事業仕分け 国民だれもが点検できる

朝日新聞 2009年11月11日

事業仕分け 国民だれもが点検できる

来年度の予算案づくりに向け、行政刷新会議の事業仕分けがきょう始まる。歳出の無駄を洗い出し、鳩山由紀夫首相の掲げる「コンクリートから人へ」の組み替えを実現できるか。その成否は新政権の評価に直結する。

民主党の国会議員と自治体職員、エコノミストら民間の有識者が「仕分け人」となり、役所の担当者と議論しながら、ひとつひとつ事業の必要性を吟味する。

目標は、95兆円に膨らんだ来年度予算の概算要求から3兆円規模の削減を生み出すことだ。仕分け対象は政府の全事業の約15%にあたる447事業だが、対象外でも類似の事業には今回の判断をあてはめる。

一口に無駄といっても、それぞれの事業にはそれなりの理由と目的があり、恩恵を受ける人もいる。それらを仕分けるのは▽費用に見合う効果はあるのか▽縦割り行政のなかで重複はないか▽財政が苦しい中で今やる必要はあるのか▽地方や民間に任せるべきではないか、といった観点からの検討である。仕分け人には、官僚の説明に言いくるめられない眼力が求められる。

作業にあたるのは枝野幸男元政調会長ら民主党の国会議員7人のほか、民間の有識者56人が起用された。各分野での専門知識を生かすのはもちろんだが、一般市民の常識に照らしておかしくはないか、説得力はあるかという視点を大事にしてもらいたい。

事業の必要性を問うことは、その事業を定めた制度や事業を担う組織の見直しにもつながる。単に削減額を積み上げるだけではなく、文字通り、将来の「行政の刷新」につながる議論も期待したい。

これまで予算査定を一手に握ってきた財務省は、対象事業の選定に全面的に協力した。仕分けにも主計局の職員が出席して意見を述べる。財務省主導の予算削減の隠れみのになっては元も子もない。仕分け人たちの主体性が何よりも重要である。

仕分け作業の結果をその通りに予算案に反映させるかどうかは、首相が議長を務める行政刷新会議の判断にかかっている。地方交付税や義務教育費の国庫負担、在日米軍への思いやり予算といった案件では、内閣全体としての判断が問われることになる。

特筆したいのは、仕分け作業が全面的に公開されることだ。会場で傍聴できる人は限られるだろうが、インターネットで中継され、全国どこでも見ることができる。国民からの意見を受け付ける仕組みも検討しているという。

予算査定の生の現場が公開される。納税者としてこの機会を見逃す手はない。私たちの納めた税金がどのように使われようとしているのか、しっかり目をこらしていこう。民主主義の原点を確認する機会にもなる。

毎日新聞 2009年11月12日

事業仕分け開始 国民が「劇場」の監視役だ

まるで「予算劇場」だ。中央省庁の事業の必要性がひとつひとつ傍聴人もいる会場で厳しく吟味され、次々と「廃止」や「地方移管」などの審判が下されていく。

政府の行政刷新会議による事業仕分け作業が始まった。来年度予算編成を控え、447事業について民間の識者や国会議員らからなる3チームの仕分け人が公開の場で予算計上の要、不要などを判定する。

来年度予算の概算要求が95兆円を突破する中、どれだけ予算を削れるかの総額に関心は集まりがちだ。だが、国民に開かれた作業で予算の透明度を高め、特に中央官庁の既得権益と絡んだ無駄に切り込むことが肝要である。

鳩山内閣肝いりの事業仕分けの最初の焦点は、対象とする事業の選定だった。診療報酬、地方交付税、在日米軍の思いやり予算など「聖域」を設けず対象とする方針を刷新会議は打ち出した。制度改正が必要な分野で予算をただちに削ることは難しいかもしれないが、今後の改革に向け俎上(そじょう)に載せたことは賛成だ。

概算要求の圧縮を鳩山内閣が迫られる中での作業である。だからといって、まるで魔法の杖(つえ)を持つように仕分け人に予算削減を期待することは適切であるまい。

「仕分け」の意義は所管省庁の手を離れ、仕分け人が公開の場で客観的に費用対効果を論じる税金の使途の透明化にある。1チーム10人程度のメンバーが短時間の議論で本当に事業の必要性を見極められるか、確かに懸念はある。だが、インターネットで中継される作業を通じ仕分け人も「目利き」の熟練度が問われ、結果責任を問われる。予算の編成過程が国民から監視される意義は小さくない。

国民が最も成果を期待しているのは独立行政法人への不透明な支出など、中央官庁の既得権益が絡む無駄の一掃だ。仕分け対象事業のラインアップを見る限り、この部分が踏み込み不足だ。作業に協力する財務省の筋書き通りなどと言われぬよう、「官」が痛みを感じる削減にこそ大なたを振るってほしい。

また、国から地方への事業移譲を審判する際には、自治体の裁量を増し分権効果が期待できるかがポイントだ。地方に生じる費用負担の問題も重要だ。政府に新設される「地域主権戦略局」と連携して議論を進めることが望ましい。

人前で説明がつかない予算はつけない--。こんな当たり前のことが財政規律の一歩なのかもしれない。仕分け作業終了後、刷新会議は予算計上の是非を最終判断する。その結果も含め、政府は国民に分かりやすく開示すべきである。

読売新聞 2009年11月13日

事業仕分け 狙いは分かるが手法が問題だ

政府の行政刷新会議が事業仕分けを開始し、来年度予算の概算要求から無駄を洗い出す作業を本格化させている。

国会議員と民間有識者らによる「仕分け人」が、予算を要求した各府省の担当者らと議論し、その事業が必要か否か、地方に移管すべきか、などの判断をその場で出していく。

長年にわたって硬直化した予算配分に、メリハリをつけようとする意図は理解できる。

初日と2日目の作業で廃止が決まったのは、農林水産省の農道整備事業などだ。厚生労働省所管の財団法人は、基金311億円の返納を求められた。国土交通省の下水道事業は地方移管とされた。

こうした判定は、鳩山首相の了承を経て、財務省の予算査定に反映される見通しだ。95兆円と水膨れした概算要求のスリム化につながることが期待されよう。

だが、事業仕分けの対象である447事業に、在日米軍基地に関する防衛省の「思いやり予算」などが含まれたのは解せない。

日米安保体制にも影響する政治的な予算である。「まず防衛省が米軍と話をする。いきなり刷新会議が入ってきて削るというのは乱暴」と北沢防衛相が反発するのも当然だろう。簡単な議論で結論を出すような問題ではあるまい。

義務教育費の国庫負担や、地方交付税など、国の在り方にかかわる大きな案件も、こうした場で取りあげるのは適当ではない。

むしろ、子ども手当や高速道路の原則無料化など、巨額な費用がかかるのに政策効果が不透明な案件こそ、対象として取りあげるべきであろう。

公開された事業仕分けで、仕分け人たちが、府省の担当者を一方的にやりこめるような場面が相次いでいるのはいただけない。

「傍聴者とネット中継を意識したパフォーマンスが過ぎる」との批判が出るのもやむを得まい。

1案件当たりの割り当てもわずか1時間である。これでは、まともな議論は不可能だ。対象事業数を減らすなどして、時間をもっとかける工夫が欠かせない。

国の個別予算の当否に、民間人や外国人が直接かかわることを疑問視する声もある。仕分け人としての正式辞令は交付されていないという。事業仕分けの正当性が問われかねない。

スタートしたばかりの事業仕分けだが、早くも課題が浮き彫りになった。鳩山内閣は、手法と効果を検証しながら、あと7日間の日程を慎重に進める必要がある。

産経新聞 2009年11月11日

行政刷新会議 聖域なく歳出に切り込め

行政刷新会議が来年度予算概算要求の無駄を削る「事業仕分け」対象を決めた。診療報酬や地方交付税、在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)など広範な分野が盛り込まれている。

これらの分野は予算規模や政治判断が必要な点からみて、個別事業の要不要を判断するという単なる「事業仕分け」の域を越えており、本格的予算編成作業に近い。ならば、聖域を設けず大胆に切り込むよう求めたい。

鳩山由紀夫首相も「聖域なき見直し」を表明してはいるが、額面通りには受け取れない。民主党議員と民間有識者によるいわゆる「仕分け人」が短期間で広範な分野をどこまで判断できるか疑問だし、作業を通じて政権公約との矛盾も生じかねない。

来年度が改定年に当たる診療報酬では、医師不足解消を目的にした大幅引き上げが民主党の主張だった。しかし、民間給与が下がる中で医師の診療報酬を上げることに国民が納得するだろうか。

本来なら優遇されすぎた開業医の報酬を削減し、その分を不足する勤務医などに配分すれば済む。その意味で配分見直しの権限を厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会から刷新会議に移したのはいいが、これにも閣内で異論が出ているという。

地方財源拡充の公約を背景に大幅な増額要求となった地方交付税も削らねばならない。高すぎる地方公務員給与を放置したままの増額要求など筋の通る話ではないからだ。では支持基盤である自治労をどこまで抑えられるのか。

思いやり予算も同様だ。対象は地域の民間給与を大幅に上回る基地従業員の人件費だが、基地労組は強い反対勢力である。これを説得するのは容易ではない。

このように、いざ歳出を削減しようとすれば鳩山政権は返り血を浴びる。しかも、95兆円に上る概算要求から目標の3兆円を削ったところで、国債増発を行わないとする公約は危うい。

今年度税収は当初見込みの46兆円から30兆円台後半に落ち込むのが確実で、来年度も税収増は期待できない。国債増発の判断基準を今年度補正予算後の44兆円という甘い水準に置いたとしても、財源はまだまだ足りない。

子ども手当や高速道路無料化など財源の裏付けが希薄な政権公約にはやはり無理がある。現実に則して見直すべきではないか。

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