竹島問題 深いトゲをどう抜く

毎日新聞 2012年08月12日

竹島問題 深いトゲをどう抜く

日本と韓国が領有権を主張している竹島(韓国名・独島)に李明博(イ・ミョンバク)韓国大統領が上陸し、実効支配をアピールした。なぜ今、大統領が先頭に立って日韓関係に無用な波風を立てるのか。理解に苦しむ。

竹島は、1905年の閣議決定で島根県に編入された。これに対し韓国は52年、海洋主権宣言を行って一方的に公海上に線引きをし、竹島を内側に組み入れた。その後は沿岸警備隊を常駐させ、ヘリポート、接岸施設を建設するなど、実効支配を続けて今日に至っている。

その一方、国家元首である歴代大統領は、これまで竹島上陸を避けてきた。深刻な外交摩擦を生じさせないため、一定の配慮が働いていたともいえる。それだけに、今回の上陸は竹島をめぐる日韓の対立構図を一変させる、新たな挑発的行為と受け取られても仕方がない。

日本政府が、武藤正敏駐韓大使の一時帰国などの対抗措置をとったのは当然だ。日韓関係は当分、冷却期間が続くことになろう。

韓国では年末に大統領選が予定され、李大統領の任期はまもなく終わる。政権末期で支持率低迷にあえぐ大統領が、世論の矛先をかわすために対日強硬カードを切った、という見方が出ている。だが、実効支配をしている側の韓国がそれをことさら誇示することは、竹島問題に関心の薄かった人も含め、日本の世論の反発を強めるだけである。

領土問題は国民感情を刺激する。それを注意深く制御することが、政治指導者の重い責任だ。大統領の竹島上陸は、その責任を放棄する行動ではないのか。日米韓の安全保障協調にも悪影響が出れば、中国や北朝鮮を利する結果になる。

韓国には、いわゆる旧日本軍の従軍慰安婦問題などをめぐって、日本側の対応に強い不満があるのも事実だ。だからといって竹島問題でかつてない強硬姿勢を示すことは、互いの国民の理解を得て懸案を解決することをより困難にする。

今回の事態を招いたことは、日本外交の反省点にすべきだ。韓国に日本の立場や譲れない一線を理解してもらい、竹島問題での対立が日韓関係全体を悪化させないよう、十分に取り組んできたとは言いがたい。

玄葉光一郎外相は、国際司法裁判所への提訴を検討する考えを示している。韓国はこれまで同様、応じない構えだが、国際社会に日本の主張の正当性を訴えていく努力を重ねることが必要だ。それとともに、竹島問題という深いトゲをどうすれば抜くことができるか、政治家は知恵を絞ってほしい。強硬策の応酬による一時の喝采ばかりでなく、長期的な相互利益も考える時だ。

読売新聞 2012年08月18日

「竹島」提訴へ 日本領有の正当性を発信せよ

竹島に関する日本の領有権の正当性を広く国際社会に訴え、認知させる意義は大きい。

政府が、竹島問題を国際司法裁判所に提訴する方針を発表した。

近日中に日韓両国による共同付託を韓国に提案し、韓国が応じない場合は、日本単独で提訴する方向だ。

藤村官房長官は「国際法に基づき、冷静公平かつ平和的な紛争解決を目指す。韓国が自国の領有権主張が正当と考えるなら、提案に応じるべきだ」と強調した。

韓国は従来、付託を拒否しており、今回も応じない方針だ。国際司法裁の紛争解決は当事国双方の同意が前提のため、裁判が開廷する見通しは立っていない。

だが、提訴を通じて、竹島が韓国に不法占拠されている現状や、韓国の主張の不当性が国際社会に認識されよう。日本は粛々と手続きを進めることが大切だ。

竹島をめぐる過去の経緯を振り返れば、日本は、17世紀半ばに領有権を確立し、1905年には島根県への編入を閣議決定した。

大戦後のサンフランシスコ講和条約でも、日本が放棄すべき地域から竹島は除外されていた。

ところが、韓国は条約発効直前の52年、当時の李承晩大統領が公海に国際法違反の「李承晩ライン」を設定して竹島を取り込み、それ以降、不法占拠を続けている。

竹島は歴史的にも国際法上も日本の領土であると、政府は折に触れて主張していく必要がある。

現在の混乱を招いた責任は、ひとえに、竹島訪問を一方的に強行した李明博韓国大統領にある。

内政面で苦境にある首脳が、日本との歴史認識や領土の問題を持ち出し、国内のナショナリズムに訴えて人気取りを図るのは、韓国歴代政権の常套(じょうとう)手段だった。

だが、今回の李大統領の行動は、その後の「天皇謝罪」要求発言と合わせて、格段に罪深い。韓国側はそれを自覚すべきだ。

日本側は、さらなる対抗措置として、日韓の首脳会談や政府間協議の延期を検討している。安住財務相は、金融危機時に外貨を融通し合うための日韓通貨交換(スワップ)協定の融資枠を縮小する可能性を否定していない。

当面、日韓関係の停滞が続くのは避けられまい。

関係悪化のツケは結局、日韓両国に回ってくる。北東アジアの安全保障問題でも、日韓の足並みの乱れは北朝鮮を利するだけだ。

日韓関係が決定的に悪化しないように、政府間で冷静に対話を重ねることも重要である。

産経新聞 2012年08月14日

竹島提訴 世界に不法占拠知らせよ

李明博韓国大統領が日本固有の領土である竹島への上陸を強行した問題で、玄葉光一郎外相は竹島問題を国際司法裁判所(ICJ)に提訴する方向で検討に入った。

裁判が実現すれば、竹島領有権が日本にあり、韓国が不法占拠している事実を国際社会に訴える有力な場になる。

ただし、裁判開始には韓国の合意が必要だ。日本は過去2回、ICJ提訴を韓国に提案した。1度目は昭和29年に口上書を通じ、2度目は37年の日韓外相会談で当時の小坂善太郎外相が提案したが、いずれも韓国が拒否し、裁判に至らなかった。

今回も、韓国政府側は拒否する意向だ。だが、韓国が今回も拒否するなら、「自国の主張に正当性がないからだ」と国際社会で受け止められるだろう。

昭和40年の日韓基本条約の交換公文では、竹島問題について両国間で解決できない場合は「調停によって解決を図る」とされた。最終的に第三者の公正な判断を仰ごうという趣旨だ。韓国は日本の提案を受け入れるべきである。

李大統領が上陸した日、森本敏防衛相は「韓国の内政上の要請によるものとの印象を持つ」と述べた。竹島が不法占拠されている認識を欠き、韓国に理解を示すかのような発言は極めて遺憾だ。後に「わが国としては決して受け入れられない」「誤解を招いたとしたら申し訳ない」などと語ったが、防衛相としての資質を疑う。

繰り返すまでもないが、竹島は江戸時代から日本の中継基地として利用され、明治38(1905)年の閣議決定と島根県告示で日本領に編入された。

だが、戦後の昭和21年、連合国は日本の漁業区域を定めるマッカーサー・ラインを引く際に竹島を含めなかった。27年には、当時の李承晩韓国大統領が竹島を含む境界線「李ライン」を一方的に設定し、不法占拠が続いている。

李ラインでは、多くの日本漁船や乗組員が韓国に連行され、銃撃による日本人の死傷者も出た。

ロンドン五輪では、韓国男子サッカー選手が竹島領有を主張する事件も起きた。これ以上、国際社会に誤った印象を与えないためにも、今こそ提訴が必要だ。

野田佳彦政権は提訴を韓国に提案する際に、こうした歴史的経緯についても改めて世界に明確に発信すべきである。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/1132/