軍のCV22オスプレイ墜落事故も人為ミスと発表した。

人為ミスをいくら強調しても、日本政府が安全を保証することにはならない。事故の可能性は常にあり、米軍も事故率を算出している。配備が計画されている米軍普天間飛行場の周辺住民の不安は消えない。

問題はオスプレイを市街地の上空で飛行させることだ。宜野湾市の中心部にある普天間飛行場の周囲には約9万人が居住し、学校、病院など120以上の公共施設がある。万一のことがあれば重大事故となる。03年11月、同飛行場を上空から視察したラムズフェルド米国防長官(当時)は「こんなところで事故が起きない方が不思議だ」と語った。

「10月配備(本格運用)」を進める野田政権は、住民の安全より米政府とのあつれき回避を優先しているとしか思えない。普天間移設の動きは止まったままだ。移設実現までの普天間飛行場の機能分散と、10月配備の延期を改めて求める。

森本防衛相は30日には、オスプレイが一時駐機している米軍岩国基地がある山口県を訪れ、山本繁太郎知事と会談した。知事は「住民の安心と安全は十分でない」と語った。

米海兵隊は最近、ハワイの二つの空港で計画していたオスプレイの訓練を中止した。空港周辺の歴史的遺産への影響や住民の騒音被害などを考慮したためという。6月には、ニューメキシコ州で、空軍が、環境アセスに対する住民意見を受けてオスプレイの低空飛行訓練を延期している。

米国内なら柔軟に対応するが、日本ではそうはいかないということなのか。仲井真知事は会談で「(市街地の)普天間でオスプレイが飛び交うイメージは浮かびにくい」と語った。配備を強行してはならない。

読売新聞 2012年08月29日

オスプレイ配備 事故報告を再発防止に生かせ

事故の原因や背景の分析結果を、再発防止策の徹底にきちんと生かすことが肝要である。

防衛省が、4月にモロッコで発生した米海兵隊の新型輸送機MV22オスプレイの墜落事故に関する分析評価報告書を公表した。

報告書は、経験の浅い副操縦士がミスを重ねた「人的要因」が主たる事故原因と結論づけた。最大秒速14メートルの強風の中、飛行マニュアルに反して、追い風を受ける方向に機体を旋回し、回転翼の角度を規定以上に傾けたという。

オスプレイの機体自体は事故の要因ではない、としている。

報告書は、米軍の詳細な事故調査に基づいており、納得できる内容だ。オスプレイが他のヘリコプターなどと比べて特に危険であるかのような評価は公平でない。

大切なのは安全性を高める具体策だ。海兵隊は既に、飛行マニュアルを改訂したうえ、追い風時の回転翼操作の模擬訓練を操縦士に課す方針を示している。

事故は米兵の生命に直結する。米軍が安全確保に真剣に取り組むのは当然だが、日本側も、これを確認する必要があるだろう。

日米合同委員会では、人口密集地上空の飛行や低空飛行の制限など、オスプレイの国内運用の具体策を協議している。安全に最大限配慮した合意を目指したい。

防衛省は9月中旬にも、6月の米フロリダ州での事故評価も含めて、オスプレイの安全性に関する最終的な見解をまとめ、国内飛行の是非の結論を出す予定だ。

オスプレイが配備される沖縄県だけでなく、訓練飛行が行われる可能性のある本州などの一部自治体が飛行反対を政府に申し入れているが、過剰反応ではないか。

訓練は、北東アジア有事などに備えるもので、日本の安全保障につながっている。忘れてならないのは、なぜオスプレイを沖縄に配備するか、という点である。

オスプレイは、普天間飛行場に配備中のCH46輸送ヘリコプターと比べて、巡航速力は2倍以上、行動半径も4倍以上になる。尖閣諸島まで給油せずに1時間弱で人員や物資を運べることになる。

日米共同の作戦行動能力を大きく向上させ、抑止力も高まる。米政府が共同防衛の対象と明言する尖閣諸島を含む南西諸島の防衛に加え、人道支援や災害救援にも貢献が期待されよう。

政府は、オスプレイの安全性に加えて、こうした米軍の機動力向上の意義についても関係自治体や国民に説明を尽くすべきだ。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/1153/