日本と北朝鮮の政府間協議が、29日に北京で開かれる。08年8月以来、4年ぶりの再開となる。
直接の議題は、終戦前後に北朝鮮で死亡した日本人の遺骨返還や墓参についてだ。だが、これを糸口に、日本人拉致問題をはじめとする日朝間の懸案を幅広く話し合う場とするよう、政府の努力を求める。
きっかけは、先週、北京であった遺骨返還などについての日朝赤十字の話し合いだ。
日本政府は当初、赤十字間の接触には消極的だった。だが、この場で北朝鮮が前向きな姿勢を示し、経済支援の要求もしなかったことで、政府間の話しあいに踏み切れると判断した。
北朝鮮は、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の新体制になっても、軍事優先の姿勢はそのままだ。一方で、正恩氏が重要課題に掲げる食糧事情の悪さや経済の停滞は、改善されていない。
正恩氏を支える張成沢(チャン・ソンテク)氏が中国を訪れて経済協力を協議しているのも、苦境を脱するための動きのひとつだろう。
こうした状況で、かつ、米国や韓国との関係もこじれるなかでの日本への接近だ。何らかの経済支援を引き出す狙いがあるのは容易に想像できる。
北朝鮮は、08年8月に拉致被害者の再調査を約束したが、直後の日本の首相交代を理由に、調査を棚上げした。
いまでは、拉致問題は「すべて解決し、これ以上、存在もしない」との態度だ。
一方、日本が北朝鮮に科している経済制裁も出つくし、日朝関係は手づまりが続いている。
もとより、北朝鮮との交渉は一筋縄ではいかない。
かりに遺骨返還や墓参が実現しても、法外な見返りを要求されるかもしれない。拉致問題についても、北朝鮮が態度を改める保証はない。
それでも対話の窓を開かなければ、何ごとも前に進まない。
北朝鮮とて、いつまでも中国頼みのまま日、米、韓との関係が改善できなければ、将来の展望は描けまい。
拉致問題や核とミサイルの問題を解決し、国交を正常化すれば経済協力への道が開ける。
政府は、そんな説得を続けていくしかない。
あわせて、やはり08年から中断している米中ロ韓をまじえた核問題の6者協議の再開にも、道筋をつけてほしい。
故金正日総書記が小泉元首相に拉致を認めてから、来月で10年になる。
粘り強い交渉を、政府に期待する。
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