尖閣諸島と竹島 冷静かつ賢明な対処を

朝日新聞 2012年08月23日

竹島提訴 大局に立つ日韓関係を

竹島の領有権問題をめぐり、日本政府が韓国政府に対し、国際司法裁判所(ICJ)に共同で提訴するよう求めた。

韓国に応じる気配はなく、裁判が開かれる見通しはない。

それでも、領土問題という感情的対立に陥りやすい問題を、国際法で公平に解決しようという呼びかけは、説得力がある。

日本政府が韓国の不法占拠に対し、自らの立場を国際社会に訴える意味合いもある。

日本は長年、韓国に配慮して提訴を控えてきたが、李明博(イ・ミョンバク)大統領の竹島上陸は一線を越えるものだった。天皇に謝罪を求める発言への反発も強い。対抗措置は当然のことだろう。

韓国側は野田首相の親書を送り返すという。外交では異例なことだが、不協和音を強めるだけでは出口が見えない。北朝鮮や中国を見据えると、北東アジアの安定にとって、日韓関係はますます大事になっている。

野田政権は閣僚同士の対話延期も打ち出した。経済や科学技術など他分野の対話を止めれば、日本にも不利益が生じる。対抗措置と大局に立つ外交を賢く組み合わせる必要がある。

落ち着いた関係を築くには、歴史問題にも、もう一度向き合わざるを得ない。

李大統領は竹島上陸の理由に、慰安婦問題で進展が得られなかったことを挙げた。

日本政府は1965年の日韓協定で解決済みとの立場だが、93年の官房長官談話で旧日本軍の関与を認め、謝罪した。民間主導のアジア女性基金を通じ、償い事業も行った。

そうした努力自体は韓国の人たちにも理解してもらいたい。その上で、まだ出来ることがあるのか、両国で考えればいい。

残念なのは、日本側で歴史認識への疑問を呼び覚ますような言動が繰り返されることだ。

2007年には当時の安倍晋三首相が、当局が無理やり連行する「狭義の強制性」はなかったと主張。米下院が日本に謝罪を求める決議を採択するなど、国際社会で強い批判を浴びた。

問題の本質は、尊厳を踏みにじる行為が本人の意に反して行われ、そこに国が関与していたことだ。こうした発言はかえって日本の立場を弱める。

このところ、経済的に存在感を増す韓国に対し、日本は自信喪失気味だ。韓国にとっての日本の位置づけも変わり、人的パイプも以前ほど太くない。

韓国では12月に大統領選があり、李大統領の求心力は低下している。次期政権も見据えて、政治、外交、民間の各層で関係を築き直す必要がある。

毎日新聞 2012年08月21日

領土外交 国際世論を味方にせよ

中国各地で反日デモが起きた同じ日、尖閣諸島(沖縄県石垣市)の魚釣島に日本人が上陸した。島根県の竹島では韓国大統領直筆の石碑の除幕式があった。日本政府は韓国への対抗措置の検討を今週から本格化させる。領土を巡る中韓との摩擦がなかなか沈静化しない。

北方領土を含め、戦後日本の領土外交の課題がここにきて一気に噴き出してきた。帝国主義の時代には領土紛争は軍事力で解決することが多かったが、21世紀の今日、そのような手段が認められるはずはなく、また認めてはならない。肝心なのは外交力だ。国民同士の感情的な対立が後戻りできないところまでエスカレートしないよう、日中、日韓の対話のパイプを大事にすることだが、それだけでは足りない。国際世論を味方につけるよう、政府はもっと発信努力をすべきである。

尖閣諸島については実効支配しているのは日本であり、領土問題は存在しない、とする政府の姿勢は間違っていない。だがそれは、何も言わず黙っていればいい、ということではないはずだ。中国はメディアを通じて尖閣諸島の領有権を世界中で主張し、さまざまな場で政府関係者が自国の立場を強調している。このままでは、国際宣伝合戦で日本が不利な立場に置かれかねない。歴史的にも国際法的にも日本の領土だということを、世界にきちんと理解してもらわなければならない。これまでの沈黙の外交ではなく、これからはモノ言う外交が必要だ。

政府は竹島問題を、国際司法裁判所(ICJ)に提訴する方針だ。だが、韓国側が竹島問題とからめる旧日本軍の従軍慰安婦問題で、日本の過去の対応は世界に十分伝わっているだろうか。かつて米議会が日本に謝罪要求決議をしたが、日本が国民基金を設立して元慰安婦に償い金を渡すことを決め、首相の「おわびと反省の手紙」も届けることにした経緯が、米国にすら理解されていなかった証左ではないか。

その意味で、駐米大使をはじめとする大使人事の刷新は、在外公館の広報活動を立て直すいい機会だ。民間から起用した駐中国大使の早めの交代は在任中の言動からやむを得ないが、民間の知恵が不要だということではない。むしろ、政治家や外交官だけでなく、国民全体で領土外交のあり方を真剣に考える時だ。

若い世代に尖閣諸島、竹島、北方四島がなぜ日本の領土なのかをしっかり教える教育も大切だ。歴史を正しく理解すれば、相手の主張に理性的に反論することもできるようになるだろう。波風を立てるより、静かで能動的な外交で日本の国際的な立場を高めていきたい。

読売新聞 2012年08月24日

竹島・尖閣審議 民主は「配慮外交」を反省せよ 

領土問題では、毅然(きぜん)として自国の立場を主張するとともに、平和的な解決を冷静に追求することが肝要である。

衆院予算委員会で外交に関する集中審議が行われた。李明博韓国大統領宛ての野田首相の親書を韓国政府が返送すると発表したことについて、首相は「あまりにも冷静さを欠いた行動」と不快感を表明した。

親書は李大統領の竹島訪問に遺憾の意を表する内容だが、それを返送するのは外交慣例上、極めて非礼であり、看過できない。どんなに主張が対立しても、外交には最低限守るべきマナーがある。韓国の対応は一線を越えている。

政府は強く抗議すべきだ。ただ、その際は、外交儀礼をきちんと守って対応することが大切だ。

玄葉外相は予算委で、竹島の現況について韓国が「不法占拠」していると強調した。民主党政権は岡田外相以降、韓国側への配慮から「法的根拠のない支配」と表現しており、玄葉外相が初めて「不法占拠」との表現を用いた。

あまりに遅きに失している。国家主権に関する問題でさえ、相手国を刺激しないという民主党政権の過剰な「配慮外交」が、日本は簡単に譲歩するという誤解を韓国側に与えたことは否めない。

いわゆる従軍慰安婦問題でも、賠償請求権問題は完全に解決しているのに、前原政調会長が新たな「人道的措置」の検討を表明したことなどが、韓国側に誤った期待感を抱かせた可能性がある。

政府は一連の経緯を反省し、今後の対応を検討すべきだ。

野田首相は予算委で、李大統領の天皇陛下への謝罪要求発言について、謝罪と撤回を求める意向を表明した。韓国外交通商省報道官は、玄葉外相の「不法占拠」発言の撤回と再発防止を要求した。

日韓関係は今や、「負の連鎖」に入り始めている。竹島問題で対立しても、日韓関係全体が悪化するのは避けたい。日中韓の自由貿易協定(FTA)交渉など実務的な協議は継続するよう、日韓双方が努めることが重要である。

集中審議で自民党は、政府が香港活動家による尖閣諸島不法上陸を阻止できず、公務執行妨害罪を問わなかった点を追及した。

領土問題では本来、オール日本の体制で外交を展開することが望ましい。自民党が政府の揚げ足取りに終始するようでは困る。

日本の主張を国際社会に積極的に発信し、学校での歴史教育を充実させるなど、超党派で取り組むべきことは少なくない。

産経新聞 2012年08月24日

都の尖閣調査 上陸許可が抑止力になる

尖閣諸島の購入を計画している東京都が、政府に調査のための上陸許可を正式に求めた。野田佳彦政権はこれを速やかに許可すべきだ。

都は早ければ29日にも上陸を目指している。2千トン級の民間船をチャーターし、財務、港湾、環境などの担当職員や不動産鑑定士ら約10人で調査する予定だ。上陸が認められなければ洋上から調査するという。

上陸目的ははっきりしている。野田政権がなぜ結論を留保しているのか理解に苦しむ。

野田首相は23日の衆院予算委員会で「平穏かつ安定的な維持管理」の必要性を重ねて強調し、明言を避けた。一方、藤村修官房長官は記者会見で「政府関係者以外の上陸は認めないという基本方針がある」とも述べた。

「都の上陸を許可すれば、中国を刺激する」という懸念があり、そのために国が許可を渋っているとすれば、考え違いである。

上陸許可はむしろ、15日に起きたような香港の反日活動家による尖閣不法上陸を許さない国の強い姿勢を示すことになる。ひいては中国の尖閣奪取の狙いを封じる抑止力にもつながる。中国と波風を立てないという「事なかれ主義」では国家主権は守れない。

問題は、上陸許可だけでは不十分なことだ。地元の石垣市漁協などが要望する避難港や漁業中継基地建設のほか、警戒監視レーダー設置、本格的なヘリポート建設などの統治強化策について、都や石垣市などと協力して国が早急に実現に移すべきである。

尖閣諸島などを警備する第11管区海上保安本部(沖縄県)には、1千トン級以上の巡視船が7隻しかない。これでは、武装した中国の漁船群が大挙して尖閣に押し寄せた場合に対応できない。巡視船の増強に加え、主権を侵害する不法行為を自衛隊が排除するための領域警備法制定も急がれる。

竹島問題では、玄葉光一郎外相と森本敏防衛相は民主党閣僚として初めて、竹島が韓国に「不法占拠」されていると明言した。また野田首相は衆院予算委で、天皇陛下に謝罪を要求した李明博・韓国大統領の発言に対し、謝罪と撤回を求める考えを示した。

野田政権は過度の対中・対韓配慮が目立った鳩山由紀夫、菅直人両政権時代の外交を少しずつ正そうとしているようにみえる。尖閣でも毅然(きぜん)たる姿勢を求めたい。

朝日新聞 2012年08月21日

尖閣と竹島 政治が対立をあおるな

中国でまた、反日デモが起きた。尖閣諸島に不法に上陸した香港の活動家を、日本側が逮捕したことが引き金になった。日本では不法上陸への反発が広がり、地方議員ら10人が政府の許可なく尖閣に上陸した。

日韓が領有権を争う竹島では韓国が李明博(イ・ミョンバク)大統領の名を刻んだ石碑を建てた。大統領の上陸に続く、無分別な行動だ。

感情をたぎらせ、ぶつけあう。隣国同士でこんな不毛なことをいつまで続けるのか。

野田政権の基盤は弱い。秋に世代交代を控える中国の指導部は動きが取りにくい。年末に大統領選がある韓国では、李大統領の求心力低下が著しい。

難しい時期だが、事態を収めるべき政治が対立をあおるような振る舞いは理解しがたい。本来の外交の場で引き取り、沈静化を図るべきだ。

中国のデモは、尖閣沖での衝突事件の後に反日が吹き荒れた一昨年の再現のようだった。

北京や上海では厳戒態勢が敷かれ、デモは散発的だった。だが、香港の隣の深セン(センは土へんに川)などでは参加者が暴れ、日本車や日本料理店を壊す騒ぎになった。

日中の貿易総額が年間27兆円余りとなるなど、相互依存は強まるばかりなのに、きわめて残念だ。粗暴な行いが国際社会でのイメージ悪化にもつながることを中国は知るべきである。

ただ、反日に過剰に反応するべきではない。

デモは、貧富の格差や汚職の広がりなど、中国社会の矛盾への不満に突き動かされている面もある。中国政府は批判の矛先が自らに向かうことを何よりも警戒しており、これ以上の拡大は望んでいまい。

中国のネット上では、「中国人の車を壊してどうする」などと、冷ややかな声も多い。

一方、韓国に対しては、李大統領の天皇への謝罪要求発言もあり、日本政府は態度を硬化させている。国際司法裁判所に提訴する方針を発表したほか、安住淳財務相は日韓通貨スワップ(交換)の融通枠拡充取りやめを示唆している。

日本の立場を表明することは大事だが、あたかも制裁のように関係のない問題を持ち出すのはいかがなものか。韓国経済の不安定化は、日本にとってもマイナスになりかねない。

安住氏は、今月下旬の日韓財務対話への出席も取りやめた。だが、こういうときこそ、韓国としっかり話し合うべきだ。

日中も、日韓も、前に進めていかなければならない関係だ。何が本当の国益なのか、冷静に考える必要がある。

毎日新聞 2012年08月18日

尖閣諸島と竹島 冷静かつ賢明な対処を

領土をめぐる摩擦で中国、韓国との関係がきしんでいる。

一連の事態を受けた政府は、領土保全という主権国家の原理原則に沿って、必要な措置を着実に実行に移していけばいい。その一方、感情的対立が高じて隣国との関係が決定的に悪化することのないよう、冷静な対応も必要だ。当面の事態を沈静化させるとともに、将来にわたって外交懸案化しないよう問題を制御するには、何をすべきか。それを考えて行動することが、それぞれの国の政治家の重い責務である。

政府は、沖縄県石垣市の尖閣諸島に上陸した香港の活動家らを逮捕したあと、強制送還処分とした。国内法にのっとった迅速な措置であり、日中関係を混乱させないためにも賢明な判断だと言えよう。

また、李明博(イ・ミョンバク)・韓国大統領の竹島(韓国名・独島)上陸を受け、領有権の問題を、国際司法裁判所(ICJ)に提訴する方針も決めた。国際社会に日本の主張の正当性を訴えることで、韓国の今後の動きをけん制する狙いもあるだろう。

強制送還も、今回の事態を踏まえたICJへの提訴も、主権国家として妥当な対応だ。今後は、尖閣諸島と竹島をめぐる摩擦が再燃しない態勢づくりが重要になる。

尖閣諸島については、領海の警備を一層強化すべきだ。上陸した不法入国者を海上保安庁の職員が逮捕できるようにする法改正案が今、国会で審議中だが、こうした法整備を淡々と進める必要がある。

それとともに、このような摩擦を繰り返して日中関係をこじらせることがいかに相互の戦略的利益に合致しないかを、中国としっかり話し合うことが重要だ。日中海洋協議などの危機管理メカニズムも活用し、再発を防いでもらいたい。

竹島問題では、韓国側にも大統領の振る舞いを人気取りのポピュリズムと批判する声があるという。日本側には通貨交換(スワップ)協定の拡大措置見直しをはじめ、一層の強硬対応を求める動きがあるが、通貨外交や他の政治案件をからめ、対抗手段をエスカレートさせるのはいかがなものか。ICJへの提訴で竹島問題を国際社会の判断にゆだねる構えをとるのであれば、日韓2国間ではいたずらに対立をあおることなく、冷却期間を置きつつ、関係改善の糸口を探ることも考えるべきだ。

尖閣諸島、竹島の問題で中韓両国とこのような対立構図ができてしまったことは、日本の外交力の低下を物語る。領土保全のあり方を考え、近隣外交を再構築することが急務である。これは与野党が共通認識を持って取り組むべき課題だ。政争の材料であってはならない。

読売新聞 2012年08月21日

中国反日デモ 邦人の安全確保へ沈静化図れ

香港の活動家による尖閣諸島への不法上陸事件を契機に、中国各地で反日デモが拡大している。中国政府は事態の沈静化を急ぐべきである。

尖閣諸島に対する中国の領有権を主張する反日デモは19日、北京や上海、広州など約25か所で発生した。広東省深センなどでは、デモ隊が暴徒化して、日本料理店のガラスが壊される事態となった。

大規模なデモは、中国で暮らす大勢の邦人を脅かした。デモを事実上黙認し、結果的に混乱を招いた中国政府の責任は重大だ。中国当局は邦人や日系企業の安全確保に万全を期してもらいたい。

中国政府には、対日牽制(けんせい)は無論として、経済格差など国民の不満のガス抜きを図る思惑もあったのだろう。指導部交代が予定される今秋の共産党大会を控え、「反日カード」が権力闘争に使われた、との見方も出ている。

中国の反日姿勢は、今後も変わらない公算が大きい。中国側の事情に基づくトラブルは絶えない、ということを日本政府は肝に銘じ対処していく必要があろう。

中国政府は日本人10人による尖閣諸島・魚釣島上陸を批判した。だが、これはお門違いだ。佐々江賢一郎外務次官が、中国の程永華駐日大使からの抗議に「香港の活動家による上陸が背景にある」と反論したのは当然だ。

日本政府がまず取り組むべき課題は、尖閣諸島の管理を淡々と強化することである。購入を計画する東京都は、上陸許可を政府に申請している。

政府は、都と連携して、国有化を着実に進めることが肝要だ。

無人島での海上保安官の犯罪検挙を認める海上保安庁法改正案とは別に、領土・領海を守る体制を整備することも急務である。

長島昭久首相補佐官は、テレビ番組で「領域警備の体制を法制度も含めて見直す」と述べた。松原国家公安委員長は「領土主権を侵害する目的の不法入国は、通常の不法入国と区別し、重く罰すべきだ」とも指摘している。

外部からの不法侵入など国家的な危機への備えはなお脆弱(ぜいじゃく)だ。

1999年の北朝鮮工作船の領海侵犯事件以来、日本はこうした問題点は、幾度となく痛感してきたはずである。当時、読売新聞は「領域警備」を自衛隊の新たな任務とし、警戒監視に当たらせることを提言した。

今回のような反日団体による不法上陸事件は、今後も続発しかねない。領域警備を強化する法制度も検討すべきだろう。

産経新聞 2012年08月23日

竹島提訴拒否 韓国はなぜ背向けるのか

韓国による島根県・竹島の不法占拠をめぐり、日本政府が李明博韓国大統領の同島上陸を機に、国際司法裁判所(ICJ)への共同提訴を提案したのに対し、韓国政府は拒否してきた。上陸などへの遺憾の意を表明した野田佳彦首相の親書も突き返すという。

「わが国固有の領土。裁判で争う必要はない。日本との間に領土問題は存在しない」との従来の立場に沿ったものだ。

だが、藤村修官房長官らも指摘したように、「グローバルコリア」を標榜(ひょうぼう)する韓国が領有の正当性に自信を持つなら、なぜ国際的な裁きの庭に背を向けるのか。

竹島問題について、韓国国民はこれまで、政府やメディアによる一方的な見方しか聞かされてこなかった。その証拠に、日本側の主張の詳細な根拠は、ほとんど認知されていない。

一部には、「韓国政府は何か隠しているのではないか」など素朴な疑問もある。韓国が提訴に応じない背景について、日韓双方の専門家の間に「裁判になったら負けるかもしれない不安があるから」との見方も上がっている。

韓国にとって最大の弱点は、日本が1952年の対日平和条約の発効により独立を回復した際、竹島は日本領土とされた事実である。韓国は自国領を主張したものの、米国をはじめ国際社会から認められなかった。

この過程で、韓国は領海として「李承晩ライン」を一方的に設置し、竹島を囲い込んだ。不法占拠はここから始まった。日本が敗戦で主権を失って対抗手段を持たないときに、勝手に自分のモノにしてしまったのだ。

日本政府はこのような不当性を一つ一つ国際社会に訴え、明らかにしてゆく必要がある。現地の大使をはじめ外交官たちはこれまで、日本政府の立場を問われても、具体的かつ直接的回答は避ける慣例になっていた。「韓国世論を刺激してはいけない」という穏便主義からだ。こうした外交は、もはや許されない。

李大統領の反日強硬策によって、日韓領土問題の実情が国際社会に印象づけられた。共同提訴拒否を受け、日本は単独提訴に踏み切る。韓国側は提訴に応じない理由についてICJから説明を迫られ、反論せざるを得なくなる。

日本が竹島をめぐる「失われた時」を取り戻す好機である。

産経新聞 2012年08月21日

尖閣反日デモ 勝手な主張は許されない

日本の尖閣諸島領有に反対する中国各地のデモが19日、上海など20都市以上に拡大した。一部は暴徒化し、日本車を破壊したり、日本料理店を襲撃したりした。

世界第2位の経済大国とは思えない無法ぶりである。デモを取材していた日本人記者も暴行を受けた。在留邦人の被害が懸念される。中国政府には日本の公館や日系企業の安全確保も含め、警備に万全を期すよう強く求めたい。

今回のデモは、15日に尖閣に不法上陸した香港の活動家らを沖縄県警などが現行犯逮捕したのがきっかけだった。いっきに拡大したのは、日本の地方議員ら10人も尖閣に上陸したことが携帯電話で伝わったためだ。

デモ参加者は深センで約5千人、成都や浙江省杭州ではそれぞれ約3千人にのぼった。掲げられた横断幕には「小日本は釣魚島(尖閣諸島の中国名)から出ていけ」といった激しい文字が並んだ。

尖閣諸島が国際法上も正当な日本領土である事実を中国政府は認めず、勝手な領有主張をしている。横断幕はともかく、日本製というだけで破壊対象とする暴力は断じて許されない。

2010年9月に尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突事件後、中国各地で続いた反日デモの一部が「経済格差の是正」「一党独裁打破」といった反体制デモに転化した前例がある。今回のデモ参加者も「格差」に不満をもつ若年層が多かったようだ。

秋の共産党大会での最高指導部の交代を前に、国内の安定を最優先したい胡錦濤政権が「尖閣デモ」を大衆の不満のはけ口として利用している可能性もある。これも、尖閣諸島の領土主権について日本政府が腰のすわった姿勢を示していないからだ。

民主党政権が「政治主導」の象徴として民間から起用した丹羽宇一郎駐中国大使を2年余りで交代させるのは当然といえる。丹羽氏は6月に東京都の尖閣諸島購入計画を批判する不適切発言をしており、事実上の更迭だ。

一方、東京都が申請した尖閣諸島への上陸許可について、藤村修官房長官は書類不備を理由に「一時保留」していると明らかにした。尖閣の購入価格を決めるための測量調査が目的だ。早急に申請を認めることが、中国に対する毅然(きぜん)とした姿勢になる。

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