日本の主権に公然と挑戦する行為である。再発防止へ、政府は態勢の強化に努めるべきだ。
沖縄県の尖閣諸島・魚釣島に香港の反日団体の船が接岸し、活動家が上陸した。県警と海上保安庁は、不法上陸した5人、船に乗っていた9人の計14人全員を出入国管理・難民認定法違反容疑で逮捕した。
この団体は、香港のテレビ局の記者を同行させ、上陸の様子をネット中継した。日本を挑発し、中国のナショナリズムを煽る意図は明らかだ。竹島を巡る日韓両国の対立につけ込む狙いもあろう。
海保と警察が魚釣島への事前の要員配備などで連携し、速やかに検挙したことは評価できる。
逮捕された14人は取り調べを受けた上で、入国管理局を通じて強制送還される見通しだ。2004年3月の中国人による魚釣島不法上陸時と同様の措置となる。
尖閣諸島の秩序を守るため、日本が法令を円滑に執行するという実績を残した意義は小さくない。尖閣諸島に対する日本の実効支配を補強することになろう。
野田首相は「法令にのっとり厳正に対処する」と明言した。手続きを粛々と進めてもらいたい。
約2年前の漁船衝突事件では、公務執行妨害という重大な犯罪行為があったため、身柄送検した。今回、入管難民法違反にとどまるのなら、強制送還による早期の事態収拾はひとまず適切だろう。
大事なのは、同様の不法入国を繰り返させないことだ。
香港当局は、反日団体の船の出港を制止できたにもかかわらず、事実上容認した。尖閣問題で日本を牽制しようという中国政府の思惑も見え隠れする。
だが、混乱が生じれば、日中関係は悪化し、結果的に中国にも不利益となるのは自明の理だ。
政府は、中国や香港当局に対しそのことを理解させ、反日団体の監視強化などの再発防止策を取るよう働きかけるべきだ。
海保が活動家の上陸を阻止できなかったことについて、自民党などが批判を強めている。海保は、警戒態勢に不備がなかったか、十分に検証し、装備や人員の一層の拡充を図る必要がある。
海保の権限を強化する海上保安庁法改正案は、国会提出から半年たってようやく衆院を通過した。全会一致の法案をこれまで放置してきたのは与野党の怠慢だ。
尖閣諸島の安定的管理を図るには国有化が欠かせない。政府は購入を計画している東京都と調整して手続きを急いでもらいたい。
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