ロンドン五輪 内村選手の「金」に続きたい

毎日新聞 2012年08月05日

五輪メダル=論説委員 落合博

ロンドン五輪は中盤戦に入った。日本選手団が大会第8日(3日)までに獲得したメダルは金2、銀8、銅11の計21個で、国別メダル表では13番目に位置する。女子レスリングなどを残しているとはいえ、「金メダル数で世界5位以上」という目標(金メダル15個以上)の達成は、目標設定が適切だったかどうかは別にして、ひいき目に見ても極めて厳しい状況だ。

金メダルという物差しで見れば悲観的にならざるを得ない。だが、物差しは一つだけではない。金だけがメダルではなく、銀も銅もメダルだ。例えば、競泳男子200メートルバタフライで2大会連続の銅メダルを獲得した松田丈志選手と1位の南アフリカ選手とのタイム差は0秒25。金、銀、銅は紙一重。「銅じゃだめなんですか」と言いたい。

メダルを首にかけながら表彰台の真ん中に立てなかったことに不満そうな選手や、「2位でも4位でも変わらない」と漏らした選手がいた。周囲の期待に沿えなかった悔しさもあるだろう。その心境は分からぬことはないが、達成した結果を素直に喜んでほしかった。

総メダル数という別の物差しを持ち出せば日本は米国、中国、ロシア、英国に次いで5位。銀は6位、銅は2位だ。主要8カ国(G8)首脳会議のメンバーと比較しても見劣りはしない。メダルを獲得した競技は柔道、体操、競泳、重量挙げ、アーチェリーと多岐にわたる。これが示すのはスポーツ先進国としての厚みであり、世界に胸を張っていい内容ではないか。

入賞(8位以内)も称賛に値する。競泳男子平泳ぎの北島康介選手は3大会連続の金メダル獲得はならなかった。だが、100メートルは5位、200メートルは4位で、高校3年生で出場した2000年シドニー大会の4位を含め4大会連続の入賞だ。偉業という言葉を贈りたい。銅メダルを取った後輩をたたえる敗戦の弁もすがすがしく、人間としての器の大きさを感じた。

開幕前、ロンドン五輪のキーワードは「多様性」であり、日本選手の活躍だけに一喜一憂するのはもったいないと書いた。改めて強調したい。五輪は多様な世界を知る絶好の機会だ。

いよいよ、五輪の華とも言われる陸上が始まった。「人類最速の男」を決める100メートルにはウサイン・ボルト選手(ジャマイカ)が出場する。世界記録の更新はなるか。ロンドン市街の迷路のようなコースを走る男女のマラソンも楽しみだ。

世界のさまざまな国からやって来たアスリートたちが見せる力と技と美に拍手を送ろう。

読売新聞 2012年08月03日

ロンドン五輪 内村選手の「金」に続きたい

ロンドン五輪は、中盤戦に入った。

数々の熱戦に、一喜一憂している人も多いのではないか。

大会6日目(1日)時点で、日本選手が獲得したメダルは、金2、銀4、銅11の計17個だ。金メダルは少ないが、総数では中国、米国に次ぎ3位につけている。奮闘に拍手を送りたい。

中でも、大きな感動をもたらしてくれたのが、体操の内村航平選手だ。男子個人総合での金メダルは、日本選手として28年ぶりの快挙である。

世界一、美しいと言われる技を随所に見せてくれた。高速の回転技の後、ピタリと着地を決めた跳馬の演技は圧巻だった。

「金メダル確実」という日本中の期待に応え、優勝する強靱(きょうじん)な精神力は、見事なものだ。

苦戦が続くお家芸の柔道の中で、闘志むき出しの姿が印象的だったのが、女子57キロ級の松本薫選手だ。日本勢初の金メダルを手にした時の笑顔は輝いていた。

松本選手の金メダルが、日本選手団全体に弾みをつけたことは間違いない。

競泳陣の活躍も目立つ。背泳ぎ、バタフライ、平泳ぎで、男女とも銅メダルを獲得した。男子個人メドレーの銅メダルもある。

各種目で、世界と互角以上に戦える選手がそろっているのは、頼もしい限りだ。

平泳ぎの100メートルと200メートルで五輪3連覇を目指した北島康介選手は、メダルなしに終わった。偉業達成はならなかったが、日本の水泳界を長く牽引(けんいん)してきた功績に胸を張ってほしい。

大会序盤で相次いだ判定を巡るトラブルは、観戦する側の興趣をそいだと言える。

男子柔道では、審判の旗判定の結果が、ビデオ席にいる審判委員の異議で覆り、日本選手の勝利となった。体操の男子団体総合では、技の難易度が正しく認定されず、ビデオ判定の結果、日本に加点されるケースがあった。

審判の能力向上は、各競技に共通する課題だろう。

大会は12日まで続く。序盤戦の健闘をバネにして、日本選手のさらなる活躍が期待される。

サッカーは、男女とも決勝トーナメントに駒を進めた。女子レスリングには、五輪3連覇を目指す吉田沙保里、伊調馨選手が登場する。陸上競技も始まる。

海外の選手のスピードや技も堪能したい。

4年に1度の祭典の楽しみは、まだまだ尽きない。

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