ロシアが156番目のメンバーとして、世界貿易機関(WTO)に加盟した。自由貿易を促進し経済成長に弾みをつけることが期待されよう。
1993年に加盟申請したロシアは、未加盟の「最後の大国」と呼ばれた。ロシアがようやく、WTOルールに基づく自由貿易体制に加わった意義は大きい。
原油などエネルギー価格の上昇を追い風に、ロシアは堅調な経済成長が続いているが、資源依存体質からの脱却が課題だ。市場開放による貿易拡大とともに、海外から投資を呼び込み、経済構造を転換する必要がある。
2001年にWTO加盟後、貿易と投資の拡大で急成長した中国が、ロシアのモデルとなろう。
ロシアはWTO加盟に合わせ、工業製品などの段階的な輸入関税率引き下げを約束している。
品目別では、乗用車は現行30%をすぐに25%とした後、7年かけて15%に下げる。家電や電子製品も15%を7~9%とする。コンピューターなどIT(情報技術)製品についても、将来的に関税ゼロとする方針を打ち出した。
ロシアは、これらの市場開放を着実に進めてもらいたい。煩雑な通関手続きを改善し、貿易拡大につなげることも大事だ。海外からの投資を妨げる障壁の削減にも取り組まねばならない。
日露貿易額は増えているが、さらに伸びる余地があり、日本企業にはチャンスが広がる。とくに主力輸出品である自動車分野が有望だ。自動車各社は、ロシア戦略を強化してほしい。
懸念されるのは、ロシアがこれまで、自動車関税率引き上げや穀物輸出規制など、一方的な不公正貿易措置を導入したことだ。
廃車時の費用を税金として徴収する廃車処理税も新たに準備している。日本車などが狙い撃ちされれば、輸出に不利になる。
ロシアは加盟とともに、WTOルールを順守する義務を負う。ルールに違反する不公正貿易措置を導入すれば、他国からWTOに提訴される可能性が高いだろう。
新興国で相次いでいる保護貿易措置が、ロシアの姿勢に影響を与えかねないことも気がかりだ。
インドネシアはニッケル、銅などに輸出関税をかけ、アルゼンチンは自動車などの輸入に許可制を導入した。ブラジルも、自動車部品の現地調達比率を高めるよう、貿易相手国に要求している。
日本は欧米と連携し、ロシアに限らず、新興国の不公正貿易措置の是正を求めねばならない。
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