東京電力は、福島第一原子力発電所事故後の対応を記録した社内テレビ会議の映像を、ようやく部分公開した。
映像記録は、政府や東電の危機管理能力を検証する上で貴重な資料である。
だが、公開されたのは事故が発生した昨年3月11日から16日までの約150時間分に過ぎない。ごく一部の映像では、情報を隠しているとの不信を招くだろう。
東電は事故当時、東京都内の本店と、第一原発、第二原発などを結んだテレビ会議システムで対応を協議していた。
公開された映像からは、緊迫した状況が見て取れる。第一原発1号機が水素爆発した瞬間、衝撃で映像が小刻みに揺れている。3号機の爆発では「大変です」といった声が飛び交った。
記録装置の容量を超えたため、音声はないが、菅前首相が東電本店に乗り込み、腕を振りながら指示しているような場面もある。
問題なのは、映像公開にあたり、東電が取材・報道を過剰に規制していることだ。
当初、視聴期間はわずか5日間で、生の映像を視聴できる記者も各社1人に限定した。
枝野経済産業相が改善を指示した結果、視聴期間は約1か月間に延長された。それでも、生の映像の録音・録画は禁止したままで、一部の幹部以外は個人名の報道も認めていない。
条件に従わなければ、今後の記者会見への出席を認めない「制裁」までちらつかせている。
こうした規制は取材・報道の自由を侵しかねない。東電は直ちに撤回すべきだ。
東電は、映像の公開が遅れた上に、一連の規制を設けた理由について、「映像には一般社員が映っており、プライバシーを保護するため」と主張している。
だが、報道機関が報じる際には、プライバシーに最大限、配慮するのは自明のことである。
東電は、事故に関連する全記録を保全し、検証のため、内外に公開する責務がある。
経営再建に向けて国有化された企業であり、国民に対する高度な説明責任が課せられていることを忘れてはならない。
日本新聞協会は「映像の公開は公共性・公益性が高い」とし、自由な取材を申し入れている。
東電は、今回公開された以降の映像も記録しており、国会や政府の事故調査委員会には提供した。さらに踏み込んだ情報公開を検討すべきだ。
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