消費税率引き上げを柱とする社会保障・税一体改革関連法の成立で、日本は財政健全化に大きな一歩を踏み出した。
借金財政から脱却する道筋を示せるかどうか、2013年度予算はその試金石となる。
政府は、13年度予算の概算要求基準を決めた。
12年度当初予算並みに、歳出では国債費を除く政策的な経費を71兆円以下、歳入では新規国債発行額を44兆円以下に抑えた。
そのうえで、日本再生戦略で示したエネルギー・環境、健康、農林漁業の3分野に「特別重点要求」を認め、各府省が従来の事業を見直して削った額の2~4倍を要求できるようにした。
それ以外の再生戦略関連は「重点要求」として削減額の1・5倍まで要求を認める仕組みだ。
硬直化した歳出を点検し、成長に配慮して予算にメリハリを付ける狙い自体は悪くない。
ただ、過去の重点要求では、従来と内容が変わらないものを焼き直すような手法が横行した。
政府は最大4兆円の要求を想定しているが、府省間で重複した事業を事前調整するなど、要求段階で厳しく絞り込むべきだ。
最大の問題は、重点配分する予算がどれだけ成長に資するのか、疑問が払拭できないことだ。
農業予算の効率化が急務であるにもかかわらず、13年度も、ばらまき色の強い戸別所得補償制度に必要な予算を認める方向だ。成長戦略に逆行していないか。
環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を前提に、農業の体質強化につながる事業に重点配分しなければならない。
再生可能エネルギー関連についても、効果の乏しい事業には予算を大盤振る舞いすべきでない。
概算要求基準が、公共事業費の1割カットなど、通常予算の削減を求めたのは妥当だろう。
焦点は、社会保障費の伸びをどう抑えるかである。
高齢化の進行に伴い、13年度予算では、現行制度を維持するだけで前年より8000億円増える。社会保障費を聖域扱いせず、受給者が急増している生活保護費の抑制など切り込みが求められる。
政治主導を掲げて民主党政権が臨んだ過去3回の予算編成は、政権公約に固執して歳出カットは進まぬ一方、借金は増えた。予算規模は年々膨らむばかりだ。
13年度予算も、衆院選を意識した歳出増圧力が強い。今度こそ、膨張型から抑制型へ、予算構造の修正を図るべきである。
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